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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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49話 武神の介入と戦場への転移

部屋全体を包んだ轟音と光は、私たち全員の視界を奪った。それは、千鶴の混沌の魔力とも、本物のリリアーナの鎮静の魔力とも違う、原始的な暴力性を帯びたエネルギーだった。


雷鳴のような轟音が収まり、私がゆっくりと目を開けると、景色は一変していた。


古城の応接室ではない。


足元は、血と泥にまみれた、荒涼とした大地。鼻を突くのは、火薬と焦げた肉の異臭。頭上では、剣と剣がぶつかる金属音と、悲鳴が鳴り響いている。


私たちは、戦場にいた。


「チッ、テメェら、どんだけ運命と憎しみでゴチャゴチャやってんだよ!」


上空から、苛立ちと興奮が混じった声が響いた。


見上げると、武神 耕太が、巨大な剣を背に、禍々しいオーラを纏って空中に立っていた。彼の周囲には、赤と黒の雷が走っている。


「武神…!」


クロード王子は、憎しみに満ちた声で、その名を呼んだ。彼の剣は、もはや私やレオンハルト殿下ではなく、空中の武神に向けられていた。


「俺たちの物語が、お前の退屈しのぎの道具だったなんて、許さない…!」


武神耕太は、クロードの憎しみに満ちた叫びに、満足そうに笑った。


「ハッ、いいぞ、クロード!その純粋な憎しみ、武神の血を持つお前にこそ相応しい!だがな、お前の憎しみだけじゃ、物語は面白くねぇんだよ!」


武神は、手にした巨大な剣を、眼下の戦場に突き刺すように振り下ろした。


「だからよ、テメェの運命の対象も、まとめてこの戦場に連れてきてやったぜ!」


彼の言葉は、最悪の真実を意味していた。


武神は、クロード王子の憎しみと、私が持ってきた「運命」という要素を、直接「物語の舞台」に放り込んだのだ。


私たちは、オーロリア王国とヴァーレント王国の兵士たちが入り乱れる、激戦地の真ん中に立たされていた。周囲では、兵士たちが、無為な殺し合いを続けている。


「クロード殿下!これは、武神の策略です!私たちを、憎しみと絶望で、完全に支配しようとしている!」


レオンハルト殿下は、肩からの出血を抑えながら、叫んだ。彼は、アザトースの導きで、カミの思惑を理解し始めていた。


本物のリリアーナは、周囲の兵士たちの絶望的な感情に、顔を歪ませていた。


「ダメだわ…このままでは、クロードの憎しみが、この戦場の怨念と共鳴して、完全に暴走してしまう…!」


彼女は、クロード王子のそばに駆け寄り、彼の腕を掴んだ。


「クロード!憎しみを抑えて!あなたの体は、武神の血で限界よ!」


しかし、クロード王子は、彼女の言葉を無視した。彼の瞳は、もはや憎しみしか映していなかった。


「退屈しない物語を見せてやるよ、武神…!俺がお前を討つ、最高の物語をな!」


クロード王子は、武神に向かって駆け出そうとした。彼の体からは、カミの血が暴走する、禍々しい赤いオーラが噴き出している。


このままでは、彼は憎しみに飲まれ、武神の思惑通りに暴走し、そして破滅する。


私は、クロード王子の暴走を、なんとしてでも止めなければならない。彼を、愛を信じる心へ連れ戻し、この悲劇的な舞台から、脱出させなければならない。


私は、愛と憎しみが激突する戦場の真ん中で、再び、クロード王子の手を掴んだ。


「クロード王子!私を見て!あなたの復讐は、私の運命を殺すことになるわ!」

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