181話 外伝：偽りの結末と異界の魂
千代の目論見と運命の改変
約140年の封印から一年早く目覚めた鶴神千代は、運命の法則が収束する時の境界に到達し、アナザー王女が仕掛けた封印解除のトリガーを把握した。
「オルフェの子孫の、最も幸福な瞬間か…」
その幸福が実現すれば、残る二柱――知神アザトースと武神コウタ――も目覚めてしまう。彼らの目的は、「秩序の確立」や「暴力の物語」を通じて巨大な砂時計を探し出すという、千代の望む展開とは異なるものだった。
千代は、アナザーたちの目指す結末とは異なる道（千代自身の望む混沌）を世界に用意するため、オルフェの子孫である本物のリリアーナ・フォン・アウグスト公爵令嬢の運命に、早急に干渉することを決めた。
「幸福な瞬間など、作らせへん。絶望に染めれば、トリガーは起動しない。フフフ…簡単や」
千代は、本物のリリアーナの運命に**「負のノイズ」を仕掛けた。それは、彼女の周りの人間関係の崩壊や、不幸な事故の連鎖だった。本物のリリアーナの運命は、急速に「幸福」から「絶望」**へと傾斜していった。
千代の計算では、これでトリガーは起動しない。彼女は、悠々と自身の望む展開を始める準備を整えた。
予期せぬノイズの発生
翌日。千代は、本物のリリアーナの運命が絶望へと収束し、封印トリガーが無効化されたことを確認するため、王国の学園へと赴いた。
しかし、そこで千代が目撃した光景は、彼女の論理（カミとなって確立した法則）をも完全に裏切るものだった。
学園の中庭には、昨日まで絶望の淵にいたはずのリリアーナ公爵令嬢が立っていた。その姿は変わらないが、醸し出す雰囲気、そして瞳に宿る生きた光が、決定的に異なっていた。
「な…に…？」
千代の身体に、強烈な**「予測不能な不確定性」**の衝撃が走った。
「私が絶望のノイズを仕掛けたことで、この肉体の魂が、時の境界から離脱し、別の世界から異質な魂を引き寄せてしまった…！」
千代が仕掛けた**「絶望」という負のエネルギーは、本物のリリアーナの魂を肉体から離脱させたが、その結果、時の境界線に穴**を開け、別の世界の魂が、その空の肉体へと憑依してしまったのだ。
「フフフ…ハハハハハ！」
千代は、絶望的な状況であるにもかかわらず、その究極の誤算に、歓喜の笑いを上げた。
「私の絶望が、異界の魂を呼び寄せた！しかも、オルフェの子孫の肉体に、別の運命を宿らせた！これほど予測不能で面白い展開があるか！」
