表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/240

72話 混沌の島、エオルス

数日間の航海を経て、私たちはエオルス島の港に到着した。


船から降りた瞬間、島全体を覆う異様な静けさと張り詰めた空気に気づいた。武神の力が作り出した混沌は、戦争の喧騒とは違う、じわじわと魂を蝕むような負の感情で満たされていた。


港町は、まるで時が止まったかのように静まり返っている。住民の姿はほとんど見えず、開いている店もない。


「武神は、既に深く干渉しているようです」


レオンハルト殿下が、周囲を警戒しながら言った。彼は、ライオネルの死という悲しみを胸に、冷静に状況を分析していた。


クロード王子は、周囲の負の感情の渦を、冷徹な目で観察していた。


「この島に、憎しみの種が蒔かれている。知識によれば、武神は島の王族を標的にし、彼らの間の裏切りを利用して、この島の運命を混沌に陥れようとしている」


私たちは、島の中心にある王城を目指して歩き始めた。道中、ようやく数人の住民に出会ったが、彼らは皆、目を伏せ、互いに不信感を抱いているような、重い空気の中で生活していた。


「見て、クロード王子」


私は、道端で泣いている少女を見つけた。彼女は、抱きかかえていた人形を、別の少年に奪われそうになっていた。


「私の人形よ!返して!」


「うるさい!お前のお父さんが、俺の家の魚を盗んだんだろ!」


些細な諍いが、憎悪の連鎖を生み出している。武神の力は、人々の心に潜む小さな不信感を増幅させ、憎しみに変えているのだ。


「武神の目的は、この島の運命の連鎖を、憎悪という最も予測しやすく、強力なエネルギーで完全に書き換えることだ」


クロード王子は、冷静に言った。


王城にたどり着くと、城門は固く閉ざされ、重武装した兵士が立っていた。彼らの表情は、外部の敵よりも、むしろ内部の裏切り者を警戒しているようだった。


私たちは、フレイア王国とオーロリア王国の王族の資格を提示し、なんとか城内に入ることができた。


城内は、外の静けさとは打って変わり、緊迫した空気が流れていた。王族や高官たちは、互いに目も合わせず、小さな密談を繰り返している。


クロード王子は、城の歴史と現在の王族の構成を、頭の中で分析していた。


「エオルス島の王族には、代々伝わる**『太陽の証』という宝があり、それが王位継承の絶対条件だ。現在の国王には、二人の王子がいる。知識によれば、武神は、この太陽の証を巡る王位継承争い**に干渉している」


その時、一人の高官が、私たちの前を通り過ぎながら、冷たい視線を投げかけてきた。


「大陸の王族が、何の用だ?この島の混乱に、手を出すな」


私たちは、彼らの不信感が、既に臨界点に達していることを悟った。


「リリアーナ。憎しみの連鎖を断ち切る機会は、一度しかない」


クロード王子は、私の手を取り、静かに言った。


「武神が、裏切りの決定的な瞬間を待っている。その瞬間に、お前の赦しのエネルギーを、千鶴の杖で解放する。それが、武神を討ち、この島の運命を救う、唯一の道だ」


私たちは、憎しみのエネルギーが最も集中する、王城の最奥部へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ