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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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221話 物理法則の逆襲と、崩落する脚本

虚無の中心。 リリアーナは、見えない鎖に磔にされ、アナザー王女が走らせる黄金のペンの音だけを聞いていた。


『リリアーナは、絶望の中で孤独に死ぬ。誰も助けには来ない』


空間に文字が刻まれるたび、リリアーナの心臓が冷たく締め付けられていく。 目の前のスクリーンには、仲間たちが敗北する映像がループしていた。クロードの腕が折れ、ライオネルが血を吐き、セバスチャンが機能を停止し、千代が泥にまみれる。


「終わりだ。お前の物語は、ここでバッドエンドを迎える」


アナザーが、最後の一文を書き終えようとした、その時。


ズズズズズ……ッ。


空間全体が、奇妙な振動を始めた。 それは、魔力の波長ではない。もっと原始的で、荒々しい、大気の震えだった。


「なんだ? 座標がずれている……?」


アナザーが眉をひそめた瞬間。


ドオオオオオオオオオオォォォォン!!!


「クロードの敗北」を映していたスクリーンが、内側からの**爆風(粉塵爆発)**によって木っ端微塵に吹き飛んだ。


「なっ!?」


煙と煤にまみれながら、一人の男が飛び出してきた。 折れた剣を握りしめ、しかしその瞳は爛々と輝いている。


「待たせたな、リリアーナ!」 「クロード……王子!?」


驚愕するアナザーの隙をつき、次は「ライオネルたちの敗北」を映すスクリーンが、高周波の共鳴音と共に粉砕された。


パリィィィィィン!!


「壁の『硬度』は計算通りだ!」 「道は開いたぞ!」


鉄屑と化した鎧を脱ぎ捨て、生身で躍り出てきたライオネルとレオンハルト。


続いて、「セバスチャンたちの停止」を映していた空間に、無数のノイズが走り、論理崩壊と共に消失した。


『システム・クラッシュ。強制解放』


「お迎えに上がりました、お嬢様」 「論理の迷宮なんて、私たちの計算の前にはザルね」


涼しい顔で(服はボロボロだが)現れるセバスチャンとカイ。


最後に、「千代の絶望」を映していたスクリーンが、紅蓮の炎に包まれ、焼き尽くされた。


ゴオオオオォォォ!!


「熱っ! ……けど、ええ気味や!」


焦げた着物を翻し、千代が飛び込んでくる。


脚本家の狼狽

「馬鹿な……あり得ない!!」


アナザー王女は、黄金のペンを取り落とした。 彼女の完璧な脚本。絶対的な敗北の運命。それが、たった数分の間に、全て覆されたのだ。


「お前たちは、魔法も力も封じられていたはずだ! 私の『設定』に抗えるはずがない!」


「ああ、確かに魔法は通じなかった」


クロードが、リリアーナの拘束を断ち切り、彼女を抱き留めながら答えた。


「だが、お前は一つミスをした。この世界を構成する**『物理法則』**まで書き換えるのを忘れていたことだ」


クロードは、煤けた顔でニヤリと笑った。


「熱力学、共振、パラドクス、遠心力。……これらは、お前の脚本シナリオの外にある、世界の真理だ。運命でどれだけ『負け』を強制しようと、火は燃えるし、物は落ちる」


セバスチャンが眼鏡を光らせて補足する。


「貴女は物語を支配しましたが、**現実リアル**を支配できていなかった。我々は、物語の登場人物としてではなく、物理空間に存在する物体として、貴女の檻を破壊したのです」


逆転の陣形

リリアーナは、仲間たちの言葉に、魂が震えるのを感じた。 彼らは、魔法や奇跡に頼らず、人間としての知恵と、泥臭い工夫で、神の絶対的な運命をねじ伏せて帰ってきたのだ。


「みんな……すごい……!」


「リリアーナ。仕上げだ」


クロードが、リリアーナに剣を渡す。 全員が、アナザー王女を取り囲むように武器を構えた。


「運命も、論理も、物理法則も。全てを味方につけた俺たちに、もう勝てる道理はないぞ、アナザー」


アナザー王女の顔が、屈辱と憤怒で歪んでいく。 彼女の背中から、破壊神の翼が再び噴き出し、空間を黒く染め上げる。


『認めん……! 私が創造主だ! 私がルールだ! 物理法則ごと、貴様らを消滅させてやる!!』


「やれるものなら、やってみろ!」


リリアーナの声が響く。 今度こそ、本当のラストバトル。 物理と魔法、知恵と感情、全てが融合した人類の反撃が始まる。

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