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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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109話 氷結のトライアングルと騎士の愛

氷結山脈の最深部。本物のリリアーナの姿をしたミサキは、その肉体が持つ時の残滓を急速に吸収し、驚異的な速度でクロード王子たちを圧倒していた。嫉妬と劣等感という負の感情は、肉体の潜在能力を歪ませ、武神の血を持つクロード王子と互角、あるいはそれ以上の力を引き出していた。


「ユナ!この体に入っているのは私よ!あなたの偽物の運命を終わらせてあげる!」


ミサキは叫びながら、周囲の冷気を圧縮し、鋭利な嫉妬の刃として連続で放った。


セバスチャンは、左手の千鶴の杖のレプリカを盾とし、クロード王子を防御する。


「クロード王子!彼女の力は、感情の増幅によって制御を失っています。この肉体を破壊すれば、この世界の運命の記録も失われます。肉体の制御中枢を狙うしかありません!」


「わかっている!」


クロード王子は、セバスチャンの盾の陰から、アザトースの論理と千鶴の混沌を融合させた**「運命の波動」を放った。彼の狙いは、ミサキの魂と肉体の接続部**を一時的に断つことだ。


波動は、ミサキの予測を上回る速度で彼女の胸を貫いた。


「っ…あぁぁ!」


ミサキの肉体が激しく痙攣し、その瞳から力の光が消えた。彼女の魂は、強力な肉体の制御を失い、一時的に意識を失った。肉体は、凍てつく氷の床へと倒れ込む。


「今だ、クロード!この混沌の器を封印する!」


クロード王子は、躊躇なく千鶴の杖を振り上げた。このまま放置すれば、ミサキの魂は時の残滓を吸収し続け、千鶴の究極の混沌の鍵となる。


騎士の乱入

クロード王子の杖が、倒れたミサキの肉体に触れる、その直前――


青い閃光が、山の斜面を垂直に切り裂き、二人の間に割って入った。


ガキン!


武神のエネルギーを纏った剣が、クロード王子の杖と激しく衝突し、クロード王子を後退させた。


「誰だ!」クロード王子は怒鳴った。


そこに立っていたのは、全身を返り血と氷にまみれ、砕けた膝を自力で固定したレオンハルト殿下だった。彼は、東條が研究所に残した緊急時用の古の転送装置を使い、自らの負傷と、アザトースの追跡を顧みず、この地に現れたのだ。


レオンハルト殿下は、倒れている本物のリリアーナの肉体ミサキを抱き上げ、強く守るように構えた。彼の顔は、疲労と痛み、そして愛と葛藤の感情で歪んでいた。


「レオンハルト!何を…!」クロード王子は、友の行動を理解できなかった。


「レオンハルト殿下!彼女の肉体に宿るのは、時の導き手の魂ではありません!混沌の器です!なぜ、危険を冒してまで助けるのです!」セバスチャンが冷徹に問い詰めた。


レオンハルト殿下は、その問いに、悲痛な叫びを返した。


「黙れ、零号!知っている!宿っている魂が偽物であることは、わかっている!」


彼は、抱き上げた肉体の美しさと、愛する人の面影に、自らの命をかけている。


「だが…この肉体が、リリアーナ様がこの世界に残した『愛』の最後の痕跡だ!私は…この器を、カミの道具にも、お前たちの道具にもさせない!この肉体は…私が守る!」


騎士の純粋で、非合理的な愛は、クロード王子たちの合理的な使命と激しく衝突した。

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