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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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64話 愛と憎しみの交差点

クロード王子の叫びと共に、私は、彼の憎しみが具現化した紅蓮の渦へと飛び込んだ。


この渦は、彼が家族を失った悲劇の瞬間、武神の血によって植え付けられた、純粋な憎しみのエネルギーだ。炎の記憶、父王の血、母の悲鳴、そして、妹の冷たい小さな手――その全てが私を拒絶し、引き裂こうとする。


「俺の憎しみに、触れるな!」


渦の中心で、クロード王子の声が、遠く、苦痛に満ちて響く。彼は、憎しみを最大限に解放することで、自らの心まで麻痺させているのだ。


私の使命は、この憎しみの心臓に、愛と運命の意志を注ぎ込むこと。


私は、憎しみの炎に焼かれながらも、千鶴の杖を両手で強く握りしめた。杖は、因果律を操る力を持ち、私の意志をこの特異点の根幹に伝える唯一の手段だ。


「クロード王子!私は、あなたの憎しみに屈しない!」


私は、憎しみの炎を押し返すように、自らの魂の全てを杖に注ぎ込んだ。


『私は、あなたと共に運命を歩む』

『私は、あなたが孤独な王となる未来を認めない』

『あなたの憎しみは、私の愛を殺せない!』


憎しみの渦の中心で、私の愛の意志が、巨大な光の柱となって立ち上がった。


憎しみと愛――二つの絶対的な矛盾が、特異点の中心で激しく衝突する。空間全体が、悲鳴を上げ、創造主の秩序の根幹が、ビリビリと引き裂かれていく。


その瞬間、空に、巨大な亀裂が入った。


「な…に…!?」


亀裂の向こう側から、創造主の驚愕の声が響く。感情を持たないはずの彼が、初めて動揺している。


「秩序の法則が…二つの矛盾によって、解体されている…!」


創造主は、私たちを完全に排除しようと、空間全体を虚無の白い光で満たし始めた。


「リリアーナ!急げ!」


クロード王子の声が、憎しみの渦の隙間から、必死に届く。


私は、最後の力を振り絞り、憎しみの炎に包まれたクロード王子に向かって、杖を突き立てた。


愛の光が、彼の憎しみの心臓に、楔のように打ち込まれる。


憎しみは、愛に触れた瞬間、爆発的なエネルギーとなって、彼の体から放出された。それは、憎しみの解放であると同時に、武神の血の呪縛からの解放でもあった。


憎しみと愛の衝突は、創造主の秩序の根幹を、完全に破壊した。


巨大な光が空間を覆い、創造主の白い光は、その圧倒的なエネルギーによって弾き飛ばされた。


光が収束したとき、私たちは、再び時の境界の空間に立っていた。


憎しみの渦は消え、創造主の姿も、カミの領域の奥へと退けられていた。


クロード王子は、憎しみの炎から解放され、私の目の前に立っていた。彼の体には、もはや武神の血の呪縛はない。


「リリアーナ…」


彼は、静かに私の名を呼んだ。彼の瞳は、かつての憎しみの炎でも、知神の冷たさでもなく、深い愛情と、人間的な温かさに満ちていた。


「クロード王子…!」


私は、涙を流しながら、彼に抱きついた。


「ありがとう、リリアーナ。お前が、俺の運命を救ってくれた」

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