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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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192話 砂時計の再停止と最後の連結

リアンは、砂時計が常軌を逸したスピードで駆動音を上げ、移動を再開しようとするのを感じた。能力を失った彼には、もはやそれを止める術はない。


「くそっ…!能力が…集中が完全に途切れた!」


砂時計の再起動は、ヴァーレント王国全体を巻き込む法則の暴走を引き起こす。極度の疲弊と絶望の中にいるリリアーナ女王を、このまま巻き込ませるわけにはいかない。


「リリアーナ様!」


リアンは、砂時計の守護という使命を諦め、最後に残された騎士としての本能に従った。彼は、崩れ落ちる身体を奮い立たせ、リリアーナ女王の前に飛び出し、彼女だけでもかばおうと、その小さな身体を抱きしめた。


停止した絶望

しかし、リアンが衝撃に備えて目を固く閉じた瞬間、全ては静止した。


駆動音も、砂時計の振動も、ピタリと止んだ。まるで、世界のノイズが一瞬にして消え去ったかのような、完全な静寂が石室を支配した。


リアンは、恐る恐る目を開けた。巨大な砂時計は、先ほどまでの激しい動きが嘘のように、再び静止している。その砂粒の流れも、空間的な移動も、完全に停止していた。


「な……なぜだ?私は能力を…完全にコントロールを失ったはずなのに…」


リアンは驚愕し、目の前の現象を理解できなかった。彼は、抱きしめたままのリリアーナ女王に視線を向けた。


リリアーナは、依然として虚ろな瞳で、リアンの顔を見つめていた。


「リアン様。あなたの能力を今。私は、手に入れた」


彼女の言葉は、まるで何かの儀式を終えた後の、冷たい宣告のようだった。


「三日前に完成した装置は、私を愛してくれた人たちの能力を私に与える。そして、あなたは、私を孤独から救おうと、一瞬でも私をかばおうとしてくれた。その献身の心が、装置を起動させるトリガーになった」


リリアーナは、力を失ったリアンの肩に手を置き、静かに語った。


「あなたの**『魂のない物質の動きを完全に停止させる』**能力は、今、劣化バージョンとして、私にも使えるわ」


彼女の乾いた笑みは、悲劇的だった。彼女は、クロードの戦略眼、レオンハルトの防御力、ライオネルの攻撃力、セバスチャンの非合理的な戦闘技術に加え、今、リアンの砂時計を止める力を手に入れた。


リリアーナは、全てを失った後に、愛する仲間たちの力の全てを手に入れたのだ。それは、彼女の孤独を深める、あまりにも完全な**「弔いの力」**だった。

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