表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/240

16話 再会、歪む運命

レオンハルト殿下の手が、私の手をそっと包んだ。その温かさが、私の決意を揺るがす。


「いいえ、違いますわ」


そう否定しようと口を開いた瞬間、殿下の顔が、ふいに歪んだ。


「リリアーナ……どうして、そんなに悲しい顔をしているんだ?」


彼の言葉に、私はハッと息をのんだ。悲しい顔?私はただ、彼に嫌われようと、冷たく振る舞っただけだ。

(どういうこと……?彼は、私の行動を「悲しみ」と捉えたのか?)

混乱する私の目の前で、レオンハルト殿下は、さらに悲しげな表情になった。


「君は……僕が、君を傷つけたと思っているのか?」

「そんな、まさか!」


私は慌てて否定した。前回と同じだ。私の拒絶は、彼の中でまったく違う意味に変換されてしまう。


その時、頭の中に再びあの声が響いた。


「見事です、リリアーナ。あなたの行動は、彼の『愛されたい』という欲求を、さらに強く刺激している」


三柱の「カミ」が、嘲笑う。


「あなたは、彼に嫌われようとしている。しかし、それは、彼にとって『僕に好かれたいから、無理に冷たく振る舞っている』と解釈されているのです。愛されたいあまり、素直になれない健気な令嬢……。素晴らしい設定ではないですか?」


その言葉に、私は怒りで体が震えた。


「くっ……!」

私は、反射的に手を引っ込めた。


「殿下!わたくしは、あなたに誤解されるような行動は一切しておりません!ただ、ごく一般的な婚約者としての距離感を保ちたいだけです!」


私の言葉は、完全に空回りしている。

彼に嫌われるどころか、私の行動は、ますます彼の「愛」を深めているのだ。

(このままじゃ、また同じことの繰り返しだ……!前回よりも、もっとひどいことになる!)


その時、私の視界の隅に、もう一人の人物が映り込んだ。

侍女のエルナだった。彼女は、前回、私の親友となり、そして、私を裏切った。

私の視線に気づいたエルナは、にこやかに微笑み、私に近寄ってきた。


「リリアーナ様、殿下とご一緒にお食事ですか?うふふ、仲がよろしいのですね」


エルナの言葉は、まるで前回と同じ。その無邪気な笑顔が、私には悪魔の嘲笑に見えた。

(エルナ……お前も、あの「カミ」に操られているのか?いや、お前は、もともとそういう人間だった……)


私は、エルナの言葉を遮り、冷たい声で言った。


「エルナ、勝手なことを言わないで。それに、あなたは、殿下がいらっしゃる場所に、軽々しく立ち入ってはいけません」


エルナの笑顔が、一瞬で凍り付いた。


「リリアーナ様……?」

「あなたとは、今日から、もう友人ではない。わたくしに、必要以上に近づかないで」


前回とは違う、私の言葉に、エルナは顔を青ざめさせ、その場に立ち尽くした。


「リリアーナ、どうしてそんなことを言うんだ?」


レオンハルト殿下が、驚いた顔で私を見た。

私は、彼に嫌われるため、あえてエルナを突き放した。

(これでいい。私に味方など、誰もいらない。もう誰にも、私を裏切らせない……!)

私は、孤独になることで、この運命の輪から抜け出せるのではないかと考えた。

しかし、私の心臓は、激しく痛んだ。

(違う。これは、私が望んだことじゃない……。私は、エルナを、大切に思っていたのに……)


その時、頭の中に、再びあの声が響いた。


「素晴らしい、リリアーナ。あなたは、愛を拒絶することで、より深く、愛される運命に囚われている。さあ、どうしますか?あなたに、この運命から抜け出す方法は、本当にあるのでしょうか?」


三柱の「カミ」の声が、私の耳元で囁く。

私は、ただ、この運命の糸から、解放されたいだけなのに。

私の心は、深く、暗い絶望に沈んでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ