33話 絡み合う秘密
翌朝、クロード王子と私は、再び、本物のリリアーナと向き合っていた。昨夜、彼女が語った衝撃的な真実に、私の心はまだ混乱していた。彼女は、カミに操られていたこと、そして、この世界の運命を変えるために、私たちを救いに来たと言った。
私は、彼女に尋ねた。
「あの…鶴神千鶴さんは…」
その言葉に、クロード王子の顔が、一瞬で険しくなった。
「千鶴…?そいつもカミの1人なんだよな?」
クロード王子の剣幕に、私は、戸惑った。
「彼女は…ヴァーレント王国の全権大使を操り、交渉の場に現れた、黒幕です」
私の言葉に、クロード王子は、目を見開いた。
「なん…だと…?」
「はい。彼女は、この戦争を、私たちの運命が引き起こした、最高の舞台だと言いました…」
クロード王子は、信じられないという表情で、私を見つめていた。彼の表情は、驚きと、激しい怒りに満ちていた。
「あの女が…俺たちの運命を、面白おかしく見物しているカミの一柱だと…?」
それ以前に私は気になっていることをクロード王子から聞いた。
「クロード王子…どうして、カミのことを…?」
今度は、私が、驚きを隠せずにいた。彼は、私と同じ、異世界からの転生者なのだろうか。
「俺は…」
クロード王子は、一瞬、口ごもった。そして、苦渋に満ちた表情で、続けた。
「俺は、過去に…カミに、家族を殺された」
その言葉に、私は、息をのんだ。彼の瞳の奥に、深い悲しみが宿っているのが見えた。
「俺の家族は、シナリオに沿わないという理由で、カミに消されたんだ」
クロード王子の告白に、私は、言葉を失った。私と同じ、カミに弄ばれた被害者。彼は、そんな悲しい過去を抱えて、生きていたのだ。
その時、これまで静かに私たちの話を聞いていた本物のリリアーナが、クロード王子に、静かに問いかけた。
「クロード、あなたは…その時、カミの力をもらいましたね?」
彼女の言葉に、クロード王子の表情が、一瞬で凍りついた。彼は、信じられないという表情で、本物のリリアーナを見つめていた。
「なぜ…それを…」
「あなたの心の中に、カミの血が流れているのが、私にはわかるの」
本物のリリアーナは、そう言って、悲しい表情を浮かべた。
「武神の、血…」
その言葉に、クロード王子の顔から、血の気が引いていくのがわかった。
「あなたは…カミに、利用されているだけではない。彼らの運命に、組み込まれてしまっている」
本物のリリアーナは、そう言って、クロード王子に、静かに語りかけた。
「その力は、あなたを、復讐という名の、新たな悲劇に突き落とすための、道具よ」
クロード王子は、無言で、彼女の言葉を聞いていた。彼の心の中には、カミの存在、そして憎しみに満ちた過去が、再び、渦巻いていた。
絡み合う秘密。
三人の運命は、複雑に絡み合い、この世界の未来は、まだ、見えなかった。




