こんなわたくしでも宜しいかしら?
そうして連れ出され広い店内を見て回れば他にお客さんがいない。
そうか王家がくるからロットさんが先に帰ったのは貸切にする為だったのかと今更気がつく。
ホント自分の気の利きかなさに溜め息がでる。
「申し訳ないですわ」
「…謝らなくてもいいわよ」
「え?ミラさんに謝った訳では無いのですが…何かご迷惑をお掛けしました?」
「謝ってよ!!!」
「えぇ〜?」
そんな気安い会話にクスクス笑ってしまうと、
「ユリエルって、本当に変わった人ね」と呆れた様に言われてしまった。
「そうですか?自覚は無いのですが、シルクにはよく自分の立場を考える様にと叱られるわ」
「シルク様のお気持ちが今日少しはわかった気がするわ」
困った顔をされてしまったのでこちらは苦笑を返すしかない。
「ごめんなさい。お友達で居るのお嫌になったかしら?」
「…え?」
「ご迷惑お掛けしてるでしょう?あっ!今からお友達辞めても、ホラ貴族の圧?みたいなヤツで嫌がらせとかしませんよ?!」
そう言うとお店にあった扇を手に取り、キリリと顔を引き締め、
「『オーギュスト家の方はお招きしておりません。わたくしの派閥にお入りにならないそうですので…』…とかやらないし!あぁやだそーゆーの似合う!!似合っちゃう!!」
ポカンとしたミラさんが、吹き出して笑い出した。
「なんなのよソレ!?似合ってないわよ?アハハっおかし…!!それに派閥って、ユリエルは派閥どころかお茶会も夜会も出ないし、学園に女生徒の友達もいないじゃない!!」
「はっ!!盲点でしたわ!!」
一頻り笑うと、ミラさんはこちらを見て、
「あたしね…前も言ったけどユリエル様に憧れてたのよ。それで本当空回ってて…、信じられないくらい迷惑かけて…」
「気にしてませんわ」
「いや!気にしなさいよ!!…とにかくあたしは…ユリエルに憧れてて…綺麗でいつも凛として、でも微笑んでてさ、入学式の時とか…ホント…その…」
思わず首を傾げて「誰の話ですの?」と聞けば「ユリエルだって言ってるでしょ!!」と怒られた。
「兎に角、許されない事を仕掛けて、それであんな事になったのに、ニコニコしちゃって…ホント思ってたのと違いすぎるのよ!」
「えっと…ごめんなさい?」
「だから…そーゆーユリエルと居ると調子狂っちゃうって言うか…あぁ、もうこんな言い方していい訳ない相手なのに、ホント自分で自分がわからなくなるって言うか…!!」
そんなミラさんを見て、思い出した。
目次に小さくあった、ユリエルの取り巻きと呼ばれる女の子の1人にツインテールの子が居た。
そうか…ミラさんは原作のユリエルに憧れているあの子だったんだわ。
「そう…ごめんなさい。貴女の憧れたユリエルになれなくて」
辛いけどそれは気が付かれない様に微笑んで、
「貴女の思うユリエルは居ないわ。だからわたくしに迷惑かけたからなんて理由でここに居る必要はないのよ?」
わたしの読んだ小説では、ユリエルは断罪されてたけど…いや、その断罪の内容すら思い出せないわたしに、取り巻きのこの子がどうなったのかなんて覚えてる訳もないし、むしろ載ってたのかも思い出せない。
でも、このままわたしのそばに居てこんな良い子に悪影響があったら辛い。
「それにね…無理して近くに居るほど辛いものはないわ。…ミラさん、ありがとう。少しの間でも楽しかったわ」
ポカンと話を聞いていたけれど、我に帰ったように「…えっ?」と呟くと、突然怒った様に顔を真っ赤にしてわたしの手を取った。
「ねぇユリエル。あたしってそんな替えの効く存在だった!?」
「そんな事…!!」
その赤い大きな瞳は、きつく睨む様に真っ直ぐわたしを見ていた。
「ユリエルが…イメージと違ったからって、サヨナラなんて言ってない!!イメージと違ったってあたしはユリエルと知り合えて…友達だって言われて嬉しかったのに!!ユリエルにとってあたしはそんな平気でさよなら言える相手なの!?」
「だ…だって、イメージと違って、わたくしこそ迷惑かけて、えっと、不安にさせたり、また勝手な事したり…わたしでは今まで以上にミラさんのイメージと違ったこともきっとしてしまいますわ」
「それって友達なら当たり前じゃないの!?ユリエルは…最初からあたしの全てがわかってた?」
「いえ…」
「あたしは思ってたのと違うユリエルでも好きだって言ってるのよ!だから友達で居たいのにっっ!!」
これは……
ミラさんが、デレたわ……!!!!!!
「…なんか言ってよ…っ!」
恥ずかしいのか、顔を隠す様に手を当てていて…その姿がまた可愛らしくて…
「ロットさんのお父様!!!!!!」
「え?!なんで?」
「お呼びで御座いますか?」
間髪入れずに現れたロットさんのお父様に、キリリとした貴族面して堂々と申し付ける。さっきの扇もがっつり装備よ!!ここまで使ったらコレもちゃんと買い取ります!!
「このお店でわたくし達がお揃いで使える様な物ございます?お金に糸目はつけませんわ!!準備して下さいな!」
「え?ちょ…ユリエル?」
「畏まりました。少々お待ち下さい」
「わたくし憧れましたの!!お友達が出来たら、お友達とお揃いの物を持つの!!今更お友達キャンセルは効きませんわよ!?本当にミラさんがお嫌になってわたしから離れるまでお友達よ!?」
「え…そうね…?」
目を白黒させているミラさんの手を掴み、言質取ったり!!!
「ならお揃いで素敵なもの持っちゃったりしちゃいましょう!!やだ!ウキウキが止まらないわ!!」
「ちょ……!待って!!今そんな喜ばれると…!」
「あらロイさん!わたくし達お友達ですのよ!」
ミラさんの後ろに現れたロイさんに喜びの余り声を掛ける。
「そうか。良かったな」
「うふふ!こんな嬉しい事はありませんわ!女の子のお友達ですわ!わたくしロットさんのお父様の様子見て来ますわね!!」
「え!!ちょっと待って!?」
振り向けばロイさんは「ユーリと親しくしてくれてありがとう」とミラさんに微笑んでいる。
「アレだな…どう考えても俺の上げた石よりも喜んでいる様で、ミラがユーリにとって如何に大切かわかるよ」
「あはっ…あ、あたくし、ユリエル様のところにいってまりりまひゅわ」
手と足同時に出てるわ!!わかる!王家でイケメンからのスマイルなんて緊張しちゃうわよね!うんうん!免疫あるわたしでもたまに驚いちゃうもの!!なんだか顔が青い気がするけど、赤を超えるほどの緊張ね!!
「ミラさん。いくつかもう用意して下さってますわ!わたくし誰かとお揃いとか初めてですの!ドキドキしちゃいますわね!!」
前世通してもお友達とのお揃いとか、憧れてたけどやる機会も無かったし、胸を高鳴らせて商品を選ぶ。
「お願いもうユリエルもう黙って…」
「あっ!!ミラさんこの指輪なんて素敵じゃありませんこと?」
「それは勘弁して!!!空気を…空気を読んで!!」
「え〜…ならこのネックレスとか?」
「このタイミングでは更にダメ!!!」
あら?意外と我儘さんね。でも言いたい事が言える仲になった気がして嬉しいわ!
結局その日は結局ミラさんの希望で色違いでお揃いの皮の筆入れを買って、ミラさんはアベイルさんが、わたしはロイさんに送って頂き帰宅しました。
なんだか帰りにミラさんグッタリしてたけど、連れ回し過ぎたかしら…。貴族だし普段は馬車移動で運動不足かもしれないわ!
今度は散歩にでも誘ってみようかしら!?ロットさんもいいって言ってたし?兎に角わたしは初の女の子のお友達に浮かれ過ぎて、帰りはロイさんにミラさんがいかに可愛いかを語りまくってしまったわ。
はっ!!これはロイさんとミラさんのフラグとやらになっちゃったりしないかしら!?
そうしてわたしは寝る前まで興奮してあるんだかないんだか分からない事を延々と考えて眠りましたとさ。うふふっ!





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