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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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108話 氷結山脈への追跡者

ミサキの魂が憑依した、本物のリリアーナの肉体は、驚くべき俊敏さで隠れ家を後にした。彼女の体が持つ時の導き手としての潜在能力が、ミサキの劣等感と嫉妬という強い感情によって、歪んだ形で解放され始めたのだ。


「クロード王子たちが向かったのは、北…氷結山脈ね」


ミサキは、本物のリリアーナの肉体が持つ時の記憶の残滓を無意識に読み取り、クロード王子たちの目的地を把握した。彼女の目的は、ユナ(リリアーナ)と正面衝突することではない。彼女の新しい運命が、ユナの古い運命よりも優れていることを証明すること、そして、この美しい肉体と力を、ユナの目の前で誇示することだった。


「ユナ、今度こそ、私が主役よ」


ミサキは、誰にも聞こえない声でそう呟き、氷結山脈への追跡を開始した。


氷結山脈の異変

一方、クロード王子、リリアーナ、セバスチャンの三人は、盗んだ軍用車両を乗り継ぎ、人類の文明から隔絶された大陸最北端の氷結山脈にたどり着いた。


この地は、常に雪と氷に覆われ、カミの干渉以前の古代の伝説が残る、情報が極めて希薄な場所だった。アザトースの論理が最も届きにくい、予測不能な盲点だ。


しかし、山脈全体が放つ空気が、既に尋常ではない。


「クロード王子、この寒気は自然のものではありません」


セバスチャンは、人造の身体能力と知識を駆使して、異常な大気の歪みを察知した。


「ああ。武神の干渉は消えたが、千鶴が最後の混沌を仕掛け始めている」


クロード王子は、千鶴の杖を握りしめ、山脈の頂を見上げた。


知識によれば、氷結山脈の最奥には、この世界の全ての運命が絡み合った古代の祭壇が存在する。そこで、彼らは運命の壁を完成させるための儀式を行う予定だった。


「千鶴の狙いは、運命の壁を完成させる前に、この祭壇を究極の混沌で満たし、この世界を永遠の不確定性に閉じ込めることだ」


凍てつく幻影

山脈の奥深くへ進むにつれて、私たちは幻影を見始めた。


リリアーナの視界には、炎に包まれるフレイア王城、そしてライオネル殿下の亡骸。


クロード王子の視界には、家族を失った悲劇の瞬間、そして彼を嘲笑う武神の姿。


「これは…精神への干渉だ。千鶴の混沌の力が、この山脈の空気と共鳴し、我々の過去のトラウマを増幅させている!」セバスチャンが警告した。


「リリアーナ、心を乱されるな!過去の悲劇は、もう俺たちの運命ではない!」


クロード王子は、私の手を強く握り、幻影を振り払おうとした。


その時、山脈の最も高い氷の尾根の上に、一人の女性の姿が現れた。その顔は、ユナがよく知る、親友の顔。しかし、その瞳には、かつての穏やかさではなく、冷たい優越感が宿っていた。


ミサキ(本物のリリアーナの肉体)だった。


「ユナ。あなたの運命は、私がもらったわ」


彼女の声は、氷を砕くように冷たく、山脈全体に響き渡った。クロード王子は、目の前の女性がリリアーナではないことに気づいていたが、その出現の非合理性に、強い警戒を覚えた。

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