愛は誰にも負けなくてよ!!
「安心して下さいな。あたしのキャロットの睡眠魔法でつわ」
ミラさんは勢いよく歩いてわたしの前に立ち、
「あのですね!ユリエルさま!?」
「はい?」
「あの…あのえっと…その…」
口も指先もじもじとして、勢いが一気に減ったわ。
「いえ!それよりミラさん?目線が高いなぁ〜と思ったら、グラヴァルドさん踏んでますわよ?」
「いっ!今はそんな事どうでもよくて!!」
ダンッて地団駄踏んじゃダメ!!いるよ!?そこに倒れた人が居るのよ!?そして何故誰も突っ込まないの!?
「…ごめんなさい」
小さく消え入りそうな声が聞こえた。
「え?なんのことです?」
「だから…あたしが……あたしが…っ」
ポロポロと、その大きな目から突然涙が溢れて腕に抱いたキャロットちゃんと下のグラヴァルドさんに落ちる。
「と、とりあえず移動しませんこと?」
足元が気になって頭に入ってこないからね!!
そして2人で部屋の端にある椅子に腰を掛ける。
ミラさんの涙はそれでも止まらず、ハンカチを差し出し、背中を撫でる。
「ご…めんなさ…あっ…あたしが、ユリエルさまに…あんなことしなければ…さら…拐われたりしなかっ…のにっっ!!」
「あぁ、その事なら気にしないで大丈夫よ。むしろあの時ミラさんが拐われなくて良かったわ。わたくしは何事も無かったし、それより聞いてるだろうけど、ミラさんこそ気をつけてね?」
安心させようと微笑めば、
「ごべんなざ〜〜〜いっ!!」と更に大きな声で泣き出した。
困って周りを見れば、アベイルさんが近づいてきて申し訳なさそうに話し出す。
「あの…すいません。ボクが今日、ユリエルさんがここに居る事を伝えました…。勝手にすいません…。えっと、ユリエルさんの事件の後から、ずっと気にして…今週も学校でユリエルさんをこっそり見つめてて…その、声を掛けたら、謝りたいって泣かれてしまって…えっと、それでも学校ではタイミングが合わなくて、ボクらがお家に伺うわけにもいかないし…、それで…勝手にすいません…」
「姉さん、アベイルさんは僕には確認取ってるから、勝手ってわけじゃないよ。…ミラさん。僕こそあの日は悪かったね。姉さんが拐われたと聞いて、強く当たってしまったと思う。君は悪くないのに…すまない」
頭を下げるシルクに、ミラさんが慌てて「いえ!あたしが悪かったの!!ごめ…ごめんなさい!!」と頭を下げる。
その胸には相変わらず可愛いキャロットちゃん。耳がピクピクしてる。激カワ!!!
「あの…あたし、ユリエルさまに憧れてて…それで、ちょっとでも近付きたくて…取り巻きでもなんでも良かったのに…いつも近付けなくて…だから、戦ってなんて……みっみっ…」
「み?」
「身の程知らずにゃ事をーーーー!!!」
ぴゃーーとまた泣き出すミラさん。
「だってあんなあり得ない召喚獣いるとか聞いてないし!!あっあたしがあの魔法祭で見た時、どんだけ衝撃受けたか!!そりゃキャロットも逃げ出すわよ〜〜〜!怖い思いせてごめんねキャロット〜〜〜!!!」
「こっ…怖い思い…!!」
今度はわたしに10倍の重力が掛かる。
グラヴァルドさん…この小屋はやはり精神となんちゃらの部屋みたいね…。
「あっ、あんな、化け物みたいなっ!召喚獣聞いたことないっし!」
涙で息切れしながら言われた言葉に、ピクリと反応する。
「ちょっとお待ちくださいなミラさん。うちのクロモリは、そりゃちょっと大きいけど、とってもとってもキャワウィーのですわ!!…クロモリ!!」
名を呼べば闇が現れると同時に黒豹のクロモリがわたしの横に現れる。
「さぁミラさん?お互い可愛い召喚獣について語り合いましょうか?」
にっこりと笑えば、ミラさんとキャロットちゃんが抱き合って「ヒィィッ」と悲鳴をあげたけど、その辺は気にせずにいかにクロモリが可愛いのか、膝に顎を乗せたクロモリを撫でながら語り始める。
「いいですか?確かにクロモリは見た目は大きいですが、見て下さいこの目!!大きく可愛らしくて細めた姿はまた違った愛らしさが…!!」
「ひ…人でも殺しそうな目をしてるわよ!?」
「キリリした猫科の目ですからね?もしかしてわたくし以外には、愛らしいより知的さを兼ね備えた様に見えるのかしら…?」
「かっ…可愛いと言うのはうちのキャロットみたいな事をいうのよ!!」
「く…!それはたしかに否めませんが、クロモリの可愛さはそれだけじゃなくて…!!」
キャァキャァと召喚獣談義は一時間近くに渡り、最後には「わかったわよ…!!クロモリ様も可愛いと言うことにするわよ…!!」と、ミラさんのお墨付きも貰えたので、満足することにする。
それより長い時間クロモリの愛らしさについて語れたことが一番の満足だわ。
「ねえミラさん?是非お友達になって、また召喚獣について語り合いましょう?」
微笑み握手を求めれば、右へ左へと視線が泳ぎ、最後は真っ赤になって「まぁ…ユリエルしゃまがそう言うなら…なってあげなくもないけろ!!」と、握手を返してくれる。
ツンデレの初の女の子の友達!!ゲットだぜ!!!
少し離れた場所では、その姿を見つめながらゆったりとした時が流れていた。
「なんだかミラくんにとって一番怖いのは、怒ったシルクくんより、天然のユリエルくんの方かもしれないね」
「ミラはん、青い顔でプルップルしとるのにクロモリ撫でさせられとるで?あれで悪気ないとか、どないな教育しとんねんシルっくん」
「姉さんを教育なんて出来ませんよ。毎日何故か自信満々に歩んでますから」
ロットが無言で背中を優しく叩くと「それでもまぁ…そこが長所でもありますからね…」と言えば、2人も笑って頷いた。
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