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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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233話 混沌の女帝と、強制解放された魂

過去の強敵たちを模した肉塊の猛攻に、リリアーナたちは防戦一方となっていた。 クロードの剣は重く、ライオネルの剛剣は精彩を欠き、レオンハルトの盾は脆い。


「くそっ……! なぜだ、体が動かない……!」 「奴らの圧力が強すぎるのか……!?」


仲間たちは焦燥に駆られていた。全力を出しているつもりなのに、力が空回りし、敵の圧倒的な「全盛期の力」に押し負けている。


しかし、その戦場を後方から見つめる**千代(千鶴)**の目には、全く別の真実が映っていた。


心のフィルター

(違う。あんたらは、弱くない)


千代は、クロードが剣を振るう瞬間の、わずかな躊躇いを見逃さなかった。 ライオネルが踏み込む瞬間の、無意識のブレーキを感じ取っていた。


彼らは、世界線の統合や過去の改変を経て、魂のレベルではかつてないほど強くなっている。 だが、その心には分厚いフィルターがかかっていた。


それは、アナザーに見せられた「敗北の運命」のトラウマや、かつて仲間を失った恐怖、そして「人間としての一線」を超えてしまうことへの無意識の恐れ。 それらが雑音ノイズとなり、彼らの本来の実力を、無意識のうちに数割程度にまで抑制していたのだ。


「アホか、あんたらは! 相手は神やぞ! 理性なんかで勝てるか!」


千代は、ギリっと奥歯を噛み締めた。 このままでは全滅する。ならば、やるしかない。 かつて世界を絶望させた鶴神千鶴の、最も得意で、最も忌まわしい力を――「味方」のために。


混沌の号令カオス・オーダー

「おい、そこなボロ雑巾ども! わての言うことを聞けぇぇッ!!」


千代が、戦場の中心で千鶴の杖を大地に突き立てた。 その瞬間、彼女から放たれたのは、物理的な魔力ではなく、精神を直接侵食するドス黒い波動だった。


それは、かつて彼女がヴァーレントの大使を操り、人々を狂わせた**「心への干渉」と「強制隷属」**の力。


「な、なんだ千代!? 頭が……!」 クロードたちが苦悶の表情を浮かべる。


「黙って聞け! これは**『命令』**や!」


千代の瞳が、カミの妖しい光を帯びる。彼女は、その強制力を、彼らを操るためではなく、彼らの心を縛る**「理性」と「恐怖」のフィルターを破壊する**ために叩きつけた。


『恐怖を忘れろ! 躊躇いを捨てろ! 限界なんて勝手に決めるな!』


千代の言霊が、脳髄に直接響く。


『あんたらは、わてが認めた最強の人間や! その魂の底の底まで絞り出して、わてに勝利を献上せんかい!!』


それは、精神支配の悪用ハック。 脳のリミッターを強制的に解除し、火事場の馬鹿力を恒常的に引き出させる、禁断のドーピング。


覚醒:リミッター解除

ドクンッ!!


全員の心臓が、早鐘のように跳ねた。 クロードの瞳から迷いが消え、瞳孔が開く。 ライオネルの筋肉が膨張し、血管が浮き出る。 セバスチャンとカイの演算装置が、安全装置を焼き切りながらレッドゾーンへと突入する。


「う、おおおおおおおおっ!!」


クロードが咆哮した。 肉塊の黒鉄元帥が振り下ろした拳を、クロードは片手で受け止め、そのまま握り潰した。


「軽い……! 今なら、何でも斬れる気がする!」


「力が……溢れてくる! 恐怖が、ない!」 ライオネルが、肉塊のノエマを一刀両断にする。その速度は、音速を超えていた。


「これが、僕たちの本当の力……!」 レオンハルトの盾が、武神の炎を完全に遮断し、消滅させる。


千代の「強制隷属」は、彼らを奴隷にしたのではない。 彼らを、「自分自身という殻」から解放し、真のポテンシャルを100%、いや120%引き出す修羅へと変貌させたのだ。


「へっ……。ええザマや。それでこそ、わての『共犯者』や」


千代は、鼻血を拭いながらニヤリと笑った。その負担は計り知れないが、彼女はカミとしてのプライドを懸けて、仲間たちの精神を鼓舞し続けた。


戦況は、一気に逆転へと動き出す。

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