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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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20話 愛とは.....

クロード王子が示した「愛を選ぶ自由」という道は、私の心を光で満たした。馬車の窓から見える街並みは、今までただの背景だったけれど、今は生命に満ちているように感じられる。屋敷に戻った私は、自室のテラスに出て、夕陽に染まる空を見上げていた。


これまでの私は、愛されることから逃れることだけを考えて生きてきた。愛されることによって、私の意志は否定され、存在そのものが意味を失うと信じていたからだ。しかし、クロード王子が教えてくれたのは、愛されることの苦しみではなく、愛する自由の価値だった。


『あぁ、愛とか運命とか、そんなモン捨ててぇんだろ。じゃあよ……代わりに“死”をくれてやんよ。そっちのが似合ってんぜ』


あの「カミ」の声が、再び脳裏をよぎる。彼らは、私が自由を望むなら、その代償として命を奪うと脅した。だが、もはやその声は、私を怯えさせるものではなかった。クロード王子との出会いが、私に新たな強さを与えてくれたのだ。


私は、愛されたくないと願うのではなく、誰かを愛したいと願うことを、初めて心から望んだ。その「誰か」が誰なのかは、まだわからない。けれど、焦る必要はないと、クロード王子は言った。


「愛する勇気は、誰かとの出会いの中で、少しずつ育っていくものです」


彼の言葉を胸に、私は、これからの人生を歩んでいくことを決意した。屋敷に戻ってからも、レオンハルト殿下からの訪問や手紙は絶えなかった。彼は、私とクロード王子の間に何があったのかを気にかけ、どうにかして私を理解しようと努力しているようだった。


ある日、レオンハルト殿下が私に会いに来た。彼はいつもより真剣な表情で、私の目を見つめ、静かに問いかけた。


「リリアーナ、君は、本当に私を愛していないのか?」


彼の言葉に、私は一瞬、戸惑った。今まで、この問いに正面から向き合ったことはなかった。愛されることを拒絶するあまり、彼の気持ちを考えることすら、避けていたのだ。


「殿下……」


私は、正直に答えるべきだと感じた。愛を拒むことではなく、愛する自由を求める私にとって、この問いは、私自身の新しい一歩なのだ。


「わたくしは……殿下を愛しているか、いないか、その答えを、わたくし自身も持ち合わせておりませんでした。殿下を愛せば、わたくし自身の意志が失われると、そう恐れていましたから……」


私の言葉に、レオンハルト殿下の顔は、悲しみに満ちていた。それでも、私は続けた。


「しかし、わたくしは、これから、愛する自由を、大切に生きていきたいのです。殿下を、わたくしの意志で、愛せるかどうか、確かめたいのです」


私の言葉は、彼にとって、希望だったのか、絶望だったのか。彼の表情は複雑だったが、やがて、彼は、静かに微笑んだ。


「わかった。リリアーナ、私は待とう。君が、私を愛すると言ってくれる日まで、君のそばにいよう」


彼の言葉は、クロード王子の言葉とは違う。それは、「愛する」という運命を、私に強いるものではなかった。それは、レオンハルト殿下の、私への深い理解と、愛の形だった。


私は、彼がくれたこの選択を、大切にしようと心に決めた。



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