WhiteJoker -天呼ぶ地呼ぶ少女が叫ぶ-
存在そのものが反則な輩。ヒトは彼女の事を『ホワイト・ジョーか』と呼ぶ……かもしれない?
「今、必堕のぉ……」
「――?」
「『しゅぅてぃんぐすたぁぁぁぁぁぁぁぁ・なこぉぉぉぉぉぉぉぉぉ』!!!!」
「――ぐふぉぉ!!??」
「「「……、はぇ?」」」
「ふっ、決まった、決まりました。決まり過ぎて……私は私の才能が怖いのです?」
「……ああ、やってしまいましたか」
『……きゅぅー』
それは実に奇妙な光景だった。
つい数瞬前まで漆黒の鬼が立っていた場所には男の姿はなく、代わりに今は紅眼赤髪の小さな女の子が拳を高らかにあげて、何やら悦に浸っていた。
その後ろには『やっちまったよ』感を漂わせて嘆いている少女と、表情は分からないがどこか困っていそうな灼耀の飛竜が一匹。
そして最後に、場の流れについていけず呆けたまま空を見上げている少女が二人。
◇◇◇
「御免なさい、本当に皆さん御免なさい。何か割り込んじゃいけない雰囲気だったのに、この子ったらそう言う空気とか全然読めないから……ほらっ、ちゃんと謝るっ!!」
「な、何故ですか? 私は何も間違った事はしません!」
「シャトゥちゃんは、この二人の呆け様を見ても同じことが言えるんですか?」
「うむ? ……うむ、苦しゅうないのです、私は当り前の事をしただけなので、ちゃんと私に感謝してください、鬼族の娘と……点睛?」
「点睛って……? ってスヘミア様!?」
「あー、うん、……確かファイ、だったよね? レム兄様の所の」
「はい、スヘミア様」
「……何やら、下僕一号様の態度が私の時と違う気がするのです」
「それは、この方は『点睛の魔女』スヘミア様なんですから、当然ですっ」
「点睛がどのくらい偉いというのですか!」
「少なくともシャトゥちゃんより偉いんじゃない?」
「そんなっ!? 下僕一号様、酷いのです!!」
「……あれ? でもそう言えばシャトゥちゃんって、女神さ――、まあ、いいよね、別に」
「女神様とか、私は良く分かりませんが、凄く良くない気がします!」
「あぁ、うん確かにファイだ。久しぶり、じゃなくて。何でまだこんなところに――でもなくてっ、ちょっとちょっとちょっとっ!!!」
「ふひゃっ!? ごめ、ごめんなさいっ!!??」
「下僕一号様は私のものですっ、何人たりとも対価なしじゃ渡しません!」
「――へぇ、シャトゥちゃん、対価があれば私を渡しちゃうんだ、……そうなんだ」
「ぃ、今のはちょっと言い間違えただけです、下僕一号様。なのでお仕置きは考え直してくれると、嬉しいです?」
「シャトゥちゃん、さっき自分で『私は間違った事はしません』って言ってたよね?」
「うむ、確かに言いました。私に間違いはありません」
「だったら、さっきのは言い間違いじゃないんだよね?」
「うむ、その通り……はっ!? げ、下僕一号様、嵌めましたね!?」
「私は何もしてないよ? だって、全部シャトゥちゃんが自分で言った事だよ」
「う、うむ」
「ちょっと、ちょっと、ファイ! 言い争うのは良いけど、今のっ、今の一体何が起こったのか説明して!? 後その子の事もっ」
「! 良い所にいるのです、点睛の小娘。私を助けて下さいませっ!」
「シャトゥちゃ〜ん?」
「早く、早く!」
「……えっとね、ほら、ファイ。こんな小さな子の言う事なんだから、そんなに目くじら立てなくってもいいんじゃないのかな?」
「ス、スヘミア様!? どうしてシャトゥちゃんの事を庇うんですか……?」
「庇うって……えっと、何となく、かなぁ? 何かこの子には逆らっちゃいけないような、そんな気がしてるんだけど……」
「うむ、存分に私を庇って、ついでに敬うのです、点睛!」
「分かりました!! ……って、あっれぇ〜?」
「ほら、点睛の小娘もこう言っているのです。だから下僕一号様、その柔らかいお胸で許して下さいお願いします!」
「そう言うときは広い心でって言うと思う……じゃなくて、――はぁぁ、もう良いですっ」
「本当ですか!? 流石は下僕一号様なのです。私の気持ちです、お礼にこれを進呈するの」
「これ? ……って、シャトゥちゃんまだ隠し持ってたの!?」
「うむ、秘蔵百選の内の一冊です。布教用なので大切にして下さいね、下僕一号様」
「――誰が自分の恥ずかしい写真集を大切にしますかっ!?」
「……下僕一号様ですか?」
「しないよっ!!」
「えーと、二人とも。あの、そろそろいいかな? 聞きたい事がいっぱいあるんだけど……?」
「嫌なのです、だからもうお仕置きは嫌なのですっ!」
「こらシャトゥちゃん、待って、というか待ちなさい、待て。あとちゃんと隠し持ってる私の映像、今度こそ全部出して貰うんだからっ!!!!」
「御免なさい下僕一号様。でも私に悪気はないのですー?」
『きゅぅぅ〜!!』
「……あれ? えっと、その――、行っちゃっ、た?」
◇◇◇
「ぐほっ!?!?」
「あ、師匠。お帰りな、さい?」
唐突に現れて、そして去って行ったシャトゥ一味。結局彼女たちは何をしたかったのか。……いや、作者の私にも全く分かりませんが。
何か結局、物語の流れをぶち壊していっただけじゃね? とか思ったりする。
ちなみに『しゅーてぃんぐすたぁ・なっこぉ』の説明を、一応再度書いておきます。
『しゅーてぃんぐすたー・なこぉ』
シャトゥ、108の必堕技の一つ。必ずオチる技、と書いて必堕技。
超神速で相手を殴打して空の彼方まで吹き飛ばすという恐ろしい技。でも地面へ凄い勢いで衝突しても絶対に死なない。…女神様の奇蹟とかその他色々を使っているらしい。
肉体へのダメージはほぼゼロ。どこかの魔法少女風に言えば『魔力攻撃で打ち抜く!』っぽい感じ。
キスケとコトハの一問一答
「……いや、なんつーか、悪い」
「その謝罪は何に対する謝罪ですか、師匠!?」




