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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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58話 過去の邂逅

武神のエネルギーは収束したものの、彼はまだこの場から消えていない。私の防壁は限界に達していた。


「リリアーナ様…?」


その時、幼いクロード王子の声が、防壁の内側から聞こえた。彼は、異常な光景と、私という見慣れない存在に気づき、不安そうに私を見つめていた。


「どうして、お姉ちゃんは泣いているの?」


彼の純粋な瞳が、私の心臓を打ち抜いた。


私は、この過去のクロード王子と、直接話すわけにはいかない。未来の運命に、決定的な影響を与えてしまう。しかし、武神はまだ去っていない。この機会を逃せば、私の存在が彼に与える影響は、計り知れない。


私は、涙を拭い、彼に笑顔を向けた。


「大丈夫よ、クロード王子。お姉ちゃんは、ちょっと遠いところから来ただけよ」


「遠いところ…?」


幼いクロード王子は、不思議そうに首を傾げた。そして、私を庇うように父王の前に立ち、木剣を構えた。


「お姉ちゃん、僕が守ってあげる!父上、この人が、空の光から僕たちを守ってくれたんだ!」


その無邪気な優しさと勇気。これこそが、武神の憎しみとは対極にある、クロード王子の本質だ。


武神・耕太のエネルギー体が、再び激しく揺れた。


「な…なんだ、この感情は…!俺のシナリオにはない、無償の優しさだと…!?」


武神は、彼の予測を超える「純粋な愛の片鱗」に、混乱しているようだった。


私は、このチャンスを逃さなかった。


「武神耕太!あなたは、この子の運命に、二度と手を出すべきではない!この子は、あなたのような憎しみや退屈とは無縁の、希望を持っている!」


私は、そう言って、クロード王子の小さな手を取り、彼の掌に、未来で私が彼から受け取った運命への強い意志の光を、そっと分け与えた。


「クロード王子。運命を信じて。そして、大切な人を守る力を信じて」


私の力が、幼いクロード王子の魂に、武神の呪いを跳ね返す種を植え付けた。


第60話 運命の書き換え

私が力を分け与えた瞬間、私の体は、限界を超えて光を放ち始めた。同時に、武神・耕太のエネルギー体は、激しい嫌悪感を露わにした。


「チッ!汚ねぇ手を使うんじゃねぇ!愛だの運命だの、俺の領域で、そんなヌルいものを…!」


武神は、完全に興味を失ったかのように、空間の歪みの中に消え去ろうとした。彼の目的は、物語を創ること。ここに留まり、愛と運命の防壁に阻まれ続けることは、彼にとって最大の敗北だった。


「いいだろう。今回は見逃してやる。だが、未来で待ってろ、リリアーナ。お前の干渉が、どんな悲劇的な未来を生み出すか、楽しみにさせてもらうぞ!」


武神は、そう言い残し、空間の歪みと共に、完全に消失した。


彼の干渉の意思は、この過去の瞬間から、完全に逸らされた。


私は、その場に崩れ落ちた。全身の力が抜け、王城の庭園の芝生に倒れ込む。


幼いクロード王子と父王は、空の歪みが元に戻ったことに、ただ首を傾げている。彼らの運命は、この瞬間、守られたのだ。武神の介入という名の悲劇は、この世界から消え去った。


私の使命は、果たされた。


その時、私の体に、再び光が宿り始めた。時の境界線に戻る、転送の光だ。


私は、最後に、幼いクロード王子を見た。彼は、私にもらった光が残る掌を、不思議そうに見つめていた。そして、私に、小さく手を振った。


私は、涙を流しながら、彼の無邪気な笑顔に、静かに別れを告げた。


「さよなら、クロード王子…あなたが、愛と運命を信じられる未来を」


光が強まり、私の体は、元の時代へ向けて、時の流れに引き上げられていった。


私が過去に植え付けた運命の種は、未来のクロード王子を、憎しみから救うことができるだろうか。

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