忙しい日々は、何か大切なものを忘れさせてくれる
あれから、わたしの口から抜けた魂がまだ戻りきらぬ前に、
「そんな訳で宜しくな。フィアンセ殿」
前日とは違い、どこか腹黒い笑顔にも見えたロイ様に、
「不束者ですが、謹んでお受け致します」
……そう笑顔で言えたような言えなかったようなあの事件から、早9年。
光陰矢の如し!ダッシュで過ぎたぜ!わたしのヒト桁年齢どころか、わたくしもう15歳。
何故そんな早かったかって?
そりゃ王妃教育の賜物でございますわぁぁぁぁぁ!!
まずは勉強。教育スタートに数学を習い、前世の記憶の恩恵にあやかってそれなりに出来た…のが不味かった!
神童扱いされちゃって、そこから歴史、文学、経済学だの詰め込まれ、まぁある意味勉学は結局この先どう転んでも役に立つし、むしろ勉強を改めて出来た事に感謝したいともほんの少〜しは思えてた。
しっかぁーし!いつの間にやらそれと同時進行で、社交マナー、言葉遣い、歩き方、指先一つ目配せ一つで周りに伝えられるようにとか、そんなん10やそこいらのわたしにホンマ無茶言いよるで!!
……疲れのあまり、頭の中に芸人さんが入り込むわぁ〜。
そんな勢いでそのまま中等部の学習も家庭学習という名のスパルタで叩きこまれて……
しかぁぁぁ〜し!それもこれも過去の話!!
明日からは高等学校生活なのですわ!!
寮もあるけれど、わたしはお父様達のたっての希望で……、つまりは、
『ユーリが高校卒業したらお嫁に行って、そしたらお父様とお母様に会えるの少なくなるんだから、せめて学生の間は屋敷から通学して欲しい!!』
とか必死に言われたら、馬車で50分程度の距離位、毎朝頑張ろうというものよ……。
クローゼットに入った制服に想いを寄せ、青春に期待を込めてわたしは眠りについた。
『ねぇお姫様?目を覚まして?あぁ俺のお姫様はお寝坊さんだね』
ちょっ……ロイ様!? 何その口ぶり……キモ…じゃなくて、いつもと余りに違いませんこと?
『え!?やだ!寝ちゃってた?!恥ずかしいっ』
え?誰?
可愛らしく頬に手を当てロイ様に上目遣いで『もうっ起こしくれたらいいのにっ』と可愛らしく照れるのは…某見た目と中身の違う探偵さんの犯人宜しく、全身黒で目だけ見える謎の少女。
『あはは!ごめんよ?…この時間が続いたら、幸せだなって思ったら…起こせなかったんだ』
『ロイ様…』
いやいやいやロイ様逃げてーーー!?コレ絶対この後キラリと刃物が出てくるパターンじゃん!??
『ロイ様のこと…私、好きです。』
上目遣いにそこまで言って、犯人は寂しそうに目線を逸らすと、
『でも…ロイにはユリエル様がいるから…こんな想い…迷惑だよね』
健気な犯人をロイ様は思わず抱きしめ、
『君に意地悪する彼女の事なんて、俺が愛している訳ないだろう!?俺が好きなのはーーー……』
わたしはそこまで見ると、ぐわばぁぁぁっ!!っとベッドの上で起き上がり、
「思い出したぁぁぁぁぁ!!私、悪役令嬢だったぁぁぁぁぁぁ!!!」
王妃教育のとんでも詰め込み教育に、ここ数年追われに追われて追われまくって、とんでもないこと忘れてたわ!!!!
ちょ…!!とりま5年ほど元に戻しておくれ神様仏様アマテル様ぁぁぁ!!!!
高等学校って、たしかゲームスタート。読んでた小説の冒頭の部分のスタートじゃん!!!
なにハッピー気分で2回目のJK LIFE楽しんじゃうぞ☆的な気持ちでいたのよわたし!!
いや今からでも引き出し開けたらタイムマシンとか出てこない!?青い丸い毒舌吐くけどなんだかんだでめちゃくちゃ甘やかしてくれる未来型のキャット様!出てきてお願いプリーズ!!
かくもげんじつとはきびしく、まどのそとではやまばとがなき、そらはしろくそまっていくのであった……。
くるっく〜☆
評価ブクマありがとうございます。
涙で前が見えません。





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