激おこぷんぷん丸の結果は誰も教えてくれないようだ。
何故だかギクシャクしたまま、今日はみんな祭りごとで疲れているし解散する事になった。
ちなみに明日からまた2日間、学園は片付け休みに入る。
週末の休みで出場者は万全の体調にして、祭りからの2連休。
試合に出た人にとってもは助かるわね。
出てない人にとっては、ただのラッキーなのかしら?
しかし生徒会の皆さんはまだまだ片付けや後始末があるので、明日、明後日と学校に行くらしい。ホント大変だわ…お疲れ様です。
それより…何度聞いても誰も犯人のその後を教えてくれてないのだけれども!!!
最後に生徒会室の片付けしながら、見たであろうアベイルさんに聞いても青い顔してこそこそ逃げられ、なんとなく話してくれそうなロットさんに聞いたら「オレは見てへんから知らんなぁ〜」って明後日の方向見て言われた。知ってるよね!その反応なんか知ってるよね!!
唯一の情報は帰るときにロイさんに「何名かは牢に入れて、口を聞ける程度に回復し次第尋問を開始する予定」とだけ教えてくれた。
召の日に拐われてから、3日ほど経つけれども口も聞けない状態って何!?ちょいとクロモリさん!?
いや、「千切らず立ち上がらない程度で」の指示しか出して無かったわたしが悪いのか、いやでもあの状態では我が身も危なかったし、間違っていたとは思えないのだけども!
わたしもクロモリも激オコだったしね!!
「ではお嬢様はシルク様とお乗りください。わたしは今日治療院から乗ってきた馬車に乗って参りますので」
「あ、そうね。馬車二台になっちゃったものね。ありがとうアナ。我儘に付き合ってくれて」
「いえ…ではシルク様、ユリエルお嬢様。別行動になりますが、お気をつけてお帰り下さいませ」
恭しく頭を下げてアナが離れるのを、シルクは微妙な顔をして見ていたのが気になるが、今日のシルクはなんだか少しおかしいので、何も言わずに馬車に乗り込む。
向かい合っているのに視線は一度も合わない。
いや、シルクが合わせてくれない。
馬車が動き出し、学園を出て町を抜けて馬車のスピードが上がった頃、「ごめんなさい」と改めて頭を下げる。
「姉さんは何も悪くないし、謝られることされてないよ」
「でもシルク怒ってるわ。門の前で掃除してたのも、今日は屋敷に戻る筈なのに勝手に来たことも、舞台に立った事も、シルクは良いと思ってないのでしょう?」
シルクはそのまま窓の外を向いたまま瞳を閉じたので、立ち上がりその両頬を掴みグイッとこちらを向かせる。首の筋痛めたらごめんなさいね!でも若いから1日2日あれば治るでしょ!!
シルクはその行動は予想外だったのか、目を丸くしてる。
「こっちを見てシルク!話を聞く時、話す時、目を見るものだと幼い頃から言ってるでしょう?」
「うん…」
「わたしは謝ってるわ!!でもシルクが何が嫌だったのか、どうして欲しかったのか、この先どうして欲しいのか、なにか言わなきゃ何も変わらないわ!それに貴方とこんなギスギスした空気耐えられないのよ。わたしが色々しでかして、それを叱るのはずっとシルクの仕事じゃない?さぁ!叱っても怒っても泣いても何してもいいわ!喋ってちょうだい!」
そう言えば、頬を掴んだ手を優しく包む。
「そうだね。姉さんの言う通りだ。拗ねてむくれてるのは僕らしくないね」
そう少し伏し目がちに話し出した。
「僕はね…姉さんを責めたいんじゃなくて、僕は…僕の弱さを痛感してるんだ…」
「弱さ…?…ところで座って良いかしら?馬車が揺れて転びそうなのよ」
頬の掴まれた手が離れず、いくら乗り心地が良い馬車とは言え、グラグラとする馬車は体幹の弱いわたしにはキツイ。いや体勢的にもやや中腰だし更にキツイ…!
シルクは笑って手を離してくれたところで、馬車は林道の石でも踏んだのか大きく揺れ、「うひゃあっ!」と間抜けな声を上げてシルクの胸に倒れ込んでしまう。
膝を床で打ったわ。そして「キャッ!」とか咄嗟に出ない女子力の無さが垣間見えたわ。
とほほ…と、立ち上がろうとするが、そのままシルクに抱きしめられて立ち上がれない。
「シルク?」
「姉さん。守れなくてごめん。僕はなんて弱いんだろう…強くなりたい…。口ばっかりじゃなくて、姉さんをちゃんと護れるだけの……」
「シルク、大人になったのね」
背中に手を回し、ポンポンと叩く。
「自分の弱さを見つめられる子は強くなれるわ。わたしを守ると言ってくれてありがとう。でもわたしあなたに守って貰ってるわよ?」
「僕が?」
「そうよ?誘拐された時、もちろん被害者が居たから怒りでクロモリが出たのもあるけど、最初のキッカケは貴方に貰った髪飾りよ?…怖いし泣きそうだったけど、貰った髪飾りが落ちた時、シルクを思い出して気持ちが切り替えられたわ。ありがとうシルク。あなたが居てくれて良かったわ」
「姉さん…」
腕が緩み顔を上げれば、至近距離にシルクが見える。
久々のその距離に思わず頬にチュッとすれば「わぁ!!」と顔を赤くする。
「オーホッホッ!姉にちょっと頬にされた程度でこんな動揺するとはやはりまだまだ子供ね!!ここ数年逃げられてたからそんな可愛い弟を愛でたくて仕方ないわ!しかも10歳のシルクに貰った髪飾りを無くして、お姉様はとても傷心してるのよ!」
しかも強くなりたいとか、少年漫画みたいな少女漫画みたいな、そんな狭間な事言われたら、若人の成長にウキウキしてしまう婆心。
おかげで初の高笑いも成功したわ!
成長万歳!!強くなりなさい若人よ!!
「姉さんッ!危ないから落ち着いて座っててね!!今朝まで治療院にいた身だろ!?自覚ないだろうけど、クロモリ戦わせてる時点で更に魔力は使ってるんだからね!」
「…はい」
めっちゃテンション上がってたのに、普通にめっちゃ怒られた。しょぼん…
目で指示された向かいの椅子に座り直します…しょぼん…
「まったく…その姉にされたからこそ動揺してるんだよ…」
「え?なんか言った?」
呟く声が聞き取れずシルクの方に身を乗り出せば「ちゃんと座る!」ってまた怒られた。
いつものシルクになったけど、しょんぼりシルクも可愛かったわ〜。顔が赤くなるほど怒ってるわ。気分はチョベリバなのね。
いつの頃からかほっぺチューすると逃げられるようになって、そのうちホントやめてと言われる様になってから早数年。更に思春期。そりゃ怒られるわ。
しかし脳内では義弟愛でたい病が発令中。
脳内ではにかみ6〜10歳シルクでも妄想しよう。
「…下らない事考えてない?」
あらやだ!ニヤつきが溢れ出てたかしら!?
察しの良い義弟だこと!!
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