ど-294. 後ろに見えるは……
鬼が見える
「うむ?」
「よし。やっと確保したぞ、シャトゥルヌーメ」
「うん、私はシャトゥルヌーメことシャトゥちゃんです」
「ああ、そうだな。お前は間違いようもなく、シャトゥだ。さんざん手こずらせやがって、この愛い奴めっ」
「うむ? ……うむ、私は吃驚しました。お昼寝から起きるとレムに捕まっていました」
「ふっ、気絶させられた時にはまた逃げられたかと思ったが、目を覚ました時隣で寝ててくれて助かったぜ」
「添い寝なの?」
「腕に抱きつかれていたのを引き離そうとしてもなかなか引き離せなかったあれはある意味添い寝と言えなくもないかもしれないな」
「無理やりとは、流石レムですね!」
「流石って何の事だ?」
「無理やりなのはレムの専売特許なのです。そして私の純潔はついにレムの手に落ちてしまいました。うむ、うむ!」
「……シャトゥ、お前絶対意味分かって言ってないだろ?」
「うむ、さっぱり判りません。でもそんな純真な私が素敵?」
「自分で言うな、自分で」
「うむ? そもそも私は常に純真無垢で潔癖なのです。母様が教えてくれたので間違いありません」
「ああ、そうだな。俺は断じてシャトゥの純潔とかに興味ないからな。それよりも、だ。この俺を差し置いて素敵とか、何言ってるんだよ」
「うむ、確かにレムは“素で(私たちの)敵”、つまり自然な状態でもとても素敵なのです」
「何故だろう、シャトゥの言ってる意味と俺の言ってる意味が違ってる気がする」
「私の言葉は絶対なので、間違えているとしたらきっとレムの意味が違っているの」
「いやシャトゥ、お前良く言葉とか間違えるだろうが」
「難解な言語表現方法は現在、前向きにお勉強中です」
「前向きに勉強って何だ。そんな曖昧な言い方してると言い訳しかできない駄目な大人になるぞ」
「それは非常に怖いので言いなおします」
「ああ、そうしろ」
「レム」
「ああ。それで言葉の勉強は、何なんだ?」
「押し倒されるのなら草むらがいいのです。がくがく、ぶるぶる」
「……何処からそんな言葉が出てきた?」
「う〜む、私の熱く迸る魂からですね?」
「なら仕方ない」
「うむ、仕方ないのです。それでレム、そろそろ良いでしょうか?」
「ああ。どうかしたか、シャトゥ?」
「……母様は、何故怒っていらっしゃるのでしょう?」
「さてな、自分で“母様”に聞いてみたらどうだ?」
「う、……うむ。…………うむ」
「ほらシャトゥ、足踏みしないで一気に言ってしま、」
「――さて、お話はもう宜しいでしょうか、お二方?」
「「は、はいっ!!」」
シャトゥ、確保
旦那様の(余計な)一言
「さて、どう料理してくれようか。……くくくっ」




