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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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69話 二人のリリアーナ

レオンハルト殿下が船の手配に向かい、クロード王子がライオネル殿下の亡骸を丁重に弔っている間、私は応接室で本物のリリアーナと向かい合っていた。


彼女は、私が過去を書き換えたことで運命が大きく変わったことを理解している。彼女の顔には、もはや私を警戒する色はなく、どこか遠い目をして、私を見ていた。


「あなたが過去に干渉したことで、この世界の運命は、カミの支配から解放されました。ですが、その代償は、クロードの憎しみが消えたこと、そして、武神が私たちへの興味を失い、別の場所で新たな混沌を始めたこと」


本物のリリアーナは、静かに言った。


「あなたは、私ではなし得なかったことを、成し遂げた。カミのシナリオから、この世界を切り離した」


「私はただ…クロード王子を救いたかっただけよ」


私がそう言うと、彼女は悲しげに微笑んだ。


「その『愛』こそが、カミにとって最も不確定な要素だった。私が過去の周回でクロードを愛そうとした時、それはカミに強いられた『役割』だった。しかし、あなたの愛は、カミの想定外の運命を生み出した」


彼女は、自分と私を比較するように続けた。


「私たちは、同じ顔、同じ名前。でも、私はこの世界に縛られた道具だった。あなたは、外から来た異物。その異物だからこそ、この世界の運命の法則を打ち破れた」


彼女の言葉は、私の存在そのものを肯定してくれていた。


「でも、あなたは今、この世界の運命の守護者よ。なぜ、私と一緒にエオルス島へ来ないの?」


私の問いに、本物のリリアーナは首を振った。


「私の力は、時の流れの境界を守るためのもの。現実の世界で武神と直接戦う力はないわ。それに…」


彼女は、一瞬目を伏せた。


「私は、この屋敷に残る。ライオネル殿下を失った今、私には、彼らの亡骸を見守る責務がある。そして、この屋敷を、あなたたちが戻るまでの安全な特異点として維持しなくてはならない」


彼女は、私をまっすぐに見つめ、最後の言葉を伝えた。


「リリアーナ。クロードは、憎しみから解放されましたが、まだカミに支配された知識を完全に振り切れてはいない。彼は、あなたを愛していますが、合理的という冷たい鎧を脱ぎきれていないの」


「…」


「彼の心を完全に人間的な温かさに戻せるのは、あなただけよ。エオルス島での戦いは、武神との最終決戦であると同時に、クロードが真の愛を取り戻すための、最後の旅になるでしょう」


彼女は、そっと私の手を握った。


「行って。そして、この世界の運命を、完全にあなたたちの運命に委ねて」


私は、彼女の強い意志を受け取り、深く頷いた。私たちは、互いの存在を認め合い、運命を託し合う、二人だけの連帯を結んだのだ。

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