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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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5話 本当の悪役令嬢、ついに現る

「リリアーナ。君が、このイザベラのために自分を犠牲にしていたことは、もう分かった。だから、もうやめてくれ」


レオンハルト殿下は、私を抱きしめたまま、イザベラを睨みつけた。イザベラは、予想外の展開に顔を青くしている。


「殿下!違います!リリアーナ様は、そんなつもりでは……!」


イザベラが必死に弁解するが、レオンハルト殿下の独占欲は、もはや誰も止められないようだ。私は、レオンハルト殿下の胸の中で、絶望の淵に立たされていた。


(もう、ダメだ……。私の悪役令嬢としての人生は、完全に終わった……)


その時、レオンハルト殿下の背後から、冷たく、澄んだ声が響いた。


「レオンハルト。私の婚約者に、何をなさっているのかしら?」


その声に、レオンハルト殿下は、びくりと肩を震わせ、私を抱きしめる腕の力を緩めた。私も、その声に聞き覚えがあった。


振り返ると、そこに立っていたのは、一人の女性だった。銀色の髪に、氷のように冷たい青い瞳。彼女の顔は、私と瓜二つだった。


「リリアーナ……?」


レオンハルト殿下は、呆然と呟いた。そう、彼女こそが、本来のリリアーナ・フォン・アウグスト公爵令嬢だった。


私は、前世の記憶を持つ「転生者」として、この体に入り込んだ。本来のリリアーナは、病弱なため、幼い頃から人里離れた療養施設で暮らしていた。私が転生した時、彼女の魂は眠りについている、とばかり思っていたのに。


「レオンハルト。私がいない間に、随分と浮気癖がついたようね。それとも、あなたの目に留まる女は、この世に一人しかいないとでも思っていたのかしら?」


本来のリリアーナは、冷たい笑みを浮かべて、レオンハルト殿下に近づいていく。彼女の放つ、圧倒的なオーラに、レオンハルト殿下は一歩後ずさった。


「リリアーナ、君は……」


「ええ、私よ。レオンハルト。あなたの愛すべき、婚約者」


本来のリリアーナは、私の隣に立つと、私とレオンハルト殿下を交互に見て、フッと鼻で笑った。


「お前は、一体誰だ?」


彼女は、私に尋ねた。その声には、一切の感情がこもっていない。


「私は……リリアーナ・フォン・アウグスト……です」


私は震える声で答えた。彼女は、私の返答に、愉快そうに笑った。


「面白い。私の名前を騙る偽物。そして、私の婚約者まで手を出そうとしたのね」


彼女は、そう言うと、私の頬に手を伸ばした。その手が、私の頬を叩く、と思ったその時、私の横から手が伸び、彼女の手を掴んだ。


「リリアーナ様!何をするのですか!」


騎士団長のロベルト様が、彼女の手を強く握り、怒りを露わにした。


「放しなさい、ロベルト。この偽物が、私の婚約者を誑かそうとしたのよ」


「偽物?何を言っているのですか!リリアーナ様は、リリアーナ様です!」


ロベルト様は、私がロベルト様と、真の強さについて語り合ったこと、そして彼が私に忠誠を誓ったことなどを、興奮して話し始めた。


その言葉を聞いた本来のリリアーナは、呆れたようにため息をついた。


「私の不在の間に、随分と面白いことになっていたのね。……いいでしょう。ならば、今からこの偽物と、私のどちらが本物の『リリアーナ』か、試してみましょうか」


彼女は、そう言うと、周囲の空気が一変するほどの魔力を放った。そして、私とレオンハルト殿下、そして他の攻略対象たちに、冷たい視線を向けた。


「本物の『悪役令嬢』が、どういうものか教えてあげるわ。この愚かな偽物と、あなたたちにね」


私は、彼女の言葉に、身震いした。


この女性こそ、本当の「悪役令嬢」だ。私の「嫌われる努力」は、彼女の足元にも及ばない。


「私は……この世界で、生きていけるのだろうか……」


私は、これまでの努力が全て無駄だったことを悟り、絶望の淵に突き落とされたのだった。

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