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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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28話 交渉の舞台

リリアーナと別れてから、数日が経った。


俺は、フレイア王国の第一王子として、この無益な戦争を終わらせるために、あらゆる手段を講じていた。しかし、オーロリア王国とヴァーレント王国は、ライオネル王子の死に激怒し、徹底抗戦の構えを崩さない。


このままでは、多くの命が失われる。それは、俺の友人であり、ヴァーレント王国の第一王子として、国民に愛されたライオネルが望んだことではない。


そして、俺は、リリアーナを再び、この混沌の中に引き込むという、苦渋の決断を下した。


「クロード殿下」


そう声をかけてきたのは、オーロリア王国の執事、セバンスチャンだった。彼は、俺の前に、一枚の書簡を差し出した。


「ヴァーレント王国の全権大使から、リリアーナ様を交えた交渉の場を設けたいとの申し出がございました」


俺は、その言葉に、胸の中で複雑な感情が渦巻くのを感じた。


「そうか…分かった」


俺は、セバンスチャンから書簡を受け取った。その書簡には、交渉の場所として、国境近くの古城が指定されていた。


指定された場所に向かう馬車の中で、俺は、リリアーナと再会した。


彼女は、以前のような輝きを失い、悲しみと絶望に満ちた表情をしていた。俺の心は、激しく痛んだ。


俺が…俺が彼女を、こんなにも傷つけた。


俺は、彼女に、冷たい言葉を投げかけたことを後悔した。だが、ライオネルの死は、俺に、愛を捨てるという決断をさせた。


「リリアーナ」


俺は、静かに、彼女の名を呼んだ。


「大丈夫か…?」


「はい…」


彼女は、俺の顔を見ようとしない。その態度に、俺は、さらなる罪悪感に苛まれた。


「ごめんな…」


俺は、心の中で、そう謝った。俺のせいで、お前はこんなにも苦しんでいる。


やがて、馬車は、古城に到着した。


古城の会議室には、ヴァーレント王国の全権大使が、すでに着席していた。彼は、ヴァーレント国王の、最も信頼する家臣だ。


俺たちは、席に着いた。リリアーナは、俺の隣で、ただ静かに、俯いていた。


「クロード殿下」


ヴァーレント王国の全権大使が、重々しい声で、口を開いた。


「この度は、調停役を引き受けてくださり、感謝いたします。しかし、我々は、ライオネルという勇敢な王子を失いました。この悲劇の真相を、我々は知りたいのです」


俺は、その言葉に、強く頷いた。


「私も、同じです。この戦争は、誰かの策略によって引き起こされたものです。ライオネルは、我がフレイア王国とは戦っていなかったはずだ」


その言葉に、大使は、険しい表情を崩さない。


「しかし、ライオネル王子は、オーロリア王国の人間であるリリアーナ様と接触した直後に、命を落としました。これは、決して偶然ではありません」


リリアーナが、ピクリと肩を震わせる。俺は、彼女に、これ以上、悲しい思いをさせたくなかった。


「彼女は、無関係だ」


俺は、大使に、強く言い放った。


「この件は、まだ明るみになっていない、第三者による工作が関わっていると我々は考えています。両国の国境付近で、住民たちが互いを憎むように仕向けられたという報告も上がっている」


大使は、俺の言葉に、困惑した表情を浮かべる。


「クロード殿下、そのような話は、我々にも届いております。しかし、我々の兵士が、無残にも殺されたという事実は変わりません。この悲劇が、オーロリア王国と無関係だと、どうして言えるのですか?」


大使の言葉は、俺の胸に突き刺さった。


その通りだ。


俺が、この事件を個人的な復讐の対象として見ている間に、事態は悪化し、多くの命が失われた。ライオネルの死は、第三者による工作が招いたものであり、そしてそれは、俺の選択が招いた現実の悲劇だ。


「……」


俺は、言葉を失った。


その時、これまで俯いていたリリアーナが、ゆっくりと顔を上げた。彼女の瞳は、涙で濡れていた。


「大使様…、ライオネル殿下は…、私を、守ろうとしてくれました…」


彼女は、震える声で、そう告げた。


「戦争を…止めてください…」


彼女の、悲痛な叫びは、大使の心を動かすだろうか。


交渉は、まだ、始まったばかりだ。そして、俺は、リリアーナの心を、もう一度、取り戻すことができるのだろうか。


すべては、これからだ。

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