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嫌われようと努力したのに、今日も攻略対象に追いかけられています。  作者: 限界まで足掻いた人生


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103話 予測不能な逃走経路

レオンハルト殿下の武神の力を借りた一撃と、反乱分子の奮闘により、私たちは辛うじて大皇国の包囲網を突破した。セバスチャンが操縦する盗んだ軍用車両は、帝都・アカツキの喧騒から遠ざかり、荒涼とした郊外の夜道を急いでいた。


車両の荷台には、私とクロード王子、そして応急処置を施された本物のリリアーナが乗っている。私たちは、レオンハルト殿下と本物のリリアーナの安全を案じていたが、セバスチャンの冷静な判断が、私たちを現実に引き戻した。


「クロード王子。レオンハルト殿下と本物のリリアーナ様は、反乱分子と共に別の経路で脱出しました。彼らが囮となり、追跡は分散しているはずです」


セバスチャンの報告に、クロード王子は静かに頷いた。彼の瞳には、友を戦場に残してきた痛みと、王としての冷徹な使命感が同居している。


「アザトースは、必ず次の手を打ってくる。奴の論理は、情報の効率的な処理に基づく。我々は、奴が最も予測しにくい場所へと向かう」


「予測不能な場所とは?」私が尋ねた。


「知神の知識は、大陸の『文明』と『秩序』が構築された場所、すなわち都市や政治の中心地を最優先で解析する。奴の目から逃れるには、最も未開で、情報が希薄な土地へ行くしかない」


クロード王子は、レオンハルト殿下が残していった大皇国の詳細な地図を広げた。彼の指が指し示したのは、大皇国がまだ完全に支配下に置いていない、大陸の最北端、『氷結山脈(ヒョウケツサンミャク)』と呼ばれる極寒の地だった。


「氷結山脈…そこは、カミの干渉以前の、古代の伝説が残る土地では?」


セバスチャンが、その場所の非合理性を指摘した。


「そうだ。その非合理性こそが、アザトースの論理の盲点となる。知識が最も少ない場所は、予測が最も困難な場所だ」


クロード王子は、千鶴の杖を握りしめた。


「我々は、そこで、運命の壁を完成させるための、最後の儀式を行う。武神の憎しみと、アザトースの秩序が消えた今、我々は、第三のカミの存在を警戒しなければならない」


「第三のカミ…」私は、不安に駆られた。


「ああ。鶴神千鶴だ。彼女は、物語の混沌を望む。我々の計画は、彼女にとって究極の不確定性だが、成功すれば永遠の結末となる。彼女は、その結末を阻止するため、必ず、最後の混沌を仕掛けてくる」

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