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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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143話 運命の孤独と捕虜の病室

時の特異点での最終決戦から数週間が経過した。


運命の壁は完成し、アザトースと千鶴の直接的な干渉は阻まれた。しかし、その勝利の代償は、あまりにも大きすぎた。


クロード王子は、致命傷が原因で息を引き取った。そして、私が彼の体を抱きかかえていたその瞬間、セバスチャンの肉体が、静かに光の粒子となって崩壊した。


彼は元々、アザトースの知識を基に大皇国が製造した人造の肉体。彼の魂が、零号としての過去の呪縛から解放され、執事としての使命を完遂したことで、肉体はエネルギー体へと還元され、現世から完全に消滅したのだ。彼は、亡き友たちの幻影とともに、静かにこの世界を去った。


ライオネル殿下とレオンハルト殿下は、アザトースに連れ去られ、その行方は知れない。


国葬の静寂

フレイア王国と、解放された同盟国では、カミの支配を打ち破った英雄たちへの国葬が執り行われた。


参列したのは、クロード王子、そして彼のために命を捧げた忠臣ジョルジュ。そして、セバスチャンのために、彼の「執事」としての存在そのものが象徴する空の棺が安置された。


私は、愛する人を失った悲しみと、全ての仲間を失った孤独の中にいた。私の周りには、もはや誰も残されていなかった。運命を共にすると誓ったクロード王子は逝き、友のミサキは混沌の器となり、そして全ての同志が散った。


私は、リリアーナとして、この世界に一人取り残されたのだ。


捕虜の病室

カミとの戦いの後、運命の壁の構築によって憎悪の感情が断たれたノエマは、ただの人造の肉体として機能停止し、捕虜となっていた。大皇国の科学者である東條の助言を受け、彼女は厳重に管理されている。


私は、ノエマが収容されている地下の病室へと向かった。その病室は、かつての研究所の一部を利用しており、冷たい鉄と薬の匂いがした。


ノエマの体は、ベッドに横たわっている。黒い血管の痕は消え、その顔は、まるで眠る美しい少年のようだ。しかし、彼女の瞳には、かつての愛の否定者としての憎悪も、人造の零号としての知性も、何も宿っていなかった。


「ノエマ…」


私は、その亡き友セバスチャンの予備の肉体に声をかけた。


「あなたの憎しみは、私たちを苦しめた。でも、あなたは…千鶴に操られた、もう一人の被害者だった」


私は、ノエマの冷たい手を握った。その瞬間、ノエマの瞳が、ゆっくりと、微かに開かれた。


その瞳には、憎しみでも、虚無でもなく、まるで新しいプログラムが起動したかのような、微かな光と、静かな探究心が宿っていた。


「…あなたは、だれ…?わたしは、なぜ、ここにいる…?」

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