表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

127/240

125話 運命の壁の抜け穴と二柱の対立

運命の壁の構築が完了した瞬間、中央演算室は、耳鳴りがするほどの静寂に包まれた。時の特異点の激しい衝突は終わり、空間は、私たち二人が望んだ**「人間の自由な運命」**という安定した状態へと移行した。


クロード王子と私は、杖と剣をゆっくりと下ろした。私たちは、カミの支配を打ち破ったという、確かな勝利を掴んだはずだった。


「終わった…カミの支配は、永遠に終わったんだ、リリアーナ」


クロード王子は、私を抱きしめた。


究極の論理と混沌の対立

しかし、その安堵は、長く続かなかった。封印の光が収束した壁の向こう側、カミの領域では、鶴神千鶴と知神アザトースが、互いに異なる反応を示していた。


「チッ、やりおったな、人間ども!究極の不確定性で、わてらを壁の向こうに閉じ込めよった!」


千鶴は、悔しさの裏で、興奮を隠せない。彼女にとって、この**「人間の独立」**という結末は、究極の物語の始まりを意味していた。


「しかし、千鶴。君の混沌の力は、私の論理と融合し、一つの不確定な抜け穴を生み出した」


アザトースの声は、冷たい勝利を予感させるものだった。


「運命の壁は、不完全だ。君の混沌の性質上、その壁には『予測不能な浸透性パーミアビリティ』が組み込まれている。我々は、まだ『最終手段』をもって、この世界に干渉できる」


千鶴は、アザトースの言葉に驚愕し、すぐに歓喜へと変わった。


「抜け穴やて!?フフフ…さすが知神!あんたの論理の完璧さは、わての混沌を裏切らへんかったんやな!」


「静粛に。この抜け穴は、極めて不安定であり、二柱が同時に利用することは不可能だ。また、頻繁な干渉は、壁を完全に安定させ、この機会を失うことになる」


アザトースは、冷徹な論理で、千鶴を威圧した。


「故に、封印されたこの世界に干渉する最初の権利は、秩序の回復を望む、私にある。千鶴、君は、その抜け穴を、私が修復を終えるまで守るがいい」


「ふざけんな、知神!わてが、あんたの秩序の修復を、黙って見てるわけないやろ!その抜け穴は、混沌の始まりや!わてが先に、この物語を究極の不確定な展開にしてやる!」


カミの領域では、運命の壁という新たな障壁を巡り、秩序のアザトースと混沌の千鶴が、激しく対立する新たな局面を迎えていた。


執事の静寂と最後の伝言

クロード王子と私は、カミたちの対立の波動を感じ取り、警戒心を強めた。その波動は、封印が不完全であることを示していた。


私たちは、急いでセバスチャンのもとへ向かった。


彼は、メインコンソールに体を預けたまま、その場に静かに佇んでいた。彼の体から流れていた論理の光は消え、その顔は安らかだった。


「セバスチャン!」


クロード王子が彼の名を叫んだ。


「…クロード王子」


セバスチャンは、ゆっくりと目を開けた。その瞳には、かつての冷徹な零号の知性ではなく、深い満足感が宿っていた。


「私の使命は…全て完了いたしました。レオンハルト殿下と亡き友人たちの運命は…報われました」


彼は、私に微笑みかけ、最後の言葉を、クロード王子に託した。


「アザトースは…論理の抜け穴を利用するでしょう。王子。彼の最終手段は、**『運命の根幹』**を標的とします。彼の論理の最優先事項を、逆手に取るのです…」


その言葉を最後に、セバスチャンの魂は、過去の呪縛から完全に解放され、彼の肉体は、静かに息を引き取った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ