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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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73話 太陽の証と裏切りの瞬間

私たちは、エオルス王城の最も厳重な部屋、王の謁見室へと通じる廊下に潜んでいた。王族間の緊張は最高潮に達しており、廊下を警備する兵士たちの瞳は、疑心と疲弊に満ちている。


クロード王子は、アザトースの知識を駆使し、憎しみのエネルギーの波動が最も高まる瞬間を計っていた。


「知識によれば、国王は今、謁見室で二人の王子に**『太陽の証』を譲り渡す最終決定を下そうとしている。武神が干渉を仕掛けるのは、この決定によって『裏切られた』**と感じた王子が、行動を起こす瞬間だ」


「裏切られた、と感じた王子…」私が呟いた。


「そうだ。武神の力は、その憎悪のエネルギーを燃料にする。リリアーナ、君の準備はいいか?」


私は、千鶴の杖をしっかりと握りしめた。杖の柄は冷たいが、私の心は熱い決意に満ちていた。


「ええ。憎しみの根源を、赦しのエネルギーで上書きする」


その時、謁見室の扉の向こうから、激しい怒声が響いた。


「父上!なぜです!私が長子であり、国を思う心は弟以上であると、なぜお分かりにならないのです!」


それは、第一王子の声だった。


「兄上!国王の決定に従うべきです!国の安定が最優先だ!」


弟王子の、冷静だが刺々しい声が続く。


「安定だと?お前が、国王に何を吹き込んだか知っているぞ!お前こそ、国を裏切った裏切り者だ!」


扉の向こうで、何かが倒れるような大きな音が響いた。憎悪のエネルギーが、一気に臨界点を超えた。


「今だ!」クロード王子が叫んだ。「武神が、干渉の扉を開けた!」


謁見室全体が、微かに赤い光に包まれ始めた。これは、武神・耕太の力が、カミの領域からエオルス島へと流れ込んでいる証拠だ。


クロード王子とレオンハルト殿下は、迷わず扉を蹴破り、室内に飛び込んだ。


謁見室の光景は、悲劇的だった。国王は床に倒れ、弟王子は剣を抜き、その切っ先を、激しく怒りに駆られた兄王子に向けていた。そして、その兄王子の瞳は、既に武神の憎悪のエネルギーによって赤く染まり始めていた。


「武神め!させるか!」


クロード王子は、憎悪に染まりゆく兄王子に向かって走り出した。


「リリアーナ!今だ!憎悪が頂点に達する瞬間だ!」


その瞬間、兄王子は弟王子に剣を振り上げた。彼の顔は、憎しみと絶望で歪んでいた。


「裏切り者め…!死ね!」


「私は、あなたたちの憎しみを認めない!」


私は、憎悪の渦の中心、剣を振り上げる兄王子に向かって、千鶴の杖を掲げた。


「武神耕太!あなたの物語は、ここで終わる!あなたの求める憎しみは、赦しの運命に敗北する!」


私は、この世界に戻ってきた理由、クロード王子の愛を取り戻すという運命、そして、ライオネルの犠牲を心に刻み、憎しみの感情を一切持たない純粋な赦しの光を、杖に込めて解放した。


白い、眩いばかりの光が、憎悪に染まった謁見室全体を包み込んだ。

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