怒る時は怒るのです!鬼瓦っ!!
「はいはーい、その辺でお開きやで!」
ロットさんが間に入った手前、2人とも踏みとどまった。
「ロイくんも若いね。こんな挑発に乗ってはいけないよ?」
爽やかな笑みでレイさんも定食を持って階段を上がってくる。その後ろにはアベイルさんがロットさんの分なのか、2つ定食持っておずおずと来たので、お手伝いに向かう。
「なんでぇ!両者合意で学校側に許可取りゃぁ試合も組めるんだからよぉ!!」
チェッと舌打ちして、椅子にドカンと座り直せば、ロイさんも頭をガシガシと掻いて座る。
「皆さんナイスタイミングですね」
こっそりアベイルさんに声を掛ければ、何も言わずに微笑まれた。
「あぁ…そうでしたの。アベイルさんが呼んでくださいましたのね。ありがとう」
そう言って微笑めば、少し驚いた様に「い、いえ、僕は何も…」そう恥ずかしそうに答えてくれる。
「ともかく、グラヴァルドはん。こんなみんなに聞こえる食堂で大騒ぎせんとって下さい。まぁそれが狙いなんやろけどなぁ」
手を合わせてから、大きな口でご飯を食べ始めるロットさん。…グラヴァルドさんと大差ない量食べてますわ。だから何処に入るのかしら??
「ったくレイよぉ、おめえに何度申し込んだって戦ってくれねぇじゃぁねぇかよぉ!」
「そりゃぁグラヴァルドくんと戦いたいと思えませんから」
まぁなんて爽やかスマイル。
「だぁぁぁ!!去年のあの試合、ワシは負けだと認めねぇぞ!!」
「ルールに乗っ取った勝負ですから」
髪をかき上げて麺を食べる姿すら絵になるわ!
「…えっと…あの、お二人の勝負って…」
アベイルさんが思わず聞けば、ギッッッと滅茶苦茶怖い顔でグラヴァルドさんが睨むので「ひっ」と、小さくアベイルさんが悲鳴をあげた。
「だぁぁぁぁ!!思い出してぇも腹が立つ!!!去年の決勝でコイツと当たったぁ時…」
それを知らないアベイルさんとわたしはゴクっと唾を飲む。
「ワシが『決勝でお前と当たるとはぁなぁ!!全力で勝負だぁ!!』って言ってる間に、全力の風魔法で場外にぃ飛ばしやがったぁのよ!!!!!」
「ルール上問題ないからね」
思い出し怒りのグラヴァルドさんの後ろで、にこやかにそして爽やかに微笑まれるレイさん。
「その前の試合みてぇに騎士らしく!剣と魔法両方使うとか、そんな正々堂々したぁ戦いなら文句もねぇが、アレは無ぇ!!!アレは無ぇぞ!!!」
「でも君は正々堂々と戦ったロイくんに対してもいちゃもんをつけて、こうしているじゃ無いか」
突然冷ややかな視線を向けて告げれば、グラヴァルドは二の句が告げなくなる。
「ここでもグラヴァルドはんの負けやな」
ニヤリとロットさんが告げれば、ガシガシと頭を掻きながら苦々しくレイさんを見て
「ち…っ、女みてぇな顔して言う事は相変わらずキッツイのぉ!」
そう言われてわたしは思わず立ち上がりグラヴァルドさんを見る。
「お待ち下さいませ。今の話にレイさんの麗しいお顔は関係ありませんでしょう?人の見た目をどうこう言うのは失礼です。それに先程仰ったロイさんの王子は生まれで決まっていただけで、それを引き合いの様に出すのも宜しくないですわ!」
「なぁ…っ!ユリエル嬢が何故キレて…」
「グラヴァルドさん、見た目や生まれはどうにもなりませんわ?グラヴァルドさんもこの前仰っていたじゃないですか。『ワシを見てもビビらず笑ってくれる』って。中身ではなく見た目で判断されるのがお嫌なのは、グラヴァルドさんもご存知でしょう?」
「ユリエル嬢…」
ポカンとしたグラヴァルドさんに「ね?」と微笑む。
…また、若者に説教かましてしまったので、もう笑って誤魔化すしかないわ。
その瞬間にグラヴァルドさんがグワっと両手を広げて組み掛かって来た…!!
目を白黒させてる間に「姉さん!」と後ろから手を引かれ、シルクが守る様に入れ替わる。
「シルク…!」と声を出せたか出せていなかったのか…、転びそうなのをなんとか踏みとどまり、アベイルさんに支えられ、振り向くと
「ユリエル嬢はやはり理想のおなごじゃ!!おぉ意外とゴツゴツしとるのぉ!!」
シルクが抱きしめられてスリスリされてた。
「ね…姉さん…」こちらに手を伸ばし涙ちょちょぎれてるし…なんでこうなってるの?
「グラヴァルドさん!!うちの義弟お返し下さいませ」
そう言えばこちらを驚いた顔をして見ると「なんじゃぁ!?」とシルクをドンとつき飛ばす。
カッッチーーーン!!
「わたくしのシルクに何をいたしますの!!!?」
「いやいやユリエル嬢、ワシは誤解で…」
「五階も六階も七階も御座いませんわ!!クロモリ!!」
闇が現れ黒豹のクロモリが現れると、シルクを連れてその背に乗り込みグラヴァルドさんを睨んで、
「シルクに酷いことする人とお話ししたく御座いませんわ!!クロモリ!!」「ちょ…姉さん!?」
そう言って階段も無視して飛び、そのまま廊下に飛び出した。
「ねぇさぁぁぁぁんっ!?」
食堂にはシルクの悲鳴だけがドップラー効果で響き渡っていた。





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