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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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121話 騎士の愛と運命の盾

ミサキ(本物のリリアーナの肉体)の全身から、時空を破壊するほどの黒い輝きが放たれた。それは、本物のリリアーナの膨大な生命エネルギーと魔力の複合体を利用した、究極の自爆技だった。演算室全体が崩壊し、私たち全員の存在が無に帰す寸前だった。


「ユナ!この世界ごと、あなたを無に帰してあげる! 私こそが、新しい主役よ!」ミサキの狂気に満ちた叫びが響き渡る。


その瞬間、崩壊した通路の瓦礫の中から、レオンハルト殿下が、折れた膝の激痛を無視し、まるで光のように飛び込んできた。彼は、その場で一瞬たりとも迷わなかった。


「ミサキ!これ以上、暴れるのはやめてくれ!」


彼は、愛する人の肉体に宿るミサキに向かって叫んだ。彼の声には、怒りではなく、その魂の孤独を理解しようとする悲痛な説得が込められていた。


「どうして…どうして誰も、お前の孤独に気づいてやれなかったんだ!」


ミサキは、その純粋な悲しみに満ちた声に、一瞬だけ、狂気の瞳を揺らした。レオンハルトの言葉は、彼女の心の奥底に隠された、元の世界での孤独な自分を突いたのだ。


「うるさい!私を憐れむな!」


「憐れんでなんかいない!」


レオンハルト殿下は、ミサキの黒い輝きの中心めがけて、全力で駆け寄った。彼は、自らの武神の血の残滓を解放し、ミサキの自爆エネルギーを一点に集束させるための、決死の盾となった。


彼はミサキの肉体を強く抱きしめた。彼の腕の中で、ミサキの黒い輝きは、レオンハルトの武神のエネルギーと衝突し、内側へ内側へと圧縮されていく。


「リリアーナ様…(ミサキ)!この肉体が、あなたがこの世界に残した『愛』の最後の痕跡だ!私は…この器を、カミの道具にも、憎しみにもさせない!」


レオンハルトの体は、自爆エネルギーによって焼かれ、崩れ始めていた。彼の皮膚は裂け、骨は軋み、命が尽きようとしていた。


彼は、その最後の瞬間に、私とクロード王子に向かって、全存在の力を込めて叫んだ。


「クロード!リリアーナユナ!聞いてくれ!私は、ライオネルの死の直後から、彼女の魂が抜けた後も…ずっと…」


彼の声は、自爆の轟音にかき消されそうになるが、その純粋な想いだけは、空間に焼き付いた。


「私は、本物のリリアーナ様を…心から、愛している! この愛が、お前たちの運命を、必ず守る盾となる!」


彼は、自らの愛を、純粋なエネルギーへと変え、ミサキの自爆エネルギーを完全に押し留めた。彼の魂は、愛という究極の非合理を証明し、ミサキの魂と共に、炎の中に消えた。


執事の献身と零号の逃走

レオンハルト殿下の犠牲により、自爆エネルギーはクロード王子たちのいる方向とは別の、一点に収束し爆発した。


その衝撃がクロード王子と私を襲う直前、セバスチャンが、間髪入れずに私たちを抱え、彼の肉体すべてで爆発を受け止めた。


ゴオオオォォォ!!


爆風が収まると、演算室の床は大きく抉られ、レオンハルト殿下とミサキの姿は、跡形もなく消えていた。彼らの愛と犠牲は、この世界に永遠の楔を打った。


セバスチャンは、私たちを庇った姿勢のまま、よろめいた。彼の完璧な執事服は焼け焦げ、左腕は肘から先が完全に失われ、黒い血管の痕が痛々しく露出していた。彼は、私たちの命を守るために、自らの体という**「盾」**を捧げたのだ。


その混乱の隙を、ノエマは見逃さなかった。彼女は、自らの力を温存するため、無言で地下の通路へと身を翻した。彼女の憎しみは、まだこの世界に残り続けていた。


私たちは、レオンハルト殿下の悲劇的な愛の犠牲、そしてセバスチャンの献身という、あまりにも重い代償を背負い、最後の使命へと向かわなければならなかった。

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