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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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67話 カミのいかずち

カミの領域――。


時の境界での激しい運命の書き換えから逃れた武神・耕太と鶴神・千鶴は、自らの領域で、未だに荒れ狂っていた。創造主の介入を誘発したことで、彼ら自身の計画も台無しになり、さらにクロード王子が憎しみを捨てたという事実は、武神にとって最大の屈辱だった。


鏡面のような空間には、クロード王子たちがいる現実の世界が映し出されている。彼らは、ライオネルの死という悲しみを抱えながらも、新しい世界を築く決意を固めていた。


「チッ…チクショウ!あのガキ、あの女のせいで、憎しみを捨てやがった!」


武神・耕太は、巨大な剣を虚空に振り下ろし、大地を揺るがすほどの怒りを爆発させた。彼の体から発せられる赤い雷は、混沌としたエネルギーを空間に撒き散らす。


「俺の物語の最高のクライマックスを、あの女と、あの時の導き手とやらがブチ壊しやがった!」


「まあまあ、武神様」


千鶴は、扇子で口元を隠しながら、相変わらず冷めた表情で耕太を宥めた。


「落ち着きなはれ。怒ってても、あの特異点ノイズのせいで、わてらはもうあの世界に直接手出しできひんのやで?クロードの物語は、ひとまず**終焉おしまい**や」


「終焉だと?ふざけるな!」


耕太は、怒りの矛先を千鶴に向けそうになったが、すぐに矛先を変えた。


「なら、別の物語を始めるまでだ。あのムカつくガキどもとは関係ねぇ、誰も予測できねぇ運命をな!」


耕鶴は、そう言うと、鏡面空間に映る世界の別の地域に目を向けた。


そこは、オーロリアやヴァーレントといった大陸の中心国からは遠く離れた、小さな島国**『エオルス島』**。この国は、豊かな漁業資源に恵まれ、平和で穏やかな、歴史上ほとんど記録に残らない辺境の地だった。


「よし。あそこの王と、娘の間に、究極の裏切りと絶望的な戦争を仕込んでやる」


耕太は、クロード王子たちがいる世界とは無関係の、平和な島国を、ただの八つ当たりと退屈しのぎのために選んだ。


千鶴は、その光景を見て、扇子を広げ、嘲笑した。


「ああ、始まったわ。カミの八つ当たり。ほんまに、人間とやってることは変わらへんなぁ」


武神・耕太は、千鶴の皮肉を無視し、その巨大な力をエオルス島へと集中させた。


「見せてやるぜ、リリアーナ!憎しみと愛が無くたって、絶望と裏切りだけで、物語はいくらでも面白くなるってことをな!」


彼の赤い雷は、鏡面空間を突き破り、遥か遠くのエオルス島へと降り注いだ。


エオルス島の空は、突然、不気味な赤と黒の稲妻に覆われた。それは、武神・耕太の**「カミのいかずち」**。平和な島国の運命は、クロード王子たちの物語の余波によって、何の罪もないまま、一夜にして混沌へと引きずり込まれた。


そして、武神の満足げな笑いが、カミの領域に響き渡った。

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