スマイル0円。それがジャパニーズパッション。
「… グラヴァルドさん。どうしてここが?それにロイくんは居ないですよ」
困った様にレイさんが微笑む。
「あ?ここはたまたまそこの赤緑頭が、ピンクのチビっ子に説明してんの聞いてなぁ!しかもレイだけじゃなくロイサマも来るって言ってたらそらぁワシも来るだろう!?」
ガハハと豪快に笑うその人を、なんとなく見たことあるような、無いような…
そして赤緑頭と言われたロットさんは、失敗したと頭を抱えて天を仰ぐ。
「兎に角、今日はプライベートな集まりだからね。呼んでない方は帰ってくれませんか?」
顔はニコリとしてるけど、お怒りレイさんだわ。
「邪魔して悪ぃが、学園じゃぁ魔法祭でしか戦うのが禁止されてんだろ?ワシャァ卒業前に一戦やりてぇんだ。負けたまま卒業なんざ出来やしねぇからなぁ。だから、ここはおあつらえ向きってぇ訳でな!!女どもと戯れてる暇がぁあったらレイでも構わん!一戦頼まぁ!」
燃えるような赤い瞳に赤い髪。その髪は根本から逆立っているのもまるで彼の性格を表している様にみえる。
なにより目を引くのは2メートル近くあるその身長に、わたしなんてすっぽりと隠れてしまうほど大きな身体。
思わず「キレてるキレてる!!よっ!ナイスバルク!!」とかどっかの掛け声が頭に響く。
そんな雑音の響く頭で検索すれば、「あっ、準優勝の…」そう思わず口からすべり出た言葉は彼の耳に入ってしまったらしい。
引き攣った笑みで少しずつ近づいて……来ない。
あれ?明らかに引き攣った笑みで一歩踏み出したのに。
シルク達もわたしの前に行こうとした様だけど、謎の反応にみんな困ってる。
わたしも思わず小首を傾げると、
「おめぇら…こっちが悔しさに打ちひしがれて鍛錬してるってぇのに、こんなめっぽう可愛い子らと楽しんでやがって…!!」
彼の周りだけ突然重力が倍にでもなったのか、両手両膝をつかれた。ここは精神となんかの部屋だったかしら!?
「えっと…店員さん以外は、女性はわたしだけで…あっ!とっっっても可愛いけどカフィーは男の子ですよ?」
「うわっ!!声まで可愛いとか!!いや、外にもいただろぉ!?なんか小せぇのが!!」
レイさんを見るが、首を振られた。心当たりは無いらしい。
「えっと…とりあえず今日は申し訳ないのですがお帰り頂けないかしら?お名前は…グラ…えっと…」
「グラヴァルドだ」
「グラヴァルドさんですね。大きな身体に似合う強そうなお名前ですわね」
準優勝と気にしてる事を言ってしまった手前、出来るだけ微笑みを絶やさず、怒りを逃してもらおう大作戦。
たしかロイさんに負けたので3年連続準優勝だって聞いたし、プライドも傷ついてるわよね。
でも次の瞬間、その大きな身体に似合わないスピードでわたしの目の前に立っている。
見上げる姿は少しお祖父様を思い出せて、思わず顔が綻んでしまう。
「…!!!!!」
「グラヴァルドさん?」
「…してくれ…」
「え?なんですの?」
ガシッと両手を掴まれ、スゥッと息を吸う音が聞こえた。
「一目惚れだぁ!!!春に卒業したらワシと結婚してくれぇ!!!」
自分でも目が落ちるんじゃないかと思うほど吃驚して目が見開く。
その瞬間扉から誰か入って来たかと思えば、その人は勢いよく飛び、そのままグラヴァルドさんの首に蹴りをかませば、その身体は床に一度叩きつけられそのままバウンドして壁に激突した。
「え!?ろ…ロイさん!!?ししし死んじゃいますわ!!」
「ユーリ無事か!?」
「わたくしではなく、グラヴァルドさんが!!」
「なんだ…そうか、グラヴァルドだったか……すまん」
すまんって言うけど、グラヴァルドさんに目もくれずにわたしに謝られても…。でもロイさんの顔は少し青ざめている様にも見えて…、どうしていいのか、誰にどう声をかけたら良いのか、オロオロとしていれば、
「イテェなぁ!!おぉ!!ロイサマじゃぁねぇか!!」と、首に手を当ててコキコキ鳴らしながらグラヴァルドさんが立ち上がる。
死んで無いどころか、普通に立ち上がった!!
驚いていると、わたしの前へロイさんが守る様に立つ。
「あ!!なぁんだよ!!おめぇにゃ可愛い婚約者がいるだろぉが!!その子はワシを見てもビビらず笑ってくれるんだ!結婚する!!」
「ほう…2つ歳が上なのに、常日頃から馬鹿だ馬鹿だと思って居たが、ここまで馬鹿だったとは…」
「あぁ?!なんだよ!!ロイサマ二股かぁ!?あぁもしかして今から側室候補かよ!!大丈夫!!そこのお嬢ちゃん!!ワシは生涯君一人だけにするから!!!いっくら顔が良くて王子だからって、平民の君が王妃にはなれねぇし、おれは君一筋で幸せにする!!」
そこまで言われてやっとわたしは自分の見た目が違うのと思い出し、頭に手を掛けカツラと眼鏡を外す。
「…んなぁっ?!!!!」
「あの…ごめんなさい。騙すつもりは無かったのですが…」
そう言うとグラヴァルドさんがまたも重力に負けた。
さっきまで目で追えない程早いスピードで動いたのに。
「ユ…ユリエル嬢じゃぁねぇか…」
「えぇ…ユリエルです。あの…ごめんなさい?自分じゃ変装してたの見えないから忘れてて…」
申し訳なさから立ち上がる手助けにと手を出せば、それを掴もうとグラヴァルドさんが手を伸ばし…そのグラヴァルドさんの手をロイさんが蹴り飛ばす。
「ロイさん!?」
「ユーリ、この馬鹿に甘い顔しないでいい」
「てんめぇ!!…くそっ!しかしユリエル嬢か…ユリエル嬢…おぉ!なんか決勝の後にロイサマと戦ったぁとか!!ワシャァ、アンタとも戦ってぇみたかったんだ!!どうだワシと一戦交えてみねぇか!?」
「…どうやら死にたいらしいな」
部屋にロイさんの殺気でみんな思わず息を飲めば、グラヴァルドさんはニヤリと笑い…そのまま前に倒れた。
そしてその背中には…
「キャロットちゃんじゃありませんの〜〜〜!!!」
思わずペンライトでも降りたい気持ちになり叫べば、その背中からピョンと飛びのき、入り口の子の腕の内に入る。
「単純馬鹿にはよく効きましゅわ」
「まぁ!!決めポーズで入ってきて噛んで恥ずかしがってるミラさんですわ!お久しぶり!!」
「そこはほっといて頂戴!!!!」
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