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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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62話 最後の希望と絶対の虚無

創造主の白い光が、私たちの存在そのものを消し去ろうと収束する。その圧倒的な力の前では、武神の暴力も、知神の知識も、全てが無意味に思えた。


「クロード!このままでは、私たち全てが消される!」


私は、本能的な恐怖に駆られ、クロード王子の名を叫んだ。


クロード王子は、私を腕の中に引き寄せると、その顔に、絶望ではなく、冷静な分析の表情を浮かべた。


「創造主の目的は、秩序の回復だ。そして、最も秩序ある結末は、この世界の無への帰還。彼には、感情がない」


彼の口調は、まだ知神の知識に支配されている。しかし、その根底には、私を守ろうとする彼の運命への強い意志が感じられた。


その時、レオンハルト殿下が、剣を構えながら、叫んだ。


「リリアーナ様!時を稼いでください!ライオネル殿下が…いえ、時の導き手が何かをしようとしている!」


見ると、時の導き手(ライオネルの姿)は、巨大な砂時計の前に立ち、その砂を逆流させようと、全身の力を集中させていた。彼の体からは、ライオネルの魂と、導き手の力が激しく衝突する光が溢れている。


「武神と千鶴の干渉の意思を打ち砕いたとしても、創造主の終焉の意思は止められない」


時の導き手は、苦痛に顔を歪ませながら、私たちに告げた。


「私に残された力で、あなたたちを、創造主の手が届かない、過去と未来が交錯する一点へと送り込む。そこが、あなたたちの最後の希望よ!」


創造主の白い光は、既に私たちを半ば飲み込み始めていた。その光に触れた空間は、静かに、そして確実に消滅していく。


「ノイズは、排除する」


創造主の声は、私たちを、ただの計算上のエラーとして認識していた。


「クロード王子!創造主を討つ鍵は、どこにあるの!」


私は、彼に最後の望みを託した。


クロード王子は、私の問いに、瞳の奥に宿した知識を駆使し、瞬時に答えを導き出した。


「創造主は、運命の始まりと終焉の管理者。彼を討つ唯一の手段は、彼が創り出した秩序、すなわち、この世界の時間軸の根幹を、愛と憎しみという最大の矛盾で、同時に破壊することだ!」


彼は、私の目をまっすぐに見つめた。その瞳は、冷たい知性の中に、微かな情熱を取り戻し始めていた。


「俺は、お前の運命を信じる。リリアーナ、俺たちは、もう一度、過去に戻る必要がある」


彼は、千鶴の杖を力強く握りしめた。


「時の導き手!俺たちの転送先を、この世界の時間軸の特異点に設定しろ!俺の武神の血と、お前の時の力で、二つの矛盾を衝突させる!」


「理解した!それが、私たちの最後の希望よ!」


時の導き手は、最後の力を振り絞り、砂時計を逆回転させた。砂時計から噴き出した光が、クロード王子と私を包み込む。


レオンハルト殿下は、私たちを見送りながら、創造主に剣を構えた。


「行け!クロード殿下!私は、ここで、最後の壁となる!」


白い光が、私たちを完全に飲み込む直前、私は、クロード王子の唇が、かすかに動くのを感じた。


「必ず、お前の運命を、取り戻す」


その言葉を最後に、私たちは、創造主の絶対的な虚無から逃れ、時間軸の最も危険な領域へと、転送されていった。

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