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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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198話 砂時計の真理と心を読む女王

泥沼と化していた千鶴との戦いは、リリアーナ女王の「万象の光」によって、彼女の優勢へと傾いていた。千鶴は、リリアーナの攻撃に魂の記憶を穿たれ、激しく後退する。


「答えて。この砂時計に触れると、一体どうなる?カミがこの世界を支配する、真の最終目的とは、何だったの?」


リリアーナの問いに、千鶴は屈辱と焦燥で顔を歪ませた。


「フフフ…知りたいんか、リリアーナ。あんたらの命懸けの犠牲が、何のための小道具やったかをな…だが、この真実だけは、人間どもに教えるわけにはいかへん!死んでも口を割るものか!」


千鶴は、自らの内に秘めた最後の秘密を守るため、徹底した沈黙を選んだ。リリアーナは、言葉による交渉が無意味であることを悟る。


(私には、この真実を知る必要がある。この戦いを終わらせるには、相手の論理の最奥を暴かねばならない。セバスチャンの論理解析でも、千鶴の個人の決意までは破れない…)


その瞬間、リリアーナの脳裏に、今は亡き秘書官セバスチャンの後任として、献身的に仕えているエミリア・ローウェルの姿が浮かんだ。彼女の純粋な忠誠心は、リリアーナを愛し、その成功を願う、一種の**「愛」**として装置のトリガーを満たしていた。


リリアーナは、その**「弔いの力」**を起動させた。


「私を愛する者たちの能力よ…今、エミリアの力を私に!」


彼女の身体を覆う光の粒子が、一瞬だけ新たな周波数を帯びた。リリアーナは、**エミリアの『心象共鳴シンパシー・ミラー』**という、相手の心を鏡のように映し出す精神魔法の劣化コピーを獲得した。


リリアーナは、虚ろな瞳のまま、そのコピーした力を千鶴に向けた。


過去の記憶、直接の伝達

リリアーナの意識は、問い詰める者の心象世界に深く接続されていた。そこで彼女が目撃したのは、その者がカミとなる前と、運命の創造者との、過去の問答だった。


(答えを求める者:「神よ。あの砂時計は、一体何ができるんや? あなた方が命を懸ける、真の理由を!」)


運命の創造者は、その問いに、世界の根源を明かすように応じた。


(運命の創造者:「あの砂時計は、**『運命の書』**そのものだ。そこに刻まれた真理とは、世界がいかなる努力や犠牲を払っても、決して辿り着くことのできない、ただ一つの魔法――すなわち、時間を遡る力だ」)


(答えを求める者:「時間を…戻す?それは、世界の法則を完全に否定する究極の非合理やないか!」)


(運命の創造者:「そうだ。そして、その魔法の起動条件は、砂時計をただひっくり返すこと。落ちた砂粒の数が、巻き戻る時間の量を決定する。その力こそが、我々の失敗を**『無かったこと』とし、望む運命を何度でもデザインできる、全知の支配**を可能にする」)


破られた最後の決意

リリアーナは、千鶴の心から読み取った究極の真実を、冷たい声で口にした。


「わかったわ、千鶴。あなたが、そしてカミが求めていた砂時計の力は……時間を戻す魔法。落ちた砂の数だけ、過去を無かったことにできる力よ」


千鶴の顔は、驚愕と屈辱で真っ青になった。自らが死んでも守り抜くと決意した最後の秘密が、彼女の愛する者の忠誠心をトリガーとした人間の魔法によって、白日の下に晒されたのだ。


「な…に…!あんた…なぜ、それを…!」


千鶴は戦慄した。リリアーナ女王は、既に孤独な女王ではなく、死者と生者の愛と能力の集合体となっていた。この最終決戦は、既に一人の人間対一柱のカミの戦いではなくなっていたのだ。

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