表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

116/240

114話 逃亡の果て、零号の決意

私たちは、ミサキの生み出した時空の歪みを利用し、氷結山脈の別の地点へと転移した。周囲は、猛吹雪が吹き荒れる、視界の悪い場所だった。


「クソッ!ミサキめ、あの肉体の力を、嫉妬でここまで使いこなすとは!」


クロード王子は、悔しそうに雪を蹴った。彼にとって、愛を信じようとした証人の姿をしたミサキの存在は、精神的な動揺を引き起こす最大の要因だった。


「クロード王子。彼女の力は、時の導き手の肉体が持つ運命への執着と、ミサキの強い劣等感が結合したものです。彼女は、あなたたちの運命の壁の構築を阻止し、ユナ(リリアーナ)に優位に立つことを目的としています」


セバスチャンは、ノエマとの戦闘で負った傷を抑えながら、冷静に分析した。彼の顔には、憎むべき己の予備肉体と戦った疲労が色濃く残っている。


「ノエマはどうだ?」私が尋ねた。


「ノエマは、私の戦闘データを完全にトレースしています。彼女を打ち破るには、私の過去の知識、すなわち、**ノエマ自身が持つべきではなかった『不確定な弱点』**を突き止める必要があります」


最終計画の再構築

私たちは、一時的な安全を確保するため、雪穴を掘って身を隠した。クロード王子は、千鶴の杖を雪の上に広げ、計画を再構築し始めた。


「予定していた古代の祭壇は、既にミサキとノエマに察知された。そして、ミサキは時の力を持つ。アザトースの論理が修復される前に、運命の壁を完成させなければ、勝ち目はない」


「では、どこで封印を…」レオンハルト殿下と本物のリリアーナの安否が不明な今、私たちは頼るべき情報を持っていなかった。


その時、セバスチャンが静かに口を開いた。


「クロード王子。封印の最適な場所は、私が知っています」


クロード王子は、驚きをもってセバスチャンを見た。


「場所は、大皇国オウコクトウの帝都・暁、旧陸軍中央研究所の地下です。そこは、アザトースの論理が完成する前の『失敗の記録』が残された場所であり、私の誕生の地です」


セバスチャンの提案は、極めて危険だった。敵の心臓部に戻ることを意味する。


「その場所は、アザトースの最も古い知識が眠る。そして、私とノエマの肉体の設計図が存在します。その知識と、千鶴の混沌、そして私たちの運命の意志を融合させることで、カミの支配を完全に否定する運命の壁が構築できます」


クロード王子の顔に、決意の光が戻った。


「カミの支配の始まりの場所を、終焉の場所とするか。それは、千鶴が最も喜ぶ究極の皮肉であり、アザトースの論理が最も予測できない非合理な選択だ」


「セバスチャン。その計画を採用する。お前の過去と、俺たちの未来を、そこで一つにする」


執事の贖罪

セバスチャンは、深く一礼した。


「ありがとうございます、クロード王子。この戦いは、私の過去の罪を清算し、人間として生きるための、最後の贖罪となります」


彼の瞳に、かつての同期たちの幻影が浮かんだ。彼の零号としての過去は、もはや枷ではない。それは、世界を救うための、最も強力な武器となったのだ。


私たちは、雪穴から這い出し、凍てつく山脈を後にし、再び大皇国オウコクトウの帝都を目指す、危険な帰路についた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ