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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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189話 孤独な王の再訪

リリアーナは、リアンに砂時計の守護を託した後、戦力を整える間もなく、残された仲間たちと共に最後の運命の戦いへと挑んだ。彼女は、リアンが命を懸けて止めてくれた**「時の砂時計」**という最後の希望を守り抜くため、全ての力を使い果たした。


しかし、その結末は、あまりにも無残だった。


カミとの最終決戦に、リリアーナは勝利した。だが、それは、彼女の全ての光と引き換えだった。クロード王子、セバスチャン、そしてカイ。彼女を支えた、愛する者たち全てが、この世界から消えた。


五日後の対面

英雄たちの国葬が終わり、世界が静寂を取り戻してから五日後。


リリアーナ女王は、ヴァーレント王国の地下に、単独でリアンのもとへと戻ってきた。


石室の中央、巨大な砂時計の前では、リアン・ヴァーレントが、最終決戦に向かう前と全く同じ姿勢で、一心不乱に集中を続けていた。彼の能力によって、砂時計は完全に停止している。


リリアーナは、静かにリアンの前に立った。


リアンは、リリアーナの気配を感じ、瞳だけを微かに動かした。彼は、リリアーナが一人で戻ってきたことに、全てを察し、その瞳に強い動揺を宿した。


「リリアーナ…様…。噂は本当だったのですね…」


リアンは、ライオネルが一度死んだ後、カミの傀儡として復活したという兵士たちの間の半ば希望的な噂を耳にしていた。


「兄上は…ライオネルは、カミの傀儡として復活したと聞きました。もしかしたら、また…」


彼は、ライオネルにまた会えるかもしれないという最後の期待を、リリアーナの帰還に託していた。


リリアーナは、リアンの質問に答える代わりに、ただ静かに微笑んだ。その顔には、既に深い疲労の痕が刻まれていた。瞳は虚ろで、その下には濃いクマができていた。


リアンは、その変貌に、激しく驚愕した。


「な……。カイ殿も…いらっしゃらないのですね…」


彼は、砂時計を止めることに集中しているにもかかわらず、リリアーナの姿から目が離せなかった。


最終決戦に挑む直前、リリアーナ女王の瞳には、愛する者たちと共に戦う強い生気と、希望の光が満ち溢れていた。しかし、今、そこにいるのは、威厳をまとっているにもかかわらず、魂が抜け落ちたかのような無機質な存在だった。


それは、まるで激戦の全てを一人で背負い、感情を置き去りにして帰ってきた、古強りの精鋭のようだった。


リアンは、恐怖と尊敬を込めて、リリアーナを見つめた。彼女こそが、この世界で唯一、カミに打ち勝ち、そして全てを失った孤独な王だった。

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