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DeedΣ. Trickle-2


引き続いてシリアス・モード中……



『最果』……?


それが“冥了”の特性ってヤツなのか――って!!




「我が身は定まらず。我が身は留まらず。ならば先ほどの夢幻に如何程の意味があろうか。そんなモノ、初めから理解はしていただろう――【点睛】」




目の前に在った、“存在を固定した”はずの“冥了”の身体がボロボロと崩れ落ちていく。ヒトがヒトとしての形を保ちながら崩壊していくその様は――正直、直視に耐えかねるものだ。そもそも生理的に受け付けない。


あれが、使徒“冥了”の 力。確かにあれじゃ、いくら傷付けたって効果がないわけ……って、そう言えば点睛、初めから知ってるならどうして教えてくれないのかなっ?




――……




さっきから、本当にどうしたのか。まるで点睛の返事がない。また眠っちゃったわけでもあるまいし、ホント何を考えてるんだか。




「故に――このような事も可能」


「っぁ!?」


「……今のを、良く避けた。それでこそあのお方の使徒」




今のは正直拙かった。前にラライちゃんの本気を見た事があったから対処できたと思っていい。そうじゃなきゃ、今のでやられてた。


それに、その姿――




「この姿が珍しいか? 『最速』の使徒【灼眼】。あのお方の力の象徴たる髪と瞳の色までを偽る気は微塵もないが、その能力は本物の使徒【灼眼】と同等である事を保証しよう」




其処に居たのは、ラライちゃんによく似た女のヒトの姿――ただ髪と瞳の色が翡翠色をしているという違いがあるだけ。


それに今回はたまたま“灼眼”だったみたいだけど、それってつまり十二使徒の“どれにでも成れる”って事じゃないの?




「……あのね、そんなの反則じゃないかな?」


「ヒトの身を以ての反則程度、我らが領分では当り前のことでしかない。仮にも自身もその領分に居ながら何を反則と宣う事がある?」


「いくら力が均等だからって、十二使徒全てに成れるなんてそんなの無茶苦茶過ぎるよ」


「その勘違いは訂正しておこう、“点睛の器”。私は全ての使途に成れるわけではない、【燎原】だけは我らが内でも規格外だと、先に言ったはずだ」


「そう言えば燎原だけは違うとか、そんな事も言ってたね」




だからって何の慰めにもなってないんですけどっ!


……これは、ちょっとどころじゃなくて凄く不味くないかな、ねえ点睛?




――……




もうっ、だからどうして何も答えてくれないかな、点睛はっ。




「相談は尽きたか」


「……何の事かな?」


「【点睛】と作戦でも練っていたのだろう? 何かいい案は思い浮かんだか、と聞いている」


「……残念だけど、“点睛”は私に何か良い案をくれるほど優しくないみたいなんだよ。君からも何か言ってやってくれないかな?」


「成程。一応、あのお方への忠意は持っているわけだ。だからと言って壊れた玩具に気を下さるあのお方ではないでしょうけれどね」


「ほんと、さっきから思ってたけど、あのお方とやら――男神チートクライは随分と下衆な――けふっ…………ぁ、れ?」


「あのお方を軽々しく呼ぶとは、万死に価する」


「わた、し……」


「その身以て償え、“点睛の器”」




無情で見下ろす“冥了”の、何一つ感情を映していない翡翠色の瞳が、酷く綺麗に見えた。




何をされたのか、どうしてこうなっているのか、まるで分からない。理解を拒む。


お腹の真ん中が、無くなっていた。気が付くとぽっかりと身体に大きな穴が開いていて――血の一滴さえ垂れてこない、でも身体が冷えていくのが分かる。




――私、このまま死ぬの?


こんなに呆気なく? 何も出来ない、何もしないままで?




「ま、だ…………――」




――









◆◆◆



胴体に穴を開けたまま地面に伏す少女と、それを見下ろす仮面の如き表情の女。どちらもが男神チートクライが眷属の証たる翡翠色の髪を持ち、“本来であるならば”その実力はどちらも同程度だが、二人の勝敗は明らかだった。



女は――使徒【冥了】は見下ろしていた視線を空へと向けた。


創造主のいなくなったこの空間もじきに崩壊するだろう。その様子を思い浮かべ、僅かに口元に――



「“本質”を――――知っているカ?」


「――?」



先ほどまで見下ろしていた同胞の亡骸から届いた懐かしい幻聴に、視線を落とした。


其処には何も、“少女の亡骸”など何処にも在りはしない。



「嘘、偽り、欺瞞、全てが“本質”で、同時に否定されるべき“真実”なノダ」



今度は後ろから届いた声に、“冥了”は振り返り、見る。


其処には、腹の中央をぽっかりと開けたまま、亡者の亡霊のように立ち尽くしている亡骸――どう見ても亡骸としか見えない同胞の姿が在った。


それでも、その亡骸は動く。動いて、俯いていた顔を上げて翡翠の瞳で真っ直ぐに“冥了”を見詰め、その口元に大きな三日月を作った。



「ククク、カカカ……子の世の偽りは全てが真実で有ル。偽りのナイ真実は嘘に塗り固めたゲンジツか? カカ??」


「“点睛の器”……いや、」


「ならばワタシは此処に在ると本当に言えるの? ののの? 言えない、射得ません、癒やせはしナイ、それが“真の嘘”である限りハ」


「貴女、は――」


「ヤア――久しい、実に久しいデスネ、【冥了】」


「その論理の欠片もない話し方、確かに久しいですね、『最凶』の使徒【点睛】」


「では――――――――サヨウナラ」




瞬間、“冥了”の姿が跡形もなく消えた。それはまるで初めから存在していなかったように――いや、“その通り”。使徒“冥了”は既に死んでいるという事実を元に『使徒“冥了”などこの場所には存在してない』という嘘が塗り固まったに過ぎない。


真実ばかりの世界。嘘ばかりの世界。だから“此処”にはないモノが在って在るものがない、なんてこともざらにある。ロジックのない無秩序たる空間。


――それが、使徒【点睛】の世界たる翡翠の輝き、“点睛の眼”のトリック、“本質”。





「強靭、凶刃、狂人……今は昔のコト。狂信たる『点睛』に貴女は私を造った。さあ、願い請うは――マイマスター・スヘミア?」


使徒【点睛】サマのご登場?

やっほー、ってこうも真面目な展開になってくると次第にどこかではっちゃけたくなってくるのです。



キスケとコトハの一問一答


「モノは大切に扱え」


「はい、師匠! ……それと師匠、あちらでサジリカさんが笑って手を振ってますけど――?」


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