140話 知識の収束と運命の最終儀式
地下の中央実験室は、今やクロード王子、リリアーナ、レオンハルト殿下という人類の希望と、ノエマ、ライオネル殿下というカミの道具が激突する、最後の聖域となっていた。
忠誠と愛の盾
レオンハルト殿下は、ライオネル殿下を背後に庇いながら、その強靭な肉体と武神のエネルギーを、クロード王子と私を守る揺るぎない盾に変えていた。彼の愛は、もはや亡き人への純粋な献身として昇華し、アザトースの論理を完全に退けていた。
「レオンハルト殿下!あなたは…」
私は、彼の献身に胸を打たれながらも、儀式の完了を急いだ。
「リリアーナ様、迷うな!この一瞬が、私の愛した方が望んだ未来を掴む、最後の機会です!」
彼の叫びは、私の心に新たな力を注ぎ込んだ。
運命の奔流
クロード王子は、ノエマとの戦闘を続行していた。ノエマの動きは、レオンハルト殿下の行動という予測不能な事態によって再び論理が乱れ、以前ほどの正確さを欠いていた。
「ノエマ!お前の憎しみは、愛の献身という、最も非効率な力には勝てない!」
クロード王子は、憎しみを捨てたことで得た自由な動きでノエマの攻撃を避け、私に指示を出した。
「リリアーナ!今だ!プロトタイプ知識の奔流が最も不安定な瞬間だ!俺たちの運命の意志を、全て演算ユニットに注ぎ込め!」
私は、プロトタイプ知識が流れ込む演算ユニットに、両手を強く押し当てた。私の運命の意志が、研究所全体を覆う不確定な知識と、千鶴の混沌、そしてレオンハルト殿下の純粋な献身という、全ての力を引き合わせた。
「運命の壁よ!カミの支配を否定せよ!」
私の体から、すべてを包含するような、巨大な光の渦が噴き出した。
最終収束
光の渦は、演算室全体を包み込み、ノエマの攻撃も、ライオネル殿下の苦痛も、レオンハルト殿下の献身も、全てを静謐な安定へと収束させようとした。
光の中で、ノエマの体が激しく痙攣した。彼女の論理回路は、「憎しみ」という自己の存在理由が、「献身」という究極の愛の前に無力化されるという真実を突きつけられていた。
そして、『論理の剣』ライオネル殿下も、光の中で苦悶の表情を浮かべた。彼の頭を支配していたアザトースの論理が、人間の献身的な愛という、計算不能な力によって、論理的な敗北を喫しようとしていたのだ。
クロード王子は、私と並び立ち、その光の中で、人類の未来を信じる最後の力を込めた。
「終わらせるぞ、リリアーナ!」




