日常はのんびりと。時折ピリリと刺激もね!
今日は空は青くて、学校が休みなのが勿体ないくらいの気持ちの良い日。
「あっ!ロットさん、おはようございます。」
「おはようさん。姫さん手伝いに来てくれたんか?」
生徒会室に入って来たロットさんが目を丸くしてるのが可笑しくて、思わず笑ってしまう。
「はい。一番忙しい昨日は休んじゃいましたし、今朝は体調にも問題なかったし、最後にせめて後片付けくらいはやらせて頂きたくて」
「ほーか。ありがとなぁ〜」ニコニコと通り過ぎ、レイさんとアベイルさんと片付けの打ち合わせを始める。
ちなみにシルクは既にコロシアムの方へ片付けの確認に行っている。
最後にって言うのは、わたし発案の掃除の会からそのままなんとなく、魔法祭まで手伝っていたけれど、そろそろ身を引く頃かなと思ったから。
生徒会の役員でも無いわたしがいつまでも入り浸るのも良く無いし、あとシルクも付き合わせてるしね。
掃除の会は勿論引き続きお手伝いはさせて貰おうと思ってるけれど。
そんな事を思いながらも、わたしは昨日の対戦成績の誰かが書いた殴り書きのものを、なんとか文字に起こし、資料として纏めたり、…とにかく読めない字をなんとか解読する。誰よこれ書いたの…。
ところで…今朝来たときに気が付いたのだけど、前はいつの間にか用意されてたアベイルさんの机に、今度はしれっと「書記」のプレート貼られてるけど、アレはアベイルさんは気付いてるのかしら?わたしの休んでる間に話し合った結果よね?うん。きっとそう。
話し合いの終わったアベイルさんと挨拶を交し、目の前を通り過ぎ…その姿をそっと目で追えば机のプレートに気がついたらしく「え!?」っとレイさんとロットさんを見ると、2人は親指立ててウインクしてる。まぁお茶目☆
「えっと、掃除の手伝いだけの予定から、魔法祭までって…」
オロオロしながら2人に寄っていけば、両肩に2人に手を置かれ、「生徒会へようこそ!!」といい笑顔で言われてる。
うん。有能な生徒会書記の誕生の瞬間だわ。
おめでとう!!心の中で拍手を送るわ!
レイさんが先生方の許可はもう取ってあるって言ってる。根回し完璧ね!
「ユリエルさん…」そんな涙目で名前を呼ばないで!!眼鏡であんま見えないけど!!いや、掃除から巻き込んだのはわたくしだけれども!罪悪感が無いわけではないのだけれどもぉ!
「安心せい!姫さんにはいつでも生徒会室に入れる権利をプレゼントや!!名目は生徒会後援会会長あたりやね!いつでも手伝いに来てくれてええんやでぇ〜!!」
あれ!?わたしまで巻き込まれた!!
そして生徒ならば元々生徒会室に入る権利は誰でもあるはず!!
「勿論シルっくんはそれの副会長をプレゼントや!」
今この場に居ないシルクまでも巻き込まれた!!
「うふふ…有り難いお申し出ですが…」
「賑やかになって嬉しいねロット。なんだかんだでずっと2人でこの仕事量だったからね」
「せやな。話す暇もないほど忙しい上に、掃除やらなんやら、今年は仕事が増えたもんなぁ〜」
「う…っ!」
「しかもオレは学園関連の商売の取引が増えたり、有難い話やけど、寮生活やのに実家との往復も増えたしなぁ〜」
「そうだね。ロットも大変だよね…私も最近は先生との打ち合わせや対応に追われることが多くてね…」
「ぐ…っ!」
少しずつ近付いて両肩に2人に手を置かれ、「生徒会へようこそ!!」といい笑顔で言われた。
「ひ…引き続きお役に立てる様頑張らせて頂きますわ…」
「姫さん居ればシルっくんもロイはんもくるやろしな…めちゃ仕事楽になるわぁ!」
将来の国のトップを私と言う撒き餌で釣っている!
やり手すぎやしませんか!?この生徒会!?
「荷物持ってきました。…姉さん?どうしたの?」
「海老で鯛を釣られましたわ」
「ユリエルさんが海老なら、僕はみじんこですかね…」
シルクの背中もバンバン叩きながら「ほなこれから改めてよろしゅうな!」といい笑顔で言ってる。
シルクがなんか半目で訴えて来てる。
違うのよ!?わたしが悪いのではなくて、てゆーかこの流れで断れるほど私のメンタルは強く出来ていないのよ!!?仕方ないと諦めて頂戴!
「まぁそうは言っても、年内はとりあえず大きなイベントも終わったからね。それで突然だけれど、みんな今週末…光の日は空いていたりするかい?もし良ければアベイルくんの歓迎会と、ロイくんの優勝祝い、それに手伝ってくれたみんなの打ち上げも込めて、食事会でもしたいと思うんだけど、どうかな?ロイくんはみんなが来れるならなんとか開けてくれるそうだよ」
貸切…お友達と食事会…
「ドレスコードはいかがなさいますの?」
「今回は学園の生徒同士という気楽な会にしたくてね。下町に近いお店だし、逆に気楽な格好でやりたいと思ってるのだけど…難しいかな?」
わたしはキラキラした瞳でシルクを見る。
髪の毛をかき上げながら「そんな顔されて断れないでしょ」と溜め息と共に苦笑いを貰う。
「はい!わたくしとシルク参加いたしますわ!!主役のアベイルさんも来られるでしょう?」
「はい、皆さんが参加されるなら是非」
そう照れ臭そうに頷いてくれたら、テンション爆上げでお掃除でも資料纏めでも頑張っちゃうわ!!!
***
「お疲れ様シルク。今時間ある?」
「姉さんこそお疲れ様。大丈夫だよ、どうかしたの?」
あの後学園のイベント後の仕事は休み2日しっかりと使って終わらせ、日常の学園生活に戻って、今日は週末の闇のお休みの日。
シルクは珍しく部屋を訪ねたわたしに少し驚いて部屋へ入れてくれる。
「ありがとう」といつの間にか見上げる角度が上がってるわね。成長期凄いわ。もう180近くになったのかしら?手足も長いし、これだけあったらシルクも高いところの掃除しやすそうね!
「ねえシルク?髪が伸びたと思わない?」
「姉さんの?そうだね、もう腰あたりまで伸びてるね。でも元々綺麗な黒髪だし、手入れも行き届いてて素敵だと思うよ」
ふわりとその銀色に少し緑を入れた様な美しい双眼を優しく細める。
「褒めてくれてありがとう。でも違うわ?シルクのよ?」
後ろ手に隠していたハサミを出せば、
「ソウダ!僕出かける用事があったんだった!!」
素早く部屋を出て行こうとするシルクの腕を掴み「時間あるって行ったじゃない!!」と離さない。
だって伸びてるのよ!?
前は目に掛からない程度だったのに、今はなんとなく後ろに流したりして誤魔化してるけど、もう誤魔化せないくらい伸びてるの!目に入ると目が悪くなっちゃうわ!!
それに後ろの方も長い所は肩近くまで伸びちゃってるし!
サラサラの靡く髪だから、目に刺さっても大変よ?
「アナ!姉さんを止めてくれ!」
扉の前に立つアナを見つけヘルプを出すが
「わたしがここに来るまでお嬢様を止めなかったと思いますか?説得して更に説得した結果、今こちらにお邪魔しております」
チーーン
なんて音がどこかから聞こえる。風鈴かしら風流ね。
諦めた様に鏡の前で首の周りにタオルを巻いて、生気のない顔で座るシルク。
「ドウカ姉サン…ホドホドデオ願イシマス…」
カタコトシルク
「大丈夫よ!!」
「僕が8歳くらいの時にもそう言って僕の髪をバッサリ切って、メイド長に怒られてたの覚えてないの!?」
「わたし成長したわ!なんかカンを取り戻した気がする!!」
「取り戻すカンなんてないでしょ?!」
いやいや、シルクには言わないけど、前世で中学までは子供達の髪切ってたし。
感覚的には…ちょっと期間は空きすぎな気もするけど、なんとかなるわ!なりそうな気がするわ!息子はバリカンだったけど!
「デ…デハ、イキマス!!」
「緊張してきてるじゃないか!!」
涙目のシルクは見なかった事にする。
****
「意外と…まともに出来たわ!」
「意外と言われて、僕はどう言っていいのかわからないよ」
疲労困憊の2人に対して、アナが最後に仕上げカットして整えてくれた。
「目に掛からず、後ろも首筋も出てスッキリしたわ!シルクの銀の髪って綺麗だし伸ばすのも良いけど、やっぱりこの方がカッコ良い顔がハッキリ見えて素敵よシルク!」
「カッコいいって…」
少し照れ臭さそうなシルク。それにしてもそのサッパリした頭を見てたら、わたしも切りたくなってきた。
「アナ!!わたしも肩ぐらいまでバッサリいこうかしら?明日とかカツラに入れるのも大変だし!!お手入れも楽になるわよ!」
「ダメです!」
「ダメだよ!!」
2人に怒られた。
「令嬢としての御自覚を」とか「何を考えてるの!?」とか沢山言われた。
それにしてもわたしを叱る時、いつも2人とも息が合いすぎだと思うの。ぴえん。
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全てに感謝です。
そのおかげで今日も頑張れてます!
日常回です。
暫くはのほほんとなると思います。





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