ウインドウショッピングすると結局買っちゃうから、それはウインドウショッピングでは無い事に気がつく。その2
「いらっしゃい!えらい遅かったなぁ〜迎えにいけば………うん。迎えに行けば良かったな。気ぃ利かんですまん!」
「いえ…その…遅くなって…すいません…」
恥ずかしさのあまり、赤くなっているであろう頬に手を当てながら思わず謝れば、ロットさんが従業員の方をよび、ロイさんとアベイルさんの両手いっぱいに抱えた荷物を店内の接客室に運んでくれる。
「2人とも申し訳ありません…いつの間にこんな事になったのやら…」
「いや、普段出来ない貴重な経験になったぞ」
「うひゃひゃひゃひゃっ!!そら王太子にあない荷物持たせる人間他におらんやろ」
「ぼ、ボクは大丈夫なので…ユリエルさん気にしないで下さいね?」
「あたしは何度も止めたわよ?」
「もう本当に申し訳ありませんわ…」
そのまま案内された接客室で肩身狭くみんなに謝る。
うぅ…前回もシルク相手にやらかして、今度こそ買い過ぎないと心に決めてたのに、下町のお店には素敵なものや楽しそうなものが溢れてて、しかもお手頃価格!!
普段屋敷と学校の往復でお買い物2回目のビギナーが、下手にお小遣い持ってちゃ駄目ね…
ロイさんとアベイルが持つと言ってくれたのを最初は遠慮してたのにいつの間にか甘えて…お正月の仮装の大賞を決める得点張りの荷物の増え方をしてた気がするわ…。
いや本当にロットさんの言うように、どこに王子に荷物持ちさせる愚か者がいるっていうのよ!ハイここにいます!すみません!!!
「いやぁ〜姫さん、前回もそうやけど買い物好っきやなぁ!」
「普段買わない分、羽目を外してしまいがちですわ…いえ、でもこれは地域活性化!!ある意味地産地消ですわ!!」
こうなったら開き直ってみるわ!!
「なによ?そのチサンチショウって?」
「その住んでいる土地のものを買い、その土地の経済を回す事です。勿論他の土地の物を買うことは、運ぶ方々にもお給金がまわり、経済は回りますけどコストも掛かります。やはりここに住まわれてる方のお金が回った方が、手の届く範囲の方々の活性化に繋がりますしね」
ミラさんの質問にちょっと違う気もするが、構わず優雅に答えておほほと笑えば「で?ホンマのところは?」と聞かれたら、「お買い物が楽し過ぎて周りが見えていませんでしたわ!ごめんなさい!」と、改めて謝ればみんな笑ったり呆れたり…
そんな中一際大きな声で、でひゃひゃと笑うロットさんにゲンコツが落とされた。
「ロット!ここは学園では無いんだぞ!…愚息が大変失礼致しました。ロイ様、私共の店に来て頂き至極光栄の至りでございます。もし何か御座いましたら、いつでもお申し付け下さいませ。そしてユリエル様ご無沙汰しております。当店にアイディアを下さいまして有難う御座います。お陰で貴族様方との取引も増えておりまして、感謝してもし足りないほどで御座います」
「突然の来店になりこちらこそ気を使わせてたな。あとロットの件も気にしないでくれ。学園では無いが、互いに学生の身故、砕けた話し方をするのも吝かではないのでな」
ロイさんがフッと笑ってくれたので、わたしも頷いて、
「そうですわ。わたくしこそいつもお世話になっておりますのに、外で突然堅苦しくなられたら寂しいですもの。でも次からはちゃんとロットさんとお約束してらから来ますわね」
そう学習した事を取り入れて周りを安心させようとニコリと笑えば、
「その時は是非同行しよう」と、微妙に引き攣った笑顔でロイさんが笑った。そうは言ってもロイさんこそ忙しいし無理しなくて良いのに…と、思ったけど、ミラさんが向こうから黙っときなさいオーラ出してきたので、微笑んで終わらせる。
あらやだ!ミラさんとツーカーの仲になって来た気がする!!もう親友とか言えるのも近いのでは!?
「広大なる御心に感謝申し上げます。ミラ様、アベイル様に至りましても、どうか愚息とも引き続きお付き合い頂きます様申し上げます」
そう深々と頭を下げると、ゲンコツを落とされた頭を押さえてたロットさんが立ち上がると至極丁寧に頭を下げた。
「ほな…いえ…、ロイ様、ユリエル様、ミラ様、アベイル様、改めまして当店にお越し頂き誠に有難う御座います。こちらが最近御貴族様に人気のある男性向けの商品となっております。こちらネックレスですが、今までの女性向きとは違い男性でも違和感なくつけられるデザインになっており、家紋に近いデザインで一点物を御造りになられる方もいらっしゃいます」
「あ…あのっ…ロットさん…」
「アベイル様、こちらに御興味惹かれた物は御座いますか?」
営業スマイルでニコリと笑えば、アベイルさんが微妙に涙目で、
「あの…すいません。違和感あり過ぎて、何も頭に入ってきません…す、すいませんロイさんと一緒に説明受けてるのに、もう本当申し訳ないのですが…」
わかりみしかない。
そしてロイさんもなんとか笑いを堪えてるけど、肩が震えてる。
「あの、ロットさんのお父様?今ここには不敬だなんだと言う方はいらっしゃいませんので、どうかわたくし達お友達には普段のロットさんで接客をして頂きたいのですが…」
そうお願いすれば、ロットさんを見て仕方ないといった顔をして「ロット、そう言って下さってるし、お言葉に甘えなさい。しかし節度は守る様に。」
その言葉に本人はニカっと笑うと「ほなオススメはこの辺やな!ロイ様にゃちょいと安ぅ見えるかもしれへんけど、下町やちょっとしたお出掛けにはピッタリやで!」
「私がおりますと、友人同士のお時間のお邪魔になってしまいますね。こちらの部屋ではどうぞお寛ぎ下さいませ。愚息に失礼がありましたら、直ぐにお申し付け頂ければ戒めに参ります。その時はお声をおかけ下さいませ」
「ご心配頂かなくとも大丈夫ですわ。わたくし達ロットさんを信用しておりますから」
そう微笑めば少し驚いた顔をした後に優しく微笑まれてお辞儀をして部屋から出て行った。
きっと厳しいそうだけれど、あのお顔はお父さんの顔してたわ。
「素敵なお父様ですね」
「ほうか?めっちゃ怖いで?」
そう言いながらも笑うロットさんに、親子関係の円満さが窺われて、思わずクスクスと笑いが漏れる。
「町ではこういったものが流行ってるのか。」
ロイさんのその手には小さな青緑色した宝石のついたネックレス。
「その辺は女性向けのネックレスで、グリニッシュブルーって呼ばれる色やな。角度によって色の濃さが違って見える宝石やね。普段目にされる物と比べたら玩具みたいなサイズに見えるかもやけど、普段使いには丁度ええのよ。まぁうちら庶民からしたら精一杯の贅沢ともいえるけどな」
「まぁ、なんて綺麗…」
窓から入る陽の光に当てられてキラキラと輝く宝石に思わず呟いてしまった、
正直貴族のあのゴテゴテした宝石がついたネックレスや指輪などは綺麗だけどめちゃ重いし、コレ幾らなの?と庶民脳が囁いて緊張するし、好みとしてもこんなシンプルなネックレスがわたしは欲しかった。
そう思ってロットさんに声を掛けようとすれば、
「これを貰おう」
ロイさんに先を越されてしまった。
…しょうがないわよね。ロイさんが先に見てたんだもの。
「有難う御座います。チェーンも変えたり、長さも調整出来ますが、いかがなさいますか?」
ロットさんが従業員モードに変わったわ。
もしかしてそれなりに良いお値段なのね。なら今日のわたしでは買えなかったかもしれないわ。
「いや、一度そのまま見てみたい。貸してくれ」
そう言うと立ち上がりわたしの首に掛けてくれた。
「え!?ロイさん!?」
「気に入ったのだろう?」
「えぇ…ですが、宜しいのでしょうか…?」
そう問えば、目を細めて笑ってくれる。
「ありがとうございます。なんて綺麗…まるでこの色ロイさん…」
「ロットこのままで…」
「と、シルクの瞳の色みたい!」
嬉しさの余り微笑めば、全員固まった。え?何故に?
「ロット…チェーンを金だ!金に変えろ!」
「ガッテンや!!」
「あ!アベイルさんも青い瞳でしたわね!ロットさんの瞳も緑がかってますし、なんだか今日の記念みたいですわぁ!」
「うわぁぁ!姫さん巻き込まんとってぇぇ!!」
「ユリエル!!店内見に行くわよ!!」
「え!?ミラさん一緒に回って下さるの?わたくしと…おっお揃いとか、そう!お揃いの物とか買っちゃいません?!」
「あたしまで巻き込まないれりょっっ!!!」
涙目のミラさんに手を引かれて部屋を出ていく。
初お友達と手繋ぎですわ!!





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