真実はいつも一つか二つに絞れたり絞れなかったりですわ!
「では、まず情報の少ない私から話そうか。ユリエルくんが拐われたあの日、生徒は基本的には帰っていたけれど、競技に参加予定の生徒最後の事前説明と、コロシアムの確認や魔法士の確認なども有り出入りはそれなりに多く、いつもより警備が甘くはなっていたようだよ。しかしユリエルくんが居た正門だけれど、いつもなら門番が立っていて入る人間は確認、そしてそれを押して無理に通ろうとすれば魔法防壁により入らない仕組みになっていたのだけど、門番はおらず、魔法防壁は作動しなかった」
レイさんが腕を組み真剣な顔で話せば、追加だとロットさんが話し出す。
「ロイ様が騎士団連れて姫さん追った後、念の為手掛かり探しにオレらとベレト先生ら教師の一部で近場を当たったら、気絶した状態で縄に括られて門番は裏路地に転げとった。意識取り戻した後に聞いても、後ろから殴られて犯人は見ていないと。たしかに後頭部に少しズレたら死んどってもおかしない怪我もあったわ」
「その後ワタクシめが調べました所によると、魔法防壁は門番が内側からしか開けられない仕組みになっているのですが、門番ではない人間に解除された様がありました」
「何故門番では無いとおわかりに?」
思わず質問をすれば嬉しそうにカルージュ先生は生き生きと話し出す。
「魔法防壁は門番の魔力が鍵になっています!普通の鍵と同じで普通なら開かないものも、力技でねじ切ることは原理的には可能なのです!…しかし力技でやれば、当然少なくとも証拠は残ります。アベイルくんの様に見てすぐ分かる人間は稀ですが、ある程度は絞れます。しかし…人の出入りの多いこの時期、その『ある程度』絞れた証拠がどこまでお役に立てるのかは…」
そこまで言って悔しそうに眉間にシワを寄せる。
この人、影がある位がイケメン度が増すわね。何故残念イケメンになったのかしら?
「レイさん、ロットさん、カルージュ先生。お忙しい中ありがとうございます。次は…そうですね。わたくしが話しますわ。彼らの漏らした情報だけで、そこまで大した事はないとは思うのですが…」
ゆっくりと瞬きをして、改めてあの日を思い出す。
「あの日、狙われたのはわたくしでは無くミラさんです。
彼女の召喚士としての情報を犯人は持っておりました。たまたまわたくしがミラさんのキャロットちゃんを抱いてしまったので、召喚獣を連れているから召喚士だと思われ連れて行かれたのです」
「…うん。姉さん…まず人の召喚獣に触っちゃダメだよ。危ないからね?」
呆れた様にシルクが告げる。
そしてみんな頷いてる。
「だって!!だって可愛かったんだもの!!そりゃクロモリは可愛いわよ!?でもキャロットちゃんのあのぬいぐるみみたいなキュートさ!あの色合いの可愛さ!一度で良いから抱き締めてみたかったチャンスがそこにあったのだもの!!それをみすみす見逃すことが出来る!?否!!わたくしには無理でしたわ!!!」
熱く語るわたしに、シルクはいつもの様に溜め息をついて「うんわかった。話、続けて」至極冷静に言われた。
「え〜っと…どこまで話したかしら?そうそう、相手は召喚士の扱いも知ってましたわ。召喚する為に媒体とする声と動きを抑えるために、口に詰め物されて手足縛られて、馬車に放り込まれましたわ」
あら?みんな顔色が真っ青になってるわ。
そうよね。ミラさんだったら大変なことよね。
「それでロイさん達に見つけて頂いた小屋まで連れて行かれて、ミラさんの情報と合わせるために三角巾取ったら別人のわたくしが現れて皆さん驚いてましたわ。それで『ならこの前の娘みたいに娼館に売るか』と言われて…」
「ユーリ…ちょっと話の衝撃に耐えられない」
「ですわよね。これがわたくしでなくてミラさんや他の召喚士の子だったら大変な事になってますわ」
「いや…ユーリも充分大変ではないか…」
「わたくしの被害なんて頬を一発殴られた程度ですわ」
「よし今すぐ殺そう」
突然部屋から出て行こうとするロイさんを必死で止める。
協力を仰ごうとするがみんな頷いちゃって動こうとしない。
「待ってくださいまし!ロイさん!!犯人は証人ですわ!!それにあの中には貴族もおりましたでしょう?わたくしのことを知ってましたわ!王太子の婚約者だと、セルリア家の娘だと。こんな引き篭もり令嬢を知ってる人間なんて絞れますでしょ!?」
そう言うと、呆れた様にロイさんに見つめられ、周りは半目になってたり、頭を抱えてたり…
「姫さん…自覚してへんのかい。入学前は知らんけど、姫さんは入学式で挨拶した時点で数百名に顔と名前は知られとるし、この貴族の多い学園で最初にそれだけ知られて、しかも王子様とシルっくんとこれだけ一緒におって、しかもそない珍しい瞳と髪色や。もう情報売れまくりの大盤振る舞いみたいなもんやで?ついでに最近はうちの売り上げから個人で寄付しとるから、ここらの平民でさえ知っとるわ。」
「…!!」
「ユリエルくん、鈍いにも程があるね」
レイさんが爽やかにそしてにこやかにトドメを刺しにきましたわ!
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