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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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205話 運命の脚本家と、最後の反逆

光に包まれ、リリアーナの意識が世界に溶けようとした、その刹那。


「……ご苦労だったな。異界の迷い子よ」


世界を包む白い光が、ガラスが割れるような音と共に凍結した。 安らかな消滅は訪れない。代わりに、圧倒的な威圧感が、空間を支配した。


リリアーナが目を開けると、そこは千代を救った川辺の風景が歪み、時空の裂け目が口を開けていた。 そこから現れたのは、威厳に満ちた女性、アナザー王女。 そして、その傍らには、まだ少年の姿をした知神アザトースと、異様な装束に身を包んだ近衛護衛軍が控えていた。


創造者の嘲笑

「アナザー……王女? どうして……私は、歴史を変えたはず……」


リリアーナは困惑し、後ずさる。千代を救い、三柱のカミが生まれる未来は消えたはずだ。ならば、アナザーもまた、この時間軸に干渉できないはずではないか。


アナザーは、リリアーナの困惑を楽しむように、冷ややかに微笑んだ。


「お前が過去を書き換えることなど、全て予知していた。いや、正確には、私が書いた『脚本』の一部に過ぎない」


「脚本……?」


「そうだ。お前が愛と犠牲で運命を変えようと足掻く姿。それこそが、私が求めた**『究極の悲劇』のフィナーレだ。お前が全てを救ったと思い込み、安堵した瞬間に、その全てを無**に帰す。……これほど美しい絶望があるか?」


アナザー王女は、運命の創造者として、リリアーナの行動さえも「物語のスパイス」として利用していたのだ。彼女は、リリアーナが持つ**「時の砂時計の力」**そのものを回収し、今度こそ完全に自由意志を封殺した世界を創ろうとしていた。


「アザトース。そして護衛たちよ。あの女から砂時計の概念を剥ぎ取れ。そして、彼女の存在を、歴史の塵に還せ」


少年のアザトースが、無機質な瞳で一歩前に出た。 「了解。論理的排除を開始する」


最終決戦の開幕

「ふざけるな……!」


リリアーナの瞳から、困惑が消え、激しい怒りが噴き出した。 クロードの笑顔も、セバスチャンの献身も、レオンハルトの愛も、ライオネルの友情も、カイの決意も。 その全てを「脚本」と呼び、嘲笑うこの創造者を、絶対に許すわけにはいかない。


「私の運命は……私たちが選んだ未来は、あなたの脚本なんかじゃない!!」


リリアーナは、虚空からクロード王子の剣(概念)を具現化させ、強く握りしめた。 彼女の背後には、今はもういない、しかし確かに彼女の中に生きている全ての仲間の幻影が重なった。


「総員、攻撃開始!」


護衛軍が一斉に襲いかかり、幼きアザトースが論理の魔法を放つ。そして、アナザー王女が運命操作の力を振るう。


これが、正真正銘、最後の戦い。 **運命を「書く」アナザー**と、**運命を「生きる」リリアーナ**の、最終決戦が始まった。


「セバスチャン、力を貸して!」


リリアーナの身体が、零号の超高速機動で跳ねた。護衛軍の剣撃を紙一重でかわし、その懐へと飛び込む。


「ライオネル殿下!」


彼女の一撃は、剛剣の重みを宿し、護衛兵の鎧ごと吹き飛ばす。


「レオンハルト殿下!」


アザトースの放つ青い論理魔法に対し、不滅の盾を展開して弾き返す。


「カイ!」


敵の陣形の隙を、人造の知性で瞬時に解析し、最短ルートを駆け抜ける。


そして、リリアーナは、アナザー王女の喉元へと迫った。


「クロード!!」


愛する人の名を叫びながら、リリアーナは、全ての想いを乗せた一撃を、運命の創造者へと解き放った。

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