表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/33

第25話 シャロの行き先

 いただきますから1時間ほど経って――大鍋の中は空っぽになった!


 シチューは思ったよりもたくさんあって、足りないなんてことはなかった。

 みんなお腹いっぱいになって、満足げな表情をしている!


「ぐふぅ……! シャロさんがたくさんシチューを作ってくれたおかげで、全員が満腹になれました! 私もお腹いっぱいでもう動けませ~ん!」


 見るからに膨らんだ自分のお腹をさする。

 上半身の重さに耐えきれず、お行儀が悪いと思いつつも地面に大の字で寝転がる。


「あぁ~、いけないことってどうしてこんなに気持ちいいんでしょうか~」


「ですね~」


 私の隣にごろんと寝ころんだシャロさんが同意してくれる。

 見上げる空には満天の星が輝いていて、私たちを優しく照らしてくれている。


「セフィラ様はこれからの予定とか考えていますか? 子どもたちを無事に送り届けた後、どこに向かうとか……」


「子どもたちを送り届けた後は、温泉街アスパーナに向かうつもりです。そこで心と体をゆ~っくり癒すつもりなんです! あと温泉街でしか食べられないようなグルメとかも……! あっ、シャロさんも何かご予定があるんですか?」


 何気なくシャロさんに尋ねたつもりだった。

 でも、その瞬間シャロさんから笑顔が消え、真顔で遠い星空を眺めるようになった。


 それから十数秒ほど間を空けて……シャロさんはその理由を話してくれた。


「私の旅の目的は、私を助けてくれた女の子……セフィラ様に再び会うことでした。それから先のことは何も考えていなかったんです。家族を戦争で失い、故郷の街プレトーは復興を目指していましたが、魔人国に近い立地ということで人口の流出は止められず……つい最近街としての役目を終えたと聞きました」


 シャロさんは表情を変えずに淡々と語る。


「……私はこれからどこに行けばいいんでしょう。セフィラ様に救われた命に感謝して、改めてお礼を言いたいという人生最大の目標は達成されました。次に私はどこを目指して生きれば……」


「それなら一緒にアスパーナに行きましょう! ゆっくり温泉に浸かって、美味しい物を食べて、それから考えればいいんです。これからの人生を決めるような大事なことは、気分がいい時に考えるに限ります!」


 横に寝ころんでいるシャロさんの手をギュッと握りしめる。

 その手の感触は想像していたよりもガッチリとしていた。


 戦争が終わってから1年……ずっと私を探して、旅を続けてきた。

 シャロさんの手には、その記憶が刻み込まれている。


「ですが、私には王国一の温泉街を楽しむようなお金が……」


「そんなの私が全部払うに決まってるじゃないですか! これでも元・神獣の世話係ですよ? 王国からいただいたお給料をたくさん貯め込んでいますから!」


「そこまでしていただく理由が、私みたいな人間には……」


「ありますね! 美味しいシチューをごちそうしていただきました。それも私だけでなく子どもたちやガルー、ムニャーも合わせて53人分! あっ、おかわりした子も結構いますから、その分も加えればザッとシチュー70皿分くらいのお返しをしなければ気が済みませんよっ!」


 自分の体を起こして、シャロさんに覆いかぶさるようにして上から彼女の瞳を見つめる。

 やたらとテンションが高かったシャロさんも今はしおらしくて、視線をふらふら泳がせながらぶつぶつ言っている。


「予定があるならまだしも、ないならガルーの背中に乗せて連れていきますからね。決定です!」


「……はい。不束者(ふつつかもの)ですが、ご一緒させてください!」


 シャロさんの顔にいつもの笑顔が戻ってきた!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ