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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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236話 勝利の凱歌と、予期せぬ同乗者

アナザーの核が砕け散り、閃光が収まった後も、誰一人として武器を下ろす者はいなかった。


「油断するな! 再生の予兆はあるか!?」 クロードが鋭い視線を巡らせる。 「魔力反応、消滅を確認……いえ、まだ残滓があるかもしれません」 セバスチャンとカイが、全方位センサーを極限まで稼働させ、空間の揺らぎを監視する。 ライオネルとレオンハルトは、リリアーナを挟むように立ち、どんな奇襲にも対応できるよう身構えていた。


世界は、奇妙なほど静まり返っていた。 風の音も、崩壊の音も消え、完全な無音が訪れた。


その静寂が、敵の消滅を告げる合図だった。


「……終わったのね」


リリアーナが、ふっと息を吐き、剣を下ろした。 彼女の声が、静止した世界に波紋のように広がる。


「私たちの……勝ちよ」


その勝利宣言と共に、アナザーの残骸から溢れ出した光が、温かな奔流となって辺りを包み込んだ。それは、歪められていた運命が、あるべき形へと修復されていく輝きだった。


帰還の光

光は次第に輝きを増し、リリアーナ、クロード、ライオネル、レオンハルト、セバスチャン、カイの身体を優しく包み込み始めた。 しかし、千代だけは、その光の外側にいた。


「あ……」


全員が直感した。 これは、**「元の世界(統合された未来)」**へと帰還するための光だ。 過去の住人である千代は、ここに残るのだと。


別れの時が来た。


「千代!」


光に包まれ浮き上がりながら、仲間たちが口々に叫ぶ。


「未来のお前には散々苦しめられたが……今日の茶は、悪くなかったぞ!」 クロードが苦笑いで告げる。


「君の混沌のおかげで、俺たちの絆はより強固になった。……礼を言う!」 ライオネルとレオンハルトが、敬意を込めて拳を胸に当てる。


「あなたの存在は非論理的で、厄介で、最高でしたよ。……元気で」 セバスチャンとカイが、深く一礼する。


それは、未来で世界を滅ぼしかけた「鶴神千鶴」への皮肉混じりの愚痴と、共に世界を救った「千代」への、最大限の感謝だった。


千代は、涙をこらえて鼻をすすり、杖を握りしめた。 「ふん! どいつもこいつも、偉そうに……! さっさと行ってまい!」


最高の褒め言葉

最後に、光の中心にいるリリアーナが、千代を見つめた。


「千代」


「……なんや、リリアーナはん」


リリアーナは、かつて千代が何よりも欲しがり、誰からも与えられなかった言葉を、満面の笑みで贈った。


「あなたの作ったあの羽織……。誰よりも温かくて、世界一美しかったわ」


「ッ……!!」


千代の瞳から、涙が溢れ出した。 カミとしての力でも、混沌の恐怖でもない。ただの「千代」という職人が作ったものを、心から認められた。その事実が、彼女の魂を救済した。


「おおきに……! おおきに、リリアーナはん……!!」


千代の泣き笑いの顔が、光の彼方へと遠ざかっていく。 光の柱は徐々に狭まり、リリアーナたちの姿を空の彼方へと吸い上げていった。


運命のいたずら

光が消え、世界が元の静けさを取り戻そうとした、その時。


本来の歴史であれば、この近くを通りかかり、アナザーに見出されて無理やり知識を植え付けられ、武神・耕太となるはずだった一人の少年が、そこを歩いていた。


彼は三日も何も食べておらず、ふらふらと光の方へ引き寄せられていたのだ。


「あ……光……? あったかい……」


少年は、消えゆく光の柱の端に、偶然触れてしまった。 本来なら過去に残るはずの彼は、強力な帰還のエネルギーの余波に巻き込まれた。


シュンッ。


「え? ……うわぁぁぁぁぁ!?」


誰も気づかないまま、未来の武神となるはずだった少年は、リリアーナたちと共に**「平和な未来」**へと連れ去られてしまった。


過去の世界には、カミの知識を持つ者も、運命を歪める者も、誰もいなくなった。 ただ、一人の少女が、希望を胸に、新しい着物を織り始める未来だけが残された。

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