178話 外伝:混沌のルーツ (13) - 英雄たちの覚悟
時の境界では、運命の創造者アナザー王女と三柱のカミの干渉が始まろうとしていた。これに対抗するため、リリアーナ女王の祖先である神子オルフェは、王国の聖域に四家の始祖たちと連合軍を集結させていた。オルフェは静かに見守っている。
英雄たちの即断即決
聖域の野戦司令部では、兵士や技術者たちが、神々の未知の力への対応にパニックに陥っていた。
1. 統率と戦略(クロード王子の祖先)
一人の将校が、通信機を握りしめ、顔を青ざめさせていた。
「どうする!?カミの干渉により、前線部隊の通信網が完全に断絶しました!指揮系統が崩壊しています!このままでは、各部隊が孤立し、各個撃破されます!」
その混乱の中、エドガー・フレイアが静かに通信機を奪い取った。彼の瞳には、状況を瞬時に把握する鋭い知性が宿っている。
「慌てるな。通信が途絶えたのなら、それを利用する。全軍、各部隊長の判断で敵に同時多発的に攻撃を仕掛けろ。敵は『論理的な統一戦線』を予測する。この非論理的な分散攻撃こそが、彼らの予測の隙となる!」
「おお…!」将校は戦慄した。
「すごい!さすがは運命の戦略家エドガー殿! 混乱をそのまま武器に変えてしまうとは…!後のクロード王子に受け継がれる統率の才だ!」
2. 知識と技術(レオンハルトの祖先)
別の場所では、技術者が、武神コウタの力に対抗する兵器の設計に頭を抱えていた。
「武神のエネルギーは、我々の既存の魔導砲の出力を遥かに上回る!こんなものは、作れません!」
その技術者の肩に、冷静な声がかけられた。バルカスだった。
「違う。武神の力に対抗するのではない。彼の『擬似知識の不安定さ』を利用するのだ。魔導砲の出力を上げず、『運命の揺らぎを増幅させる周波数』に調整せよ。武神のエネルギーを自壊させればよい」
「なんと!力ではなく、法則を突くのか!」
「見事だ!神力工学の技師バルカス殿! 武神の力を抑え込む知恵の原点がここにある!」
3. 肉体と防御(ライオネルの祖先)
さらに、聖域の入り口では、兵士たちが、カミの強大な攻撃に対する防御陣形を崩しかけていた。
「カミの攻撃は、あまりにも強力だ!通常の盾では持たない!」
その時、一人の巨漢が、血塗られた盾を構え、最前線に立った。ゼノン・ヴァーレントだ。
「恐れるな!盾とは、意志だ!私は、この強靭な肉体と忠誠をもって、カミの攻撃を一手に引き受ける!後にライオネル殿下に受け継がれる鉄壁の守護者の力が、ここに在る!」
「ゼノン殿!その肉体は…まさに鉄壁!後の人体強化技術のルーツとなる強さだ!」兵士たちは士気を取り戻した。
4. 解析と封印(カイの祖先)
最後に、薄暗いテントの中。レイヴンは、術式の構築に最後の集中を要していた。一人の理論家が焦って尋ねた。
「レイヴン殿!封印術式に必要なカミの論理の解析が、あと一歩で完了しません!」
レイヴンは、静かに一言で答えを示した。
「『混沌の概念』を、論理の『無限大』として代入せよ。論理は、自らの無限性を受け入れられず停止する。これが、カミの知識の構造を分解する唯一の解だ」
「まさか…!その発想は…!零号の知性の基礎だ!」
「さすがは、運命解析の理論家レイヴン殿! 後の世のカイに繋がる、究極の知性です!」
オルフェは、その四人の姿を見て、勝利を確信した。彼らの非合理な意志と理性的な知識こそが、この世界を救う鍵だった。




