表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

233/240

230話 共通の敵と、知神のナイショ話

「あいつ(アナザー)さえいなきゃ、私はクロードと平穏に暮らせたのに!」 「母上あのひとさえいなきゃ、僕はただのデータの海で安眠できてたんだ!」


互いの胸ぐらを掴み合ったまま、二人は同時に叫んだ。


「「あいつ(母上)が、大っ嫌いだ!!」」


その声は、完璧にハモっていた。 胃袋の中に、一瞬の静寂が訪れる。 リリアーナとアザトースは、肩で息をしながら、互いの顔を見つめ合った。そこにはもう、敵意はない。あるのは、「最悪の上司(親)を持った者同士」の、奇妙な連帯感だった。


「……ふん。そこだけは、論理的に合意できるようだな」


アザトースが、バツが悪そうに手を離した。


「ええ。そこだけは、貴方と気が合いそうだわ」


リリアーナも襟を正す。泥だらけの二人の間に、初めて「共犯者」としての空気が流れた。


秘められた策

アザトースは、ふと真顔に戻り、周囲のドロドロとした肉壁を見渡した。 そして、リリアーナに向かって、クイクイと手招きをした。


「……おい。耳を貸せ」


「なによ、改まって」


リリアーナが警戒しつつも耳を寄せると、アザトースは誰にも(アナザーにさえ)聞こえない、思考だけの声で囁いた。


『――――――――――――』


リリアーナの目が、驚愕に見開かれた。


「えっ……嘘でしょ? そんなことをしたら、貴方は……!」


「静かに。これは確率論の話だ」


アザトースは、リリアーナの口を掌で塞いだ。その瞳は、冷徹な知神のものではなく、覚悟を決めた一人の少年の光を宿していた。


「外からの攻撃は通じない。中からの自爆も失敗した。なら、残された『解』はこれしかない」


狭すぎる空間

アザトースは、リリアーナを突き飛ばすようにして距離を取った。 そして、わざとらしく顔をしかめ、服についた泥を払う仕草をした。


「あー、ダメだダメだ。計算に集中できない」


彼は、さも不愉快そうにリリアーナを指差した。


「ここには僕一人いれば十分だ。人間なんかがいると、酸素消費量が非効率だし、体温で室温が上がる。それに何より……」


アザトースの手に、青い演算魔法陣が展開される。


「二人も居ると、狭いんだよ!!」


「ちょっと、アザトース!?」


「邪魔だ、出ていけバグ野郎! 二度と戻ってくるな!」


アザトースが魔法陣を叩き割る。 それは攻撃魔法ではなく、座標を強制的に書き換える**【転送術式】**だった。


ドォォォォンッ!!


アナザーの腹部を内側から突き破るような衝撃波が発生する。しかし、そのベクトルは全てリリアーナ一人に向けられていた。


「待って! 私だけ逃げるなんて……!」


「行けッ!!」


アザトースの叫びと共に、リリアーナの身体は光の柱に包まれ、胃袋の闇から弾き飛ばされた。 遠ざかる視界の最後、泥の中に一人残ったアザトースが、ほんの一瞬だけ、悪戯っぽい笑顔を見せた気がした。


次の瞬間、リリアーナは外へと放り出されていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ