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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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223話 走馬灯の嘘と、原初の悪意

リリアーナの剣がアナザーの心臓を貫いた瞬間、世界が静止した。 崩れゆく破壊神の肉体から、膨大な記憶の断片が溢れ出し、リリアーナの脳内に直接流れ込んできた。


それは、創造主の走馬灯だった。


偽りの哀歌:孤独な神の涙

記憶の中の光景は、どこまでも白く、何もない「無」の空間だった。 そこに、一人の幼い少女――幼少期のアナザーが、膝を抱えて座っていた。


『寂しい……。誰もいない……』


少女は泣いていた。 彼女は寂しさを紛らわせるために、カオスをこねて、人形(人間)を作った。 「お友達になって」と語りかけるが、人形たちはすぐに壊れてしまう。あるいは、彼女の理解を超えて勝手に動き出し、彼女を置いていってしまう。


『どうして? どうして私の思い通りに愛してくれないの?』


彼女は、何度も世界を作り直し、何度も脚本を書き直した。 それは、完璧な世界を求めたからではない。ただ、自分を愛してくれる永遠の家族が欲しかっただけ。 運命を操作したのは、愛する子供たちが傷つかないように、自分の手元に置いておきたかったから。


『私は、ただ……愛されたかっただけなのに……』


リリアーナの胸に、ズキリと痛みが走った。 (この人も……千鶴や私と同じ、孤独な魂だったの……?)


剣を握る手が緩みそうになる。 この戦いは、ボタンの掛け違いが生んだ、悲しい親子の喧嘩だったのではないか。そんな同情が、リリアーナの心を支配しようとした。


「――ククッ」


その時。 走馬灯の中の少女が、顔を上げた。


原初の悪意:三大欲求の暴走

少女の顔は、涙で濡れてなどいなかった。 その口元は、よだれで濡れそぼり、頬は紅潮し、瞳は濁りきっていた。


リリアーナが見ていた「孤独」は、すべて彼女の都合の良い解釈に過ぎなかった。 真実は、もっと単純で、もっとおぞましいものだった。


食欲ごちそう


少女アナザーは、壊れた人形(人間)を抱きしめて泣いていたのではなかった。 彼女は、人間が絶望し、夢が潰えた瞬間に放つ「魂の悲鳴」を、美味そうに貪り食っていたのだ。


『あぁ……甘い。希望を持たせてから叩き落とす絶望は、なんて濃厚な味がするのかしら』


彼女が世界を創ったのは、寂しかったからではない。腹が減っていたからだ。 平和な時代という「熟成期間」を経て、悲劇という「調理」を施し、人類を食らう。彼女にとって歴史とは、ただのフルコースのメニューだった。


性欲エクスタシー


少女は、脚本デスノートにペンを走らせながら、股を擦り合わせ、恍惚の表情を浮かべていた。 そこにあるのは、崇高な創造の喜びではない。 他者の尊厳を犯し、運命を無理やりねじ曲げ、嫌がる人間を悲劇の淵に突き落とすことへの、性的倒錯にも似た征服感と快楽。


『もっと泣いて! もっと足掻いて! その無様な姿を見ていると、ゾクゾクして濡れてきちゃうわ!』


彼女にとって、リリアーナたちの抵抗も、クロードの死も、セバスチャンの献身も、すべては自らを慰めるためのオカズに過ぎなかった。愛などない。あるのは、被造物を凌辱する愉悦だけ。


睡眠欲おやすみ


そして、満腹になり、快楽に浸った後、彼女は退屈そうにあくびをした。


『あーあ、飽きちゃった。全部壊して、寝よっと』


彼女が「終焉」を望んだ理由。それは秩序でも救済でもない。 ただ、騒がしい玩具(人間)を片付けて、静かに眠りたかっただけ。 世界を無に帰すことは、彼女にとって「電気を消して布団に入る」程度の意味しかなかった。


露悪の顕現

走馬灯が弾け飛び、現実のアナザーが、リリアーナの耳元で囁いた。


「……見たか? 私の心が」


剣に貫かれたアナザーは、血を吐きながら、この世で最も醜悪で、最も幸せそうな笑顔を浮かべていた。


「悲しい過去? 孤独な理由? そんなもの、あるわけないだろう」


彼女は、リリアーナの同情を嘲笑い、唾を吐きかけた。


「私は、食べたかったから食べた。犯したかったから犯した。眠たかったから殺した。……それだけだ」


「貴様は……ッ!!」


リリアーナの同情は、瞬時に殺意へと変わった。 これは、救うべき魂ではない。 生まれながらにして、他者の痛みを快楽とし、他者の命を糧とする、純粋な悪。


「お前だけは……絶対に、許さない!」


リリアーナは、剣をさらに深く突き刺し、ありったけの魔力を流し込んだ。 それは、悲劇のヒロインとしての慈悲の一撃ではない。 害虫を駆除するような、決定的な断罪だった。

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