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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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25話 悲劇の選択

私は、フォークを落とした衝撃で、テーブルに突っ伏した。千鶴の言葉が、私の頭の中を駆け巡る。「その代償を、あんたは、誰に払わせるんやろか?」という声が、嘲笑のように響く。


セバンスチャンの心配そうな声が遠く聞こえる。「リリアーナ様、大丈夫でございますか?」


「大丈夫…ではないわ」私は、震える声で答えた。「セバンスチャン…、ヴァーレント王国の第一王子、ライオネル殿下は、今…?」


「はい。殿下は、軍の最前線で指揮を執っておられます」


その言葉に、私の心臓が凍りついた。ライオネル王子は、クロード王子の最も親しい友人だ。もし、彼が前線で戦い、命を落とすようなことがあれば……。


私は、愛するクロード王子を、親友の死という悲劇に突き落とすことになる。私の選択が、クロード王子を、悲しみの淵に突き落とす。


「どうすればいいの…?」私は、震える唇で呟いた。


「リリアーナ様…、この事態を解決する唯一の方法は、殿下とヴァーレント王国の交渉を仲介することです」セバンスチャンは、そう言いながら、私の手を握った。「もし、リリアーナ様が、殿下とのご関係を使い、ヴァーレント王国の王子と交渉できれば、事態は収拾に向かうかもしれません」


私は、その言葉に、希望を見出した。愛するクロード王子を、そして彼の大切な親友を救うことができるかもしれない。


その日の午後、私は、クロード王子に会うため、王宮に向かった。しかし、王宮の門前で、私は千鶴の言葉を思い出してしまう。「あんたの愛が、多くの人々を不幸にする」。私の愛は、クロード王子を巻き込む。そして、この戦争の黒幕である千鶴の目的は、私を追い詰めること。


もしかしたら、クロード王子に助けを求めること自体が、千鶴の策略なのかもしれない。私がクロード王子と親密な関係を築くことで、彼を危険に晒すことになる。愛するクロード王子を、これ以上、危険な渦に巻き込むわけにはいかない。


私は、踵を返し、屋敷に戻った。セバンスチャンは、私の行動に戸惑っていたが、私はただ静かに言った。「セバンスチャン、準備を。ヴァーレント王国へ向かいます」


「リリアーナ様、それは危険すぎます!」


「わかっているわ」私は、セバンスチャンの心配そうな顔を見つめ、静かに答えた。「でも、クロード王子に助けを求めることはできない。私が…私の力で、この事態を収拾させなくては」


私は、愛する人を遠ざけることを選んだ。


私は、危険を承知で、一人でヴァーレント王国へと旅立った。それは、クロード王子への愛ゆえの、悲しい決断だった。


数日後、私は、ヴァーレント王国の国境付近にある、ライオネル王子の陣営にたどり着いた。


「リリアーナ様!」ライオネル王子は、私の姿を見て、驚きと喜びの入り混じった表情を浮かべた。「なぜ、こんな危険な場所に…」


「ライオネル殿下、お願いです。戦争を止めてください」


しかし、私の願いは届かなかった。ライオネル王子は、悲しい目で私を見つめ、静かに首を振った。「それはできません、リリアーナ様。我々の兵士が、無残にも殺されました。この悲劇は、貴国が仕組んだことだと、私は、確信しています」


「それは、違います!誰かの策略なのです!」


「証拠は?」ライオネル王子の言葉に、私は、何も言い返すことができなかった。


その時、遠くで、兵士たちの鬨の声が聞こえた。ライオネル王子は、悲痛な表情で私に言った。「リリアーナ様、もう、時間がない。貴方は、すぐにここを離れてください」


「ライオネル殿下!」私は、彼の名を叫んだ。しかし、彼は、私の声に耳を傾けることなく、戦場へと向かっていった。


その日の夜、私は、戦場の片隅で、クロード王子と再会した。彼は、私を心配して、密かに戦場まで来てくれたのだ。


「リリアーナ!なぜ、こんな場所に…」


「クロード王子…、私は、この戦争を止めたくて…」


「それは、君の仕事じゃない!なぜ、僕を頼ってくれなかったんだ…」クロード王子の言葉に、私は、涙が溢れてくるのを感じた。


「あなたを…、あなたを危険に巻き込みたくなかった…」


私の言葉を聞いたクロード王子は、悲しい目で私を見つめ、そして、その手に、剣を握りしめた。


その瞬間、戦場のあちこちで、爆発が起こった。それは、鶴神千鶴の策略だった。私がクロード王子と再会し、彼を危険に晒す瞬間を、千鶴は、待ち構えていたのだ。


爆発の炎が、クロード王子の姿を、そして、私の視界を、一瞬で覆い尽くした。


「リリアーナ、逃げて!」クロード王子の声が、遠く聞こえる。


私は、瓦礫に足を取られ、その場に倒れ込んだ。目の前に、ライオネル王子が倒れているのが見えた。彼の胸には、深い傷が刻まれていた。


「ライオネル、殿下!」


私は、彼に駆け寄った。ライオネル王子は、かすかに微笑み、震える手で、私の頬に触れた。「リリアーナを…、頼む…」


その言葉を最後に、彼の瞳から光が消えた。


ライオネル王子の死は、両国の兵士たちの怒りをさらに燃え上がらせた。戦争は、もはや、止められない。


私は、クロード王子と、悲劇的な形で再会し、彼の親友の死を、その目で見てしまった。そして、この悲劇の連鎖が、私の選択によって引き起こされたことを、私は、深く、理解した。


愛する人を守るために、私は、愛を遠ざけた。しかし、その行為が、より大きな悲劇を引き起こしてしまった。私の愛は、世界を不幸にする。


私は、自らの罪の重さを感じながら、ただ、燃え盛る戦場を見つめることしかできなかった。

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