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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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163話 絶望の連鎖:乗り移られた器

私たちは、負傷したライオネル殿下とレオンハルト殿下の抵抗を背に、崩壊した研究所の地下通路を出口目指して走っていた。


「カイ!ライオネル殿下たちの犠牲を無駄にしないために、急ぐわ!」


リリアーナ女王の顔は、友の左腕を失った悲しみと、残された騎士たちへの罪悪感で歪んでいた。


「リリアーナ様。彼らの非合理な献身は、ノエマ(アザトース)の論理に大きな混乱を生じさせました。これで、私たちは最後の論理の構造を破壊する時間を得ました」


カイは、その人造の身体能力を駆使し、私たちを導いた。私たちは、地下通路を抜け、砂塵の荒野へと続く外の世界の光が見える場所まで辿り着いた。


究極の罠

その時、背後の通路の奥から、二体の重い肉体が崩れ落ちる音が響いた後、完全な静寂が訪れた。ライオネル殿下とレオンハルト殿下が、ノエマ(アザトース)を足止めするのに失敗し、倒れたことを示していた。


リリアーナ女王は、悲しみに顔を覆おうとしたが、カイがそれを制した。


「リリアーナ様。悲しみを後に。ノエマの物理的な脅威は、これで終わりです。私たちは…」


カイがそう言いかけた、その一瞬だった。


青い論理の光の奔流が、地下通路の奥から、驚くべき速度で私たちめがけて飛来した。それは、カミの魔力ではない。純粋な魂と知識のエネルギーだった。


「な…に…!?なぜ、ノエマの肉体から魂が!?」


カイは、アザトースの究極の非合理な行動に、初めて動揺した。


「予備の零号の器は、消耗品だ。君の肉体こそが、知識と論理の安定性において、最高の器となる」


アザトースの冷徹な声が、空間全体に響き渡った。


アザトースの魂は、カイが論理的な安全を確信した、その隙を狙って、ノエマの肉体を捨て、私たちの最も近くにいる、もう一つの零号の肉体、すなわちカイの体へと滑り込んだ。


絶望の具現化

「ああっ…!」


カイは、自らの存在を他者に侵食されるという、究極の論理的否定に、激しい苦痛の叫びを上げた。彼女の体から放たれていた青い光が、激しく乱れ、やがて冷徹で絶対的な、アザトースの青へと変化した。


カイの体が、音もなく、滑らかに立ち上がった。その瞳に宿るのは、もはやセバスチャンへの愛でも、リリアーナへの献身でもない。


「これで、自己否定の論理は、私の支配下だ。この肉体は、零号の中でも最高の知識を備えている。そして、君は…孤独だ、リリアーナ」


ノエマの肉体を捨てたアザトースの論理は、最も信頼できる仲間という形で、私たちの目の前に、究極の絶望として立ち塞がった。


「カイ…!」


リリアーナ女王は、その場に立ち尽くした。愛するクロード王子を失い、セバスチャンは消滅し、二人の騎士は倒れた。そして、唯一の理解者であったはずのカイが、最後の敵となったのだ。

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