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Wildfire-13


シリアスを壊す存在、それが謎の“微”幼女、シャトゥルヌーメ


「天飛ぶ、乳揉む、私が叫ぶ! 謎の美幼女、シャトゥルヌーメ推参です」




とうっ、という掛け声と共に赤い少女が館から飛び降りる。


一回転、二回転、三回転、四回……十回転ほどしてから二人の目の前に降り立つと両手を広げて見事なポージングを取った、




「うむ、十点!」


「……採点が甘いですね、シャトゥ。七回目の回転がぎこちなかったですし、着地時も僅かにバランスを崩しましたね?」


「流石母様、ちゃんと見られちゃっているのです。ごめんなさい、見栄を張りました」


「いえ、分かればいいのです。では今後も精進に励むように」


「了解です、母様! ……所で母様、服を溶かしてなんの“ぷれい”の最中ですか?」


「――別にプレイではありませんよ、シャトゥ?」


「ひぅ!?」




にっこり、と。無表情から一転して、“彼女”は擬音が浮かんできそうなほどにはっきりとした笑顔を浮かべていた。




「御免なさい母様。私が悪かったです!」


「いいえ、分かればそれでいい、誰であろうと勘違いはあるというものです」


「……母様にもですか?」


「ええ、私にもですよ。シャトゥ」


「そうなのですか」




感心する赤い少女と、すぐに無表情に戻ってしまった“彼女”。二人を後目にステイルサイトは赤い少女をじっと見つめていた。


紅い髪、赤い瞳、そして幼いながらも“女神の如き”美しきその容姿。何より見ているだけで心と体が傅きそうになってしまいそうな、不思議な雰囲気。


心のどこかで引っかかる何かがその少女には確かに存在していた。が、それが何なのかが分からない。




「シャトゥルヌーメ、それにその髪と瞳の紅……――あぁ成程、灼耀の」




だが不意に、大きく口元を歓喜に歪ませる。




「やあ、お嬢さん。始めまして」


「うむ?」




この時になって漸く、赤い少女はステイルサイトの方を見た。そして嬉しそうに顔を綻ばせる。




「はい、久しぶりに始めまして、燎原の子」


「……へぇ、ちゃんと“燎原”だと分かるのか。流石は灼耀の娘なだけはある」


「そう正直に褒められると照れます。なので本心は心の中にそっと置いておいてください」


「ああ、そうするよ。――本心は、ね」


「うむ。それはそうと燎原の子、どうしてあなたは母様の周りに力を展開しているのですか? 直ぐに力を解きなさい、あれでは母様が動けません」


「……母様? 母様って言うのはもしかして彼女の事、なのかい?」


「うむ? はい、母様は母様なのです」


「――まさか、父親はあの男とか言わないよな?」


「?」


「あの男……レムが父親だなんて言わないよな?」


「うむ! レムはレムなので断じて父様などではないのです。むしろ父様なわけがないのです!」


「ああ、そうか。それは……よかった」


「おかしな燎原の子ですね」


「おかしな事なんてあるものか。彼女があんな男に――なんて、考えるだけでも気が狂いそうになる」


「うむ? もしかしてあなたもレムを狙っていますか? でもダメですよ、あの子は私の獲物なんだからっ!」


「……そうだったのか? いや、それは悪い事をしたね」


「どういう意味ですか?」


「ああ、それはね、あの男は≪ユグドラシル≫が呑み干してしまったからだよ」


「そんなちっちゃな枝にレムは入りませんよ?」


「ふふ、それもそうだ。でもね――」




“聖遺物”≪ユグドラシル≫の先端が赤い少女へと向けられる。




「っ、シャトゥ、逃げなさい!」


「うむ? 母様、それはどういう意味ですか?」




“彼女”からの声に視線をそちらに向ける赤い少女。だが少女の問いに答えたのは“彼女”ではなく、“聖遺物”≪ユグドラシル≫を掲げていたステイルサイトだった。




「こう言う意味だよ、灼耀の娘。――神食しんしょくしろ、全てを喰らうモノ≪ユグドラシル≫」


「――ぇ?」




無数に分裂した小枝が大きなアギトの様になり、赤い少女の眼前を埋め尽くす。




「ぇ? 燎原の子……コレはどういうことすか?」


「どういうコトも何も。君は腹を減らした≪ユグドラシル≫のいい餌になりそうだからね」




ステイルサイトは悪意が一切含まれていない、だからこそ悪意に塗れた笑みを赤い少女へと向ける。


いざ――埋め尽くし、覆い尽くした枝のアギトは喰らいつこうとして、だが一瞬で紅蓮の炎に包まれていた。




「シャトゥちゃああああああああああ」


「――ちっ、雑魚が」




ステイルサイトは舌打ち、“彼女”と赤い少女は聞き覚えのある声に同時に空を見上げた。


勇ましい叫び声――というよりもどちらかと言えば悲鳴に近い絶叫を上げながら、一人の少女が空から“自然落下”してくる。




「ああああああん、助けてええええぇぇぇ――」




ぽすん、と。


そして見事に、今にも灰燼に帰そうとしていた枝のアギトの中へと落ちた。


ばくん、とアギトが閉じられて、咀嚼する様に枝が幾度かの脈動を繰り返す。






「げ……下僕一号様ー!?」


と、言う訳で下僕一号様、見事カップイン。喰われました。



キスケとコトハの一問一答


「好き嫌いは良くない。という訳でこれを食え、バカガキ」


「ししょ〜、それ私も嫌いです。あと、サジリカさんがこっち見てますよ?」


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