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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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45話 孤独な王と再会の衝撃

意識が戻ると、私の体はひどく重く、全身が鉛のように冷たかった。


光の渦から弾き出された私は、見覚えのある古い屋敷の応接室の床に倒れ込んでいた。ここは、私が異世界の人間だとバレた後、クロード王子や本物のリリアーナと作戦会議をしていた場所だ。


「ここ…は…」


私はかろうじて身を起こし、室内にいる人影を探した。


部屋の片隅で、クロード王子はテーブルに広げた地図と剣を前に、座り込んでいた。彼の隣には、本物のリリアーナが、瞑想するかのように静かに目を閉じている。


空気が凍りついている。私が知っていた、憎しみに満ちていながらも、どこか愛を求める光を宿していたクロード王子の面影は、そこにはなかった。彼の瞳は、深く、暗い虚無を宿しているだけだ。孤独と憎しみ、そして深い絶望が、彼を完全に支配しているのが分かった。


「クロード王子…!」


私は、思わず彼の名を呼んだ。その声は、震えていた。


私の声に、まず反応したのは本物のリリアーナだった。彼女は目を見開き、驚愕と同時に強い警戒の色を浮かべた。


「あなた…!なぜ、ここに…!」


彼女の視線が、私の背後を探る。千鶴の気配がないか警戒しているのだろう。


そして、クロード王子がゆっくりと振り返った。


彼の視線が私を捉えた瞬間、私の心臓は止まった。その冷たい視線は、まるで魂のない人形のようだった。


「…また、カミの戯れか」


彼は、静かに、そして完全に感情を排した声で言った。その声には、喜びも、驚きも、悲しみも、何一つ含まれていなかった。ただ、目の前の現象を「退屈な邪魔」として認識しているだけだった。


「クロード王子、違うわ!私よ!リリアーナよ!」


私は立ち上がり、彼に駆け寄ろうとした。


しかし、彼はその場で動かず、ただ冷たい目を向けてくる。


「私のリリアーナは、お前たちカミによって消された。お前が、その姿を真似た幻影であろうと、別の異物であろうと関係ない」


彼の言葉は、私の心を深く切り裂いた。私がこの世界に戻ってきたという事実は、彼にとって、失った愛を嘲笑う、新たなカミの策略でしかなかったのだ。


「武神の呪いが、完全に彼を覆ってしまったのね…」


本物のリリアーナが、悲痛な声で呟いた。


「千鶴の狙いは、これだったのよ。あなたが消えることで、彼の心を運命から完全に引き離し、憎しみという単一で予測可能な運命に閉じ込める。そして、退屈になったから、あなたを再び戻し、彼を揺さぶる」


本物のリリアーナは、憤りをあらわにした。


「許さないわ、千鶴…!武神…!」


私は、そんな本物のリリアーナの言葉を聞きながらも、ただクロード王子を見つめていた。彼の瞳には、私がいた記憶すら、もはや意味をなしていないかのように見えた。


私は、彼の元を去ったことで、彼を救うどころか、最も深い絶望に突き落としてしまったのだ。


「クロード王子…聞いて。私は、あなたの運命を取り戻すために、戻ってきたのよ」


私は、意を決して、そう告げた。


クロード王子は、剣を手に取ると、冷たい笑みを浮かべた。


「運命?そんなものは、この世界に存在しない。存在するのなら、俺の家族は死ななかったし、ライオネルは命を落としかけなかった。そして、お前は消えなかった」


彼は、私に向かって、剣の切っ先を向けた。


「お前が、カミの道具だろうと、幻影だろうと構わない。だが、俺の復讐の邪魔をするのなら――」


彼の瞳に、一瞬、激しい殺意が宿った。


「二度と消えないように、俺の手で、永遠に葬ってやる」


私は、命の危機を感じながらも、後悔はしなかった。

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