131話 秩序の再編と絶望の運命
千鶴の杖が砕かれ、儀式が失敗に終わった瞬間、時の特異点であるこの過去の庭園は、知神アザトースの圧倒的な論理の力に飲み込まれた。空の青い光は、もはや干渉の試みではなく、運命そのものの強制的な修正だった。
「リリアーナ!運命が…書き換えられる!」
クロード王子が叫ぶが、抗う術はない。私たちの愛と犠牲の全てが、アザトースの冷徹な秩序の論理によって、**「無かったこと」**にされようとしていた。
秩序の再編成
青い光が収束した後、庭園の空気は一変した。平和な過去の空気は消え、冷たい、管理された論理的な空気に置き換わっていた。
そして、私たちの目の前に、新たな論理的秩序の元に再編成された人物たちが、次々と姿を現した。
まず現れたのは、二人の零号。しかし、彼らはもはや敵ではなかった。セバスチャン(零号)は、失った左腕が修復され、その瞳には、かつての冷徹な知性が戻っていた。そして、ノエマ(新たな零号)もまた、憎しみの感情を失い、効率的な道具として、静かにセバスチャンの隣に立っている。
そして、次に現れたのは、私たちの仲間だった者たち。
レオンハルト殿下。彼の膝の傷は完全に治癒し、その瞳には**「合理的な忠誠」の冷たい光が宿っていた。彼は、『不滅の盾』**の二つ名と共に、アザトースの新たな秩序の最前線に立っていた。
さらに、驚くべきことに、亡きライオネル殿下の姿もあった。彼は、胸の致命傷が消え、その瞳には**「最適な論理」という冷徹な輝きが宿っていた。彼は、『論理の剣』**の二つ名を冠し、アザトースの最も信頼する駒となっていた。
彼らの背後には、黒鉄元帥や白鷺文官長といった大皇国の幹部たちが、**「秩序の管理者」**として整然と並んでいる。
絶望的な再会
クロード王子は、友と執事、そしてかつての敵が、全てアザトースの論理という名の支配下に置かれたことに、最大の絶望を味わった。
「セバスチャン!なぜだ!お前は、人間として生きることを選んだはずだ!」クロード王子が叫んだ。
セバスチャンは、感情のない、事務的な口調で答えた。
「クロード王子。あなたの行動は、世界の秩序を著しく乱す非合理的なノイズでした。私の論理は、**『究極の秩序の維持』**を最優先します。これこそが、最も効率的な解です」
そして、私たちが最も絶望したのは、ライオネル殿下の言葉だった。
**『論理の剣』**ライオネル殿下は、剣を構え、私たちに静かに問いかけた。
「クロード。リリアーナ。なぜ、あなたがたは、世界の安定を拒むのですか? 我々の論理は、究極の平和のためにある。あなたがたの愛と運命という不確定要素は、この秩序に不要だ」
その冷徹な問いは、私たちの愛と犠牲の全てを否定していた。
クロード王子は、悲しみに満ちた瞳で、ライオネル殿下を見つめた。
「ライオネル…お前も、アザトースの道具になったというのか!」




